音楽の話:≪ニュルンベルクのマイスタージンガー≫ : アスパラガスの季節

ドイツは今、アスパラガス(Spargel、シュパーゲル)の季節を迎えています。メインは白だったのですが、最近は緑も多く見かけます。

アスパラガスの収穫は天候にもよりますが、おおむね4月中旬から始まり、ほぼ6月24日までとなっています。

ところで、6月24日というのは『聖ヨハネ祭』、ワーグナー≪ニュルンベルクのマイスタージンガー≫の第3幕、歌合戦の日です。遡る第2幕では、その前夜、ザックスがライラックの濃厚な香りの中で、若いエファに対する煩悩を独白します。この場面、オーケストラ・ピットの管弦楽からライラックの花の香りが立ち上り、劇場内がなまめかしい雰囲気に包まれる、といつも思います。もちろん巧い指揮者とオーケストラなら、の話です。

ワーグナーは『匂い』を表現できた数少ない作曲家の一人だと思います。

結局、第2幕は町中の人々の夜中の大喧嘩で終わります。ライラックの馨しい香りが血の匂いで終わる。楽しいはずの『聖ヨハネ祭』も無傷ではない・・・

アスパラガスに殺到するドイツの人たちを見ると、この≪ニュルンベルクのマイスタージンガー≫第2幕をいつも思います。

さて、4月初めにはスーパーにアスパラガスが並びますが、これは土地のものではなく、スペイン産などです。やはり近くでとれた新鮮なものは最高で、遠隔地からのものとは比較になりません。
土地のものが出回る時期になると、農家が売りに来るマルクト(マルシェ、市場)のアスパラガス売り場には長蛇の列ができます。

今年は新型コロナ・ウィルスのせいで、アスパラガスの収穫が危ぶまれました。アスパラガスの収穫は重労働です。おもにルーマニアなどの東欧から季節労働者がアスパラガス収穫の出稼ぎにやってきます。
今年はコロナで国境が閉鎖されたため、彼らを受け入れることが困難になりました。彼らも稼ぎ時であり、国境閉鎖はお互いに大痛手でした。結果、特別扱いで入国が許可されました。

今日、マルクトに行きましたが、アスパラガスの前に例年のような熱気が感じられないような気がしました。最低1.5mの距離を取らなければならないことが視覚的にも冷めたように感じられたのかもしれません。
それに、レストランがまだ開いていない今日、アスパラガスの大量な買い手もなく、例年とは大違いなのだと思います。

でも、収穫したてのアスパラガスは例年と同様、やはりエレガントで高貴な味と香りでした。

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【値段は大きさで変わります。太くて長くまっすぐなものが高価です。左手前の赤い道具はアスパラガスの皮むき、その上部にあるパックは最も人気のある『オランダ風ソース』の既製品です。売る人もマスクをしています。】

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【マルクトの様子です。ここでは屋外であってもみんなマスクをし、最低1.5mの距離をとらなければなりません。このため、スカスカしているようですが、実は長蛇の列です。】

FOTO : ©Kishi


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