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大学生自転車日本一周旅四日目:福島駅から山形駅へ

本編

 もともと、この日は福島から山形まで直接行き、そのまま仙台まで行こうと思っていた。つまり、福島から山形の間の山と、山形から仙台までの山の2つを一日で越えようとしていた。今考えればなかなか無茶な計画だけど、その時は本気でそれをしようとしていた。だが、前日に自転車をパンクさせてしまったために、予定の変更を余儀なくされてしまった。近くの個人経営ではない大きな自転車屋の開店が10時で、それに合わせて出発すると仙台まで行くのが厳しくなる。更に修理時間も考慮するとどう考えても不可能。というわけで、一日余分にはかかるが、この日は山形まで、次の日は仙台まで、と二日に分けることにした。

 旅を始める前に、東日本大震災の被災地に行きたいと思っていたが、明日が仙台までに変更になった分時間に余裕が出来たので、結果的には変更後の予定でよかったのかもしれない。地図を見て福島県と山形県の被災地は山を越えていかなければならず気乗りがしていなかったから、その点でもよかったと思う。

 目的地が山形に変更になったわけだけど、直接山形に行くにしては時間が余るし、せっかくだからいったん米沢まで行ってから山形を目指すことにした。米沢牛という名前自体は聞いたことがあったし、食べられたらいいななんて考えていた(美味しいんだろうけど高すぎて手が出せません!!!)。

 先ずは前日出来なかった県庁記念撮影から一日が始まった。パンクした自転車には極力乗りたくはなかったから、歩いて福島県庁に行くことにした。時間もいい感じでつぶれてくれるだろうと期待してもいた。久しぶりに自転車を押さずに歩いた。

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 駅まで戻ってきたらいい時間帯になっていたので、自転車屋へ行くことに。10時15分ぐらいに到着。少し遅くなってしまった。店に入って修理をお願いする。先客はいないみたいだからよかった。30分ぐらいかかると言われた。ついでにライトもつかなくなったから見てほしいと頼むと、1時間ぐらいかかると言われた。かかりすぎだろ。まあ見てくれるならいいか。待ち時間は店内をひたすらぶらぶらしていた。三日間のサイクリングですでにお尻が痛くてたまらないことに(多分こすれて荒れてもいた)なっていたから、サドルコーナーを眺めては「サドル変えてーなー」なんて考えながらだらだらしていた。

 さすがに終わるまでは一時間もかからなかった。合計45分ぐらいでパンクの修理とライトの故障の原因究明をしてもらった。パンクは2個穴が開いていたと言っていた。まあ1時間以上無茶させたしそのくらいあっても当然か。ライトは、中の電線がショートしていたのが故障の原因だった。修理不可らしい。というわけで新たに買うことに。故障したやつと同じタイプのタイヤの回転で発光するものだと、今のライトをを取り外して取り付けをしないといけないから時間がかかりそう。そう考えて電池式のライトを購入した。壊れたライトはそのままにして残しておいてもらった。その方が味が出るだろう。思わぬ出費が出来てしまった。

 準備がやっと整ったところで、ここから本格的にこの日の旅が始まる。まずは山のふもとまで行こう。とはいえこの時はまだそんなに登らないと勝手に思い込んでいた。

 ふもとまで到着し一気に上り坂を駆け上がって行く。すぐに降りて押しちゃったけど。登り切ったら国道13号の比較的大きい道に合流するんだけど、確か歩道が無かった。懸命に漕いでいこうとするけど、体力はもう持たなかった。結局危険になってしまうのを覚悟で押すことに。少し体力が戻ってきたら漕いで、バテたら降りて押してを繰り返した。ただ、だんだんと押す時間のほうが長くなってきていた。

 上り坂はついに平地の姿すら見せないようになっていた。これまでは、少しではあるものの下りや平地の道が上った後にはあったのに、ひたすらじわじわ登っていく坂が続く。これまで越えてきた坂にはこれよりも傾斜のきついものはいくつもあったが、このタイプの長きにわたって体力を奪っていく坂が一番しんどい。結局途中からほとんど押して歩いてしまっていた。

 歩道のない山道では、登板車線が非常にありがたくなる。理由は主に二つ。一つ目は、車線が一つ増え、登板じゃない方を大体の車が通ってくれるので、登板車線の交通量のほうが一般の車線よりも少なくなって安全になるから。二つ目は、登板車線が終わるとその坂の登りも大体同時に終わるから。もちろん例外もあるけど、基本は終わってくれる。終わりが分かるのとわからないのでは精神的な余裕が変わってくる。以上二つの理由で登板車線はありがたいのだが、途中で始まった登板車線が全く終わらないという事態に直面した。ああしんどい。

