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こっち向いてよ、ママ。



春から幼稚園に通い出した娘の夏休みが、もうすぐ終わろうとしている。
夏休みに入る前は、なかなか娘との時間がなくって私が楽しもうと意気込んでいたはずなのに。
気がつけばイライラの毎日が続いていた。
そりゃそうだ。
もともと2人に求められること泣かれることは私の余白を簡単に埋めてしまうんだから。


私の疲れも出始めた頃だろうか、折り返し地点に入った先日のことだ。
娘が妙にイライラしたり、うじうじしたり。なんだか情緒が不安定だった。
いや、そもそもここで娘を主語にするのは間違っているかもしれない。
きっともともとは、私の疲れ切った顔や仕事が進められない焦りや不安。
それが全てだったんだと気づく。
そんな時、挙げ句の果てに娘は弟とおもちゃの取り合いをしていて噛みついた。
思わず大きな声をあげて怒ってしまった。
もちろん、娘は泣いた。

こうしてぐるぐると私と娘との間の悪循環のサイクルが完成する。



言いたいことは山ほどあった。
怒鳴り散らしてやりたかった。
だけど、これは彼女からの「Empty sign」だと気づいた。

気づいて、すぐに優しくなれる訳でもなく。
まずは自分を整えてみる。
夜布団に着く頃、彼女が言った。

「ママの隣がいい。」

そうだ。引っ越してから、間取りの都合もあってベッドから落ちてしまいそうな弟が彼女の隣にくるのが定位置になっていた。
(パパ・娘・息子・私)
言葉で説明するもわかるはずもなく、彼女はベッドの上でひとしきり暴れた。
私は声をかける訳でもなく、気が済むまで暴れさせた。


少しして、彼女が落ち着いた。
もう一度言葉で説明する。
「ごめんね。(弟)がベッドから落ちちゃうからさ。
 ママの隣がよかったんだね。
 寂しかったんだね。
 (弟)が寝たら、隣に行くね。」
と弟越しに頭を撫でたり、手を繋いだ。
「うん、寂しかった。寂しかったの。」

彼女が寂しいという言葉を覚えた瞬間だったんだと思う。
胸がきゅーっとした




そんなつもりはなかったが、彼女の目に映る私のそばにはいつも弟がいたんだと思う。

そんな彼女の気持ちの隙間を埋めたくて、息子が先に寝た時は場所を移動して小さくなりながら、弟と彼女の間に潜り込む。
おでこをピッタリくっつけたり。
手を繋いだり。
頭を撫でたり。
そうやって、ゆっくり眠りにつかせてあげたい。


彼女の愛情タンクは少しずつ満たされてるだろうか。




記憶はそんなに残っていないが、幼い頃の自分を思いだした。
とにかく可愛がられている弟が羨ましかった。
おむつを変えてもらう姿も、汗っかきでバンダナを巻かれているのも。
全部が全部、羨ましくて同じようにして欲しかった。

おむつを変えてる時には、隣に寝転んで股を開いたし。
バンダナをつけてもらってる時には私もして欲しいと頼んだ。

そして、私の中に強く強く残っている記憶は仕事に向かう母に玄関から毎日のように大泣きして見送ったこと。
「何時に帰ってくるの?起きて待ってるね」と職場に電話して仕事の帰りを待ったこと。


あの時の母はどんな気持ちだっただろうか。


きっとあの時の私も、今目の前にいる彼女(娘)も
こっち向いてよ、ママ。
そう言いたかったんだと思う。

ここ数日のこと、私は娘に謝りたくなった。
だけど、過去の私に戻ってみてわかった。
母から聞きたかったのは「ごめんね」よりも「大好きだよ」って一言。

毎日毎日伝える。
どんなに怒ってしまった日だって、布団に入る時「大好きだよ」って。

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