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タパス

タパスは、自身から発する熱によって、身体的精神的な不純物を浄化することを説いている。
サンスクリットの「タプ」=熱を語源とする。
余分な思考や動きすぎる感情を、「熱消毒」してインスピレーションに委ねる修練だ。

タパスの実践は、自分自身への約束をやり遂げるために努力することと説明される。
ともすると言い訳をして逃げようとする習慣を断ち切り、自分を律し、そして完了させること。

「努力」と「完了」はタパスの実践のキーワードではあるけれど、ほんの少し語弊があるように感じる。


タパスを「苦行」と訳すことがある。激しく厳しい修行を行うことで、サマディ(悟り)を得られるという。
けれども、極寒の海を裸で泳ぐような激しさではなくても、私たちは、ときに自分自身に厳しさを求める。
責任を果たすため、周りに迷惑をかけないため、誰かの期待に応えるため、自分の心や体の状態を顧みずに、無理して実行することを、自分自身に強要する。
これは、自分自身への暴力だと私は思う。

このような行為を禁じているのがアヒムサだが、一方で私たちには、なすべきことや、成し遂げたいことがある。

私たちの脳は、変化を嫌う。
何かを変えようとするとき、脳は安全な場所(現在地。敵がいないことが確認できている場所)に留める方向に働きかけてくる機能がある。
それは生命を維持するための本能だという。
それでも能動的に変化を求めようとするとき、抵抗が起こり、それが摩擦となって熱を生む。

それがタパスの熱だ。
それは、苦しいかも知れない。辛いかも知れない。
でもタパスは、苦しいことを無理やり実行することではない。
無理のない範囲で繰り返すことで、摩擦は次第に馴染んでいき、やがて快適と安定をもたらす。そのとき熱は役割を終えて、鎮静化していく。

タパスは、実際に成し遂げることを説いているのではない。完了させるということは結果を出すことではなく、そこに向けてエネルギーを集中させること、完全燃焼させるということだ。

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「暮らしのスコレ」でヨガ哲学対談をさせていただいています。 対談で話したこと、話していないこと、「暮らしのスコレ」から得たインスピレーショ…

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