クラシック音楽21/22シーズン、まとめとベスト3


21/22シーズンもバイエルン州を最後に7月31日に終了しました。
ドイツは連邦制をとっており、文化・教育は自治体が主権を持っています。
夏休みは州によって違うので、劇場やオーケストラが夏休みに入る時期も異なります。

21/22シーズン(21年8月31日〜22年7月31日)に観た公演をまとめました。

・オーケストラのコンサート 28回
・室内楽と歌曲 16回
・オペラ 52回
・オペレッタ 3回
・バレエとレヴュー 2回

合計 101 回です。
ざっと3日に1回は公演に足を運んでいます。

この中で、『コンサート』(オーケストラ、室内楽、歌曲)44回、『オペラ』(オペラ、オペレッタ、バレエ、レヴュー)57回の二部門で『ベスト3』を挙げたいと思います。
なお、ベスト3に順番は付けません。公演の日付順です。


『コンサート』

2021年11月18日 ケント・ナガノ指揮コンチェルト・ケルン
ワーグナー作曲《ラインの黄金》コンチェルタンテ上演

https://note.com/chihomikishi/n/nc90ed6fa4408

このようなプロダクションはそう簡単にはできません。
優秀な専門家、音楽家、主催者が時間をかけ、努力をした結果です。
まさしく「一期一会」、長く記憶に残るコンサートでした。

2022年3月26日 テオドール・クルレンツィス指揮SWR響
https://note.com/chihomikishi/n/nb728e8ba431a

ロシアのウクライナ侵攻を受け、「ロシア系」の音楽家たちと彼らを取り巻く環境については複雑な事情と理由が絡み合い、簡単ではありません。
芸術家はサポートなしには活動できないのも現実です。これは今の問題だけではなく、昔からあります。ただ、その規模と性質が大きな要素になると思います。
クルレンツィスもロシアのスポンサリングなしには彼が作った『ムジカエテルナ』の活動はできなかったはずです。現状では『ムジカエテルナ』についてはオーストリアを中心にそのコンサートのキャンセルが相次いでいます。
22年夏現在、クルレンツィスは依然として立場表明をしていません。今後もどうなるかわかりません。
その中で、プログラムを変えて行ったコンサートでした。
クルレンツィスはSWR響の首席指揮者です。
SWR響は自分達の持ち味を指揮者と協力することにより、鮮明に打ち出し、一緒に音楽を作り上げる、とても魅力的なオーケストラです。
そして現地での人気は圧倒的で、現在、クルレンツィスが首席指揮者に就任して以来、コンサートは完売、チケット入手はとても困難になっています。
クルレンツィスとの今後の契約、そして共同作業がどうなるかわかりません。聴ける時に聴いておきたい組み合わせです。

●2022年6月9日 キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィル
https://note.com/chihomikishi/n/n56375fd86558

こちらも政治に翻弄された、厳しい時代に生きた芸術家たちの作品演奏でした。
かなり珍しいプロなので、空席も目立ちました。
「オーケストラ・メンガーが全員ソリスト」のベルリン・フィルをまとめ上げるのは至難の技ですが、そこは流石にペトレンコです。
当代一流の歌手を迎え、演奏レベルは世界最高峰、こちらも考えさせられるコンサートでした。


『オペラ』

●2021年11月13日 ベルリン・コーミッシェ・オーパー
ワイル作曲《マハゴニー市の興亡》

https://note.com/chihomikishi/n/na9978fd193e4

演出は当劇場のインテンダント兼首席演出家バリー・コスキー。
度肝を抜かれるようなシーンもあり、全体的には暗く辛い(作品のテーマがそう)のですが、演出家の意志とそれを理解して協力する劇場アンサンブルの素晴らしさ!
とにかく『劇場』の喜びと意味、感謝でいっぱいの公演でした。

●2022年5月21日 ドルトムント・オペラ
ワーグナー作曲《ワルキューレ》

https://note.com/chihomikishi/n/n98edf6efb1e1

さすがコンヴィチュニーの演出でした。
実を言うと、私自身は《ニーベルンゲンの指環》の中で、この最も有名な《ワルキューレ》が最も「嫌」なのですが、ここまで観せられると、唸るしかない。
これまで私が観た《ワルキューレ》の中でベストでした。

●2022年7月11日 バイエルン州立オペラ(ミュンヘン)
ヤナチェク作曲《利口な女狐の物語》
https://note.com/chihomikishi/n/n42eea3d85e36

コスキーは天才的な演出家だと思いますが、いつもいつも良い仕事ができるとは限らない。でもこれは彼の「天才」ぶりを実感できる制作でした。


21/22シーズンの初めはまだ手探り状態でした。
客席数も制限され、入場も『ワクチン接種証明』か『快方証明』か『検査陰性証明』、そのうち、『検査陰性証明』はリストから外され、より厳しい基準になりました。そして場内ではマスクの着用の義務がありました。

感染状況が随分収まってきたと思ったところに、感染力が強いオミクロン株が流行し始めました。
劇場やオーケストラは関係者に対する検査を徹底してリハーサルや公演にのぞんだのですが、陽性者があまりに多く、公演ができなくなることも多くありました。

ある支配人は「その夜の公演ができるかどうかは当日14時にならないとわからない。綱渡り状態が続いている」、そして「検査費用が莫大なんだ」と頭を抱えていました(、毎日、検査をしており、全員の検査結果が出るのが14時頃だからです)。
また多くの関係者が「公演ができただけで嬉しい」、「公演ができるなんて夢のようだ」とも口を揃えていました。

そんな中、公演中止になるかもしれないと思いつつ、しかし行かなければと思い、たくさんのところに出かけてオペラを観、コンサートを聴きました。出かけた場所は、

ハンブルク、ベルリン、ポツダム、ドルトムント、エッセン、デュッセルドルフ、ケルン、ハイムバッハ、フランクフルト、シュトゥットガルト、ドナウエッシンゲン、バイロイト、ニュルンベルク、ミュンヘン、オーバーアマガウ、ランツフート、ザルツブルク・・・

オペラ劇場、城内劇場、ミュージカル劇場、コンサート・ホール、教会、修道院、ホテル、学校、水力発電所・・・さまざまな会場にも行きました。

コロナのせいで(おかげで)、ストリーミングが増えました。便利になりました。こちらもメディアとして重要だと思います。

しかし、『ライブ』に勝るものはありません。

コロナのロックダウン中には外出規制もあり、みんなと会うこともできませんでした。
オペラやコンサートのライブでの体験そのものもそうですが、久しぶりに会い、語らうことができるのは、何よりも貴重なことであると、さらに実感したシーズンでした。

世界はますます混沌とし、出口が見えません。
しかし来シーズンも公演ができ、観て、聴いて、ディスカッションできることを心から祈っています。







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