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母のくちぐせ

母いわく、わたしは「夢と希望」、弟は「宝物」だそうです。子どものころから、耳にタコができるほど、何十回も何百回も言われてきました。あるときは、2人で膝をつき合わせて。あるときは、よその人の前で。恥ずかしげもなく。今でもバリバリ言ってくれちゃいます。

どっちが大事とか、姉弟に優劣はないけれど、あんたたちは別モノだよ、位置づけが違うんだよ、ということだったんでしょうね。わたしはそう解釈しています。わざわざ確かめませんが。わたしに何を託してるのか、弟の何を囲おうとしているのかも、たぶん一生訊ねないと思います。何しかあるだろうけど、そこはファジーなまま、うやむやなまま、母語録に収録。

あと、母語録で耳タコなのは、「アホや言うたら、アホや言うたら、ほんまに、アホやねんな!」。母の怒号の代名詞です。上沼恵美子よろしく眉を吊り上げて発せられる本気のやつは、さすがに高校生以来遭ってないものの、ぼやきバージョンは、今も現役。最近は、長期入院中の祖父の素行に対して、ぼやいても、ぼやいても、消化しきれない様子です。

同じことを毎回違う言い方で表現されるより、同じ言い方で何度も何度も繰り返される方が、記憶に刷り込まれて、なんでもないときに、ふっと意識にのぼってきますね。ひよこにとっての耳タコ母語録は、何になるんでしょう。現時点の怒号部門は、たぶん間違いなく「ちんたらしとったらあかんで!」が、わたし予想。昨日だけで、少なくとも3回は発した自覚があります。とほほ。

天才とかヒーローはいつだって、無責任な、がんばれ、って声に応えるんだ。

伊坂幸太郎「あるキング」

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