保育一筋!伝承遊びの探求!祖母の人生の足跡を追って。
語り手•資料提供 井土榮子さん(祖母)
聞き手•執筆 米光智恵(孫)
『ひろがる遊び どの子もいきいき』
福井県武生市内に住む祖母を訪ねました。
子どもの伝承遊びと保育士時代の実践について
井土榮子(いづちえいこ)さん(83歳※取材当時)にお話を伺いました。
井土榮子さんは36年間にわたり福井県武生市内の児童擁護施設や公立保育所で保育士として従事し、児童福祉の増進に貢献されました。
また、18年間保育所長として従事する中で見出した保育観が著書に記されています。
福井大学の小林剛教授による編著『ひろがる遊び どの子もいきいき』(椋の木社)には福井県北新庄保育園での伝承遊びの実践とともに子ども達の自然かつ主体的な遊びの中で培われる力について説かれています。
北新庄保育園では、子ども達を自然な遊びへと導く投げかけについて研究されてきました。
研究の糸口となったのは〝伝承遊び〟です。記事は地域と連携して行われた北陸電力の廃材を使った伝承遊びの様子です。
子ども達の実態把握はまず観察することから始まります。
『ひろがる遊び どの子もいきいき』の冒頭は
まさに子どもたちの行為や眼差しの観察から始まっています。
今も昔も変わらない保育の着眼点。
それは、子どもたちの行為の観察から幾つもの「ハテナ」を見つけだすことだと考えます。
決して言い切ることなく、
「ある子はこのように遊んでいる。」
「ある子はこれが好きなようだ。」
「あの子にはどんな遊びがよいだろう。」
と、一人ひとりを観ることから得る気づきがあります。保育者の支援姿勢や傾聴の眼差しは、
教育や療育(治療的教育)のベースとなり
臨床の視座となって今日の現場に根付いています。
井土榮子さんは
●遊びへの感性
●自己充実につながる真の遊びの楽しさ
について探求する時、次のような願いを持ちながら子どもたちに関わるのだそうです。
『疲れを知らず一つの遊びに集中させ、喜々として遊びに没頭できる、丈夫な体とたくましい心をもった生き生きとした子に育てたい!』
保育者が必死になって子ども達に寄り添う姿勢を
示すことは、実は養護者や親にとってのカウンセリングでもあることを知ります。
最後に、井土さんは保育者の在り方についてこう語って下さいました。
『一人ひとりの個性は漠然と見ていても分かりませんね。その日のその子のテーマを見つけ、観察する。観察したことを記録する。記録をするから問題が見つかるし、的確な指導法が見つかる。どんな分野も人間を育てるということはこの繰り返しなのでしょうね。』
「人間を育てることはこの繰り返し」
私はこの言葉から子ども達の造形場面を思い起こしました。土粘土や絵の具。
素材に触れながら、行為がつながらなかったり、つながったり、その繰り返しを喜ぶ子どもたちが見えました。
幼子から学び、共に泥まみれになり、走り続けた榮子さんの姿から学ぶことが沢山あると気付かされました。
この記事が次世代に恵みとなって届いていくように祈りながら、筆をとらせていただきました。
【退職後の井土榮子さん】
平成5年10月22日。保育士としての功績を称えられ厚生大臣賞を受賞。その翌年57歳で退職。
一途に保育所業務に没頭してきた榮子さんが新たに趣味として始めたのが絵手紙。
公民館で習い始め、平成16年より福井新聞主催の絵手紙コンクールに出展。入賞作品は30枚以上に及ぶ。
また、平成6年より家庭健康管理研究会の指導教育者として子どもから大人までの予防医学を提唱している。60兆の細胞の一つ一つを健康に保つ研究を積み、心と食と骨格の調律によって新陳代謝を上げる実践を通して多くの患者さんに施術を行っている。
社交ダンスや詩吟も好き。
児童擁護施設で担当した子どもたちとの交流が今も続いている。
『あの子達と再会できた時の感動と喜びは素晴らしかった!』
と語る榮子さんの笑顔はとても輝いています。
【榮子さんの絵手紙ギャラリー】
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