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つきない話題である、英語または外国語の勉強方法について

外国語ないし外国語文学文化を勉強している人はおそらく誰でもそうであるように、わたしもまた、子どものときから英語好き、外国文化好きであった。子どものときからセサミストリートを見たり、海外ドラマや映画を見たり、海外文通をしたりした。NHKラジオの基礎英語や英語会話を毎日楽しみにし、ネイティヴの先生の後について発声した。洗面所にカセットレコーダーを置いて、英語のテープを聞きながら、歯磨きしたり。

それらはすべて、勉強ではなく、趣味だった。

だから、受験のときに『基本英文700選』の英文を全部書けるようにしたとか、文法問題集を仕上げたとかいう以外には、英語を「勉強」した記憶は、あまりない。もっとも、大学院に入ってから、ヘンリー・ジェイムズの後期小説(むずかしい!)などをゼミで読まされたりしたときは、楽しんでいたとはいえない。あれはたしかに、お勉強だった。

映画の研究をするようになってから、フランス語が必要になった。もともと仏文に行くつもりで踏みはずしたので取りかえしている、というところもある。その後英語ばかりやる羽目になり、長年お留守になっていたのを、ここ数年、またやりはじめた。アーカイブに行ったら、生のテープの聴き取りとかをしなければならないし。

それで、英語の勉強法の本などを、また読むようになった。先日は関谷英里子さんの、『同時通訳者の頭の中』、という本を読んだ。この中に、彼女が高校生の頃、映画1本すべてディクテーションした、という話が書いてある。その教材が『恋人までの距離』(Before Sunrise)だったというので、わたしは狂喜してしまった。リチャード・リンクレイターという、わたしが大好きな監督の映画なのだ。いや、それはともかく。

デッキにビデオ(当時)をセットし、メモ用紙とえんぴつとリモコンを用意して、テレビの前の床に座る。テレビに近づき、前のめりの姿勢で、メモを開始する準備。かたわらには、スペリングや意味を確認するための辞書。

ビデオを再生し、一文ずつ書き取る。

聴くだけより、自分で彼らのセリフを繰り返していうと覚えやすくなるので、書き取りたい一心で、リピーティングリテンション(記憶して再生する)の練習をしていたことになった、とか。

それはたしかに、最強の学習法であろう。わたしは映画一本まるまる書き取ったことはないが、ディクテーションの効果は、もちろん知っている。映画一本では大変だから、これはもちろん、3分の短い動画でもよい。

中級者以上はリーディング量が、その後の外国語力を大きく左右する、という話も、うなづける。日本語力や文章力も、読書量に比例するというのと、同じことだ。読書量がないと、帰国子女でも、しっかりした内容のあるよい外国語が、喋れなくなってくる。

そのために、翻訳を読んで内容が理解できてから原書を読む、というやり方は、わたしもよくやっている。今はフランス語であり、翻訳は英語だが。

さっき下に住んでいる友人夫婦とまたカプチーノを飲んでいたら、かれが語彙や表現をメモしたiphoneの画面を見せてくれた。本を読んでいて知らない、使えないと思った表現をメモし、それを見て、使うようにするというのだ。外国語の勉強は、インプットとアウトプットを回しつづけることに尽きる

すでに相当の達人にしてこの努力、ひれ伏してしまった。

休み中のことだろうが、「英語力をたもつために」、毎日小説を150ページほど読み、2時間英語でドラマなど?を見る、というので、驚いた。わたしは勉強としてではなく、自然にそれはやっているが、毎日そこまでの量ではない。

映画を一本見れば、2時間はすぐだが、英語やフランス語の映画を見るとはかぎらない。フランスの映画館で英語の映画を見るとき、「フランス語の勉強のために」、フランス語の字幕を読もうとしたことがあるが、英語に失礼な気がしてやめ、英語で映画を観ることに、集中した。

関谷さんの本でキャッチーだったのは、

         1.01の365乗は37.8
                                   0.99の365乗は0.03


という話。つまり、0.01でも毎日努力していると1年後には37.8になるが、0.01でも努力を怠ると、0.03になってしまうというのだ。

実際にはやったりやらなかったりするわけだが、数字のマジックとしては面白い話である。文法や基本に習熟できたら、あとは何より「内容が興味深いもの」を、読んだり見たりすること、そしてアウトプットすることが重要だ。だからお勉強ではなくなるのだが、秘訣はできるだけ毎日、何らかのかたちで、「楽しみつづけること」だろう。

それが語学に限ったことでないのは、言うまでもない。

(lil_foot_によるPixabayからの画像)


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