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【選挙ウォッチャー】 北海道議選2019・分析レポート。

北海道はかなり特殊な地で、立憲民主党がそれほど弱くありません。北海道知事こそ自民党の候補が勝ちましたが、札幌市長は旧民主党系の候補が勝ち続けています。石川知裕さんは知事選で敗れてしまいましたが、妻である石川香織さんは北海道11区でしっかり勝っています。なので、北海道議選や札幌市議選をチェックしても、なかなか面白いことになっているのです。

今回、取材ができたのは札幌市中央区と札幌市厚別区の2ヶ所です。特に、札幌市中央区はかなりの激戦となっており、定数3に対して9人が立候補する乱戦。これだけ立候補してくると、かなり変わった候補も出てきてしまうのですが、ネトウヨから少しヤバめの人まで、じっくり見ていきたいと思います。


■ 「国民保守党」というネトウヨ政党

「保守」であることが悪いわけではありません。「日本を守りたい」という心は、多くの人が共有している基本的な精神だと思いますし、僕が「選挙ウォッチャー」という仕事を確立しようとしていることだって、「日本を守りたい」という心に基づくものです。それでもネトウヨからは「パヨク」と言われたりするのですが、昨今の「保守」を自称している人の多くが「ネトウヨ」になっていることには、かなりの問題意識を持っています。「保守」「ネトウヨ」の違いは、その思想の根拠に「ファクト」があるかどうかだと思っています。先程も書いたように「保守」というのは、多くの人が当たり前のように持っている精神なので、「保守」であることが否定されることはありませんが、「ネトウヨ」はファクトに基づかず、デマを根拠にしてしまうので、話が噛み合わないのです。

国民保守党から立候補している沢田英一さんの主張は、ネトウヨそのものです。例えば、第一の政策として掲げているものが「ブラックアウトを二度と起こさない」です。昨年の北海道東部胆振地震では全道ブラックアウトが起こってしまいました。これは苫東厚真火力発電所のボイラー管が破損したことが原因で緊急停止し、全道ブラックアウトに陥りました。「ブラックアウトを二度と起こさない」までは「保守」の思想として受け入れられるものですし、これに異論を挟む人は滅多にいないことでしょう。二度とブラックアウトを起こさないようにどうしたらいいのかを考える。これは大切なことです。ところが、ネトウヨになるとブラックアウトが起こった原因を「泊原発が動いていなかったからだ」と考えてしまうのです。今回のブラックアウトに関して言えば、泊原発が動いていてもブラックアウトは避けられなかっただろうし、今度は泊原発の非常電源がいつまで持つかの話になり、福島第一原発事故のようなリスクが増えるだけです。言ってしまえば、北海道は泊原発が止まっていたために命拾いをしたことになり、何の反省もなく2度目の原発事故を起こしていた可能性すらあるのです。そんなことも考えずに「原発の再稼働を議論すべき」だと言ってしまうのですから、これはファクトに基づかない「ネトウヨ」だということになります。ネトウヨが議員になってしまうと、ファクトに基づかずにデタラメな政治をしてしまうので、僕たちの生活はどんどん現実と離れ、住みにくい街が出来上がってしまいます。なので、ネトウヨを議員にしてはいけないのです。

ただ、すべてが間違えているかと言ったら、正しいことも言っています。例えば、EPAやTPPのよる北海道の基幹産業である農業や酪農業、漁業を破壊する自民党の新自由主義政策には反対。外国人の土地取得を規制する外国人土地法の復活や北海道独自の届け出制度や条例を作り、水資源や空港周辺の土地を守る。こうした「保守」ならではの取り組みは検討する余地があると思います。どうせTPPやEPAをチェックしているのであれば、ネトウヨなんだから中国主導で進められるRCEPについてもチェックしてもらいたいと思いますが、新自由主義経済を突き進むことになれば、日本はどんどん中国の企業に進出を許し、日本の財産が中国の企業に奪われることになるでしょう。だから、国民保守党の人たちの主張がすべて間違えているわけではないのです。

沢田英一さんがネトウヨであることの最大の不幸は、「保守」の真逆のスタンスである「共産党」のことを妨害するほどにマイクで攻撃しているのですが、実は、国民保守党の主張と日本共産党の主張は、だいぶ似合いコールであるということです。共産党は新自由主義経済に反対し、TPPやRCEPといった自由貿易協定については否定的ですし、地元の農業や酪農業、漁業を保護してこそ日本の経済が守られるというスタンスです。今の日本は左と右はすっかり逆になり、自民党が「革新政党」で、共産党が「保守政党」になっているということです。つまり、沢田英一さんが攻撃している共産党こそ、本当は国民保守党と思想が近く、ネトウヨが保守だと思っている安倍政権こそ、権力を握って「革命」を起こしていると言ってもいいと思います。さまざまな守るべき規制を破壊し、新自由主義を流し込み、日本の企業を駆逐していくスタイル。これから消費税まで上げようというのですから、日本経済の破壊が止まりません。


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