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オペラ:ヴェルディ《アイーダ》、バイエルン州立オペラ Bayerische Staatsoper 21.04.24

4月21日、バイエルン州立オペラのヴェルディ《アイーダ》を観ました。
このプロダクション、昨年のプレミエを観たのですが、→


今回はラダメス役にヨナス・カウフマンが登場するので、それが目当てでした。
高額チケットにもかかわらず、売り切れ、大喝采でした。

右から3人目がカウフマン

ヨナス・カウフマンは現在、オペラ界の大スター・テノールです。
私が初めて彼を観たのは四半世紀前、シュトゥットガルト・オペラの《ラ・トラヴィアータ》(日本ではいまだにほとんどが《椿姫》という表記ですね)でした。当時はベルクハウスの演出を観たくて足を運びました。

ベルクハウスは女性で初めてワーグナー《ニーベルングの指環》を演出しました。コンヴィチュニーの先生でもあり、ミヒャエル・ギーレンと一緒の仕事が伝説的になっています。ちなみに、まだ彼女の演出を残している劇場もあります。

そこにアルフレート役で登場したのがカウフマンで、強烈な印象でした。
テノールというよりバリトンよりの重い声、そしてルックスが!!!
細面の顔にかかる揺れる巻毛、情熱的な視線と演技・・・私はてっきり南米出身かと思いました(名前はドイツ名でも南米にはドイツ系の名前がたくさんあります)。

カウフマンは今でも素敵なのですが、顔に丸味が出て、以前とは違います。
ググると以前の写真が出てきますが、コピーライトがあると思うので、ここには掲載できません。Jonas Kaufmann でググってください。

彼はシュトゥットガルトの後、チューリヒに移り、そこからブレイクしました。
当時はシュトゥットガルト・オペラのアンサンブルにいた歌手と結婚していて、確か3人の子供がいるはずです。
現在はその彼女とは離婚、再婚しています。

それから約25年、カウフマンを様々な役で聴いて(観て)きました。
意外に(!)良かったのはデ・グリュー役でした。もう10年ほど前だと思いますが、バイエルン州立オペラの《マノン・レスコー》のプレミエを観ました。
これはハンス・ノイエンフェルツ演出でしたが、当時、アンナ・ネトレプコがマノン役に予定されていたところ、ノイエンフェルツの演出が気に入らずぶつかり降板しクリスティーネ・オプライス(指揮者アンドリース・ネルソンスの元妻)に代わりました。
カウフマンはしかしノイエンフェルツを擁護した、と、彼のインタヴューと記事を読んだ記憶があります。

しかし、なんと言っても圧巻はトリスタンでした(バイエルン州立オペラ)。
2021年の新制作で、指揮はキリル・ペトレンコ。イゾルデはアニャ・ハルテロース。→

これがカウフマンのトリスタン・デビューでした。
上記の投稿にも書きましたが、私は四半世紀も彼のトリスタンを切望していました。それがやっと叶ったわけです。
ただ、この時の演出がよくない。ワルリコフスキはスター演出家ですが、着眼点とアイディアはいいものの、肝心の演出ができない人だとよく思います。
しかし、この時はペトレンコとカウフマンで、大満足でした。

さて、カウフマンは4月1日にザルツブルク復活祭フェスティヴァルの《ラ・ジョコンダ》のエンツォ役で観たばかりでした。→

なお、このザルツブルク復活祭フェスティヴァルについては音楽の友6月号(5月中旬発売)に寄稿しましたので、ご覧ください。

私は特にカウフマンの熱烈なおっかけではないのですが(たくさんのオッカケがいます!!)、本当にたくさんの役を観ることができて、感謝しています。

これまでおそらく1200回以上のオペラのライブ公演を観てきたと思います(数えているわけではありませんが、大体それくらいだろうということです)。
その中で演出が良いとか、指揮者が素晴らしいとか、あるいはその逆とか、いろいろあるのですが、忘れられないシーン、瞬間というのがあり、そのひとつが上記シュトゥットガルトのカウフマンの登場でした。

もう一人、歌手について忘れられない思い出は、ケルン・オペラの《ローエングリン》のクラウス・フローリアン・フォークト。2006年でした。
シルヴァーの甲冑に身を固めて登場したフォークトは後光がさしているようで、周囲の女性たちから感嘆の声が洩れました。そしてあの甘い独特な声!まさしくこの世のものと思えなかった・・・。

それ以前《フィデリオ》のフロレスタン役を観ていたのですが、その時は甘い声が役にあわず、それほどの強烈な印象はなかったのです。
それに東京の新国立劇場でオッフェンバック《ホフマン物語》(阪哲朗指揮)で観たことも覚えています。

フォークトと話をする機会があったときに、「私はあなたのケルンでのローエングリンが忘れられない」と言ったら、「えー、あなたはそんな時から観てるの?もう随分前だよね」と驚かれたことがあります。

今世紀に入ってから、2人のまったくタイプの違うテノールを数多くのステージで観ることができて、これは私への大きな贈り物だと思っています。

FOTO:(c)Kishi

以下はバイエルン州立オペラ提供のステージ写真です。© Wilfried Hösl

ラダメス役のヨナス・カウフマン。


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