見出し画像

太陽が昇る部屋

娘の部屋から見える東の空。
毎朝、写真を撮ることが
いつの間にか私の日課になった。
毎日、同じ場所から写真を撮ると
季節によって、太陽の昇る時間、位置、
空の色、雲の形…
同じなんてことは絶対になくて、
1日たりとも同じ日はないんだと改めて思い知る。
朝日が差し込んで、
とにかく眩しい部屋。
昼間は太陽に温めてられて
夜になってもじんわりあたたかく
昼間の余韻を感じることができる部屋。

私は20代後半から3、4年、
半地下の部屋に住んでいた。
半地下って聞くと、
「パラサイト」を思い浮かべてしまうけど、笑。
まぁ、あそこまでではないにせよ
とにかく暗かった。
いつ太陽が昇って、
いつ沈んだのかも分からないような
薄暗くて冷たい部屋だった。
その頃私は、人生最大のどん底を味わっていて
その薄暗く冷たい部屋で、
毎日、絶望感だけを募らせていた。
今、思い返すと、あれは良くない。
良いわけがない!
弱った心に追い打ちをかける。
朝、目覚めても光がなく、
精神的な希望がない上に
物理的な希望もない。
せめてあの頃、
朝日がふんだんに降り注ぐ部屋に住んでいたら
少しは違ってた?
どん底なりに、希望を見出していた?
今となってはわからないけれど、
朝が来たと感じられない、というのは
体にも心にも良いはずがない!

その後、弟が就職で上京し
一緒に暮らすことになった。
もはや神の計らいとも言えるこの出来事により
私はその部屋から引っ越すことができた。
もう随分前のことだけれど
薄暗さ、冷たさ、狭さといった部屋の記憶が
見事に私の辛い記憶とセットになっている。

あと何年かしたら、
娘はこの部屋で
一人で眠り、一人で朝を迎える。
勉強したり、友だちと、そして
好きな人と電話をしたりするかもしれない。
良い日ばかりではないから
悩んだり、落ち込んだり…
そんな辛い日もこの部屋で
過ごすことになるだろう。
そう思うと、
太陽が昇るこの部屋を
娘の部屋にして本当に良かったと思う。
どうにもこうにもツラい日も
すぐには元気になれなくても
太陽が昇る部屋で
朝日を浴びれば
少しは「大丈夫」って思えるんじゃないかな。
少しでも「大丈夫」って思えるといいな。
そう願いながら…。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?