◇お風呂の話

平日は、帰宅したらまず入浴が日課です。夏でも冬でも、季節を問わず変わりません。汗を流す、温まる、それ以外に外と内の切り替えを担っている面もあると思います。外でついたものを綺麗さっぱり洗い流して、ようやくわたしは内モードになれる。端的に言うとくつろげる。

夏の風呂が特に好きなのは、そんな“洗い流す”感覚がより強く味わえるからなのかも。熱めのお湯で頭のてっぺんから爪先まで丁寧に洗って、湯船に浸かったときの快感といったら。あんまり熱すぎるのは身体に良くないと、分かってはいるのだけれど……。
冬はじんわり温まるような、夏より少しぬるめくらいが好きです。じっくり浸かって、身体の芯まで熱を通していく。

季節を問わず、入浴時間は長いほうです。というのも、湯船で考えごとをしているから。身体を洗うのはさっさと済ませて、浸かる時間をじっくり取る。
ささいな事、とりとめもない内容を考えているときもあります。心にひっかかっている出来事と、向き合っていることもある。小さなころは特に、悔しいこと、苦しいこと、悲しいこと、ここでぐちゃぐちゃに泣いて解消していた。頭も、顔も、身体じゅう全てが濡れているのだから、こぼれた涙も、垂れる鼻水も、さほど感じずに済みます。顔が赤いのも、身体が温まっているから。言い訳に過ぎないけれど、それが少しだけ罪悪感を減らしてくれた。
いまは殆どないけれど。そう、殆ど……。

お風呂上りにはコップ一杯の水をきゅーっと飲み干します。本当は入浴前の方がよいのかな。だけど、熱くなった身体に水を行き渡らせる、あの感覚がまた好きで。
お風呂はわたしにとって、単に身体をきれいにする場所じゃない。心にとっても大切な場所なんだなあと、しみじみ思います。