 しかも、道の脇に生えている雑草に潜むアブがひたすらに進路を邪魔してくる。ここに来るまでにアブには何回か咬まれていて、あの特徴的な痛みが本当に嫌いだったから出来るだけ避けたいと思っていた。だが、車が横を通るときはどうしても道の脇に寄らなければならず、必然的にアブとこんにちはすることになってしまう。しかも、アブに付きまとわれたら非常に面倒くさい。奴はくるくると体の周りを飛び続ける。本来だったら漕いで振り切っていくけど、今は歩きだから振り切れず、ずっと体のそばから離れてくれない。気を抜いて止まろうもんなら奴は咬んでくる。とにかくそれが嫌だったから走って巻こうとしたが効果がない。イライラして自転車を振り回して奴を叩き落してやろうとした。しんどいのになんでこんなことせないかんのやろ。幸いなことにその間は車全然通らなかったからよかった。しかし、これも効果はなかった。結局ひたすらに何かしら格闘しながら進んでいくしか咬まれない方法はなかった。疲れたから歩いているのに、さらに疲れてしまう。事情を何も知らないアブに腹が立つ。イライラしたって伝わらないから仕方がないけど。

 そうこうしているうちに標高は600mを越え、やっと登り終わりが見えてきた。と同時に、長いトンネルが二本。どちらも下りだった。トンネル内に歩道はなかったから車が通るときはひやひやしたけど、まだ登りではなかったからよかった。どんどん下っていくと気持ちよくなってくる。歩いているときは日差しを長く受ける上に、風がない分暑さでよりしんどさが増す。だけど、下っている最中はスピードが上がる爽快感と風を切る涼しさで超気持ちよくなる。気持ちよくなったら、一人で大熱唱が始まる。あの瞬間ほど幸せな時間はないかもしれない。

 登りで時間がかかった分、くだりで一気にスピードアップして時間を取り戻す。山を下り切ってから少し距離はあったものの、13時50分ごろに米沢駅に到着。なんとか3時間はかからなかったものの、お昼を食べるには時間が中途半端。ランチタイムはどこも大体14:00までで、ラストオーダーはとっくに過ぎている。だけど、どうしても牛肉が食べたい!幸い精肉店が営む料理屋さんが、ランチタイムこそ終了してはいるけど営業は続けているみたいだったので飛び込んだ。

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 びーふかつ定食を注文。ランチ限定かと思ったけど時間を過ぎても値段変わらず提供してくれるみたい。10分ほど待っていると、定食が降臨。中はレアで、見ているだけで満たされるほど美しい。いざ実食してみると、とんでもなく柔らかいうえにジューシー。牛肉のうまさを再確認させられた。個人的に鶏豚牛の順で好きなんだけど、このうまさがどこでも食べられるのなら順位変動も全然あるぞって感じ。大満足のおいしさで、お値段は1800円。値段的に米沢牛じゃないかもしれないけど、このうまさを食べられるのなら文句はない。精肉店だったからその分安く米沢牛が提供できていると夢を見ておきます。ごちそうさま。

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 ここからは山形市を目指していくが、山道を通った記憶はない。だが、田舎ということもあり、しんどかったとは思う。ただし、この日のきつさのピークはあのアブと格闘しているとき。あの時に比べたら平地の道も多くのどかだった。

 山形駅に到着して自転車を駅の地下駐輪場に留めた。ここは今日の分と明日の分で二回支払いをしないといけないらしい。めんどくさ。

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 駐輪できたのはいいものの、雨が降り出していた。関東は旅の始まりから2週間ほど晴れ予報だったから、東北も同じように雨は降らないと思っていたんだけど、さっそく雨が降ってきた。雲は北東に流れてくると思ったんだけどなあ。ちょっと暗雲立ち込めてきたわけだ(ダブルミーニング!)。ここから、雨男としての才能を開花させていくことになるんだけど、この時はまだ、天気は今後は大丈夫と根拠もなく考えていた。

 夜ご飯は駅の近くの油そば屋さんで食べた。なんかラーメンを食べたくなったのだ。まあ油そばはラーメンではないかもしれないけど。細かいことは気にしないということで。

 ちなみに当たり前のようにホテルを取っているけど、この日は夜は雨がずっと降る予報になっていたから仕方ないということにしてください。

 では、おやすみなさい。

ルート

 福島駅から県道3号線へ、その後上松川駅の先の分岐で県道312号線へ。山道で国道13号線と合流して米沢駅へ。米沢駅から山形駅までも基本国道13号。自転車屋に行ったからこのルートでよかったけど、福島駅から国道13号線を走ればずっと道なりだから楽ちんだったね。

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