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美術の話:『アッターゼーの2人のグスタフ』②画家グスタフ・クリムト

19世紀末から20世紀初頭のウィーン。
マーラーの他、有名なもう一人のグスタフといえば画家グスタフ・クリムト。
クリムトのこの絵は多くの人が見たことがあると思います。
有名な《接吻》。

この絵のモデルになったのはエミーリエ・フレーゲと言われています。

下の絵は《エミーリエ・フレーゲの肖像》(1902年)。


ただ、彼女はこの絵を気に入らず、1908年にウィーン市歴史博物館に売り渡し、そのおかげで現在、私たちも見ることができるわけです。

エミーリエとグスタフは結婚しませんでしたが、長きにわたって一緒にいました。
2人はウィーンの喧騒を逃れて1900年から、多くの時間をアッターゼーで過ごしました。

まず1900年からリッツルベルクの醸造所、1908年からはカマーのヴィラ・オレアンダー、1914年からはヴァイセンバッハの森小屋に住んでいました。

アッターゼーのカマーには「クリムト・センター」があります。2022年、クリムトの生誕160年を記念してつくられました。
ところが、2022年10月からクリムト美術館は閉鎖しています。理由はエネルギー危機による経済的負担が大きく保持できないからだそうです。


閉鎖の情報はサイトにも出ており、再開の予定は現在ありません。

年間で数回催される「クリムト・ツアー」に参加しました。徒歩で一時間半、クリムトゆかりの場所を回ります。

集合場所は「クリムト・ガーデン」。
実は「クリムト・ガーデン」の位置がわからず、かなり遠い所に車を駐車したため、遅刻してしまいました。
そこでツアーの最初はわからないのですが・・・

クリムトは50の風景画を残していますが、そのうち46がアッターゼーで描かれたそうです。いくつかの絵に描かれた植物をそれぞれの絵に即して箱庭状態で作っています。
クリムトが好きだった睡蓮は中央に位置していたのですが、ダメになってしまい、その代わりにクリムトが乗っていたボートをイメージしてオブジェを作ったそうです。
そういえば、クリムトはボートに乗って絵を描いていましたが、揺れのため、それは諦めたそうです。


「クリムト・ガーデン」を後にし、歩を進めました。
クリムトとフレーゲが散歩した場所、絵のモデルになった風景など、その該当する場所に説明がついています。

クリムトとフレーゲは喧嘩ばかりしていたそうですが、一方で、2人は1日に7〜8通の手紙を交換していたそうです。

クリムトは女癖が相当に悪く、家の小間使いや女中をはじめ片っ端から関係を持ち、中には14歳で妊娠した「子供」もいました。

フレーゲは当時のウィーン社交界、モード界の花でした。1952年77歳で亡くなりましたが、シャネルやディオールにも多大な影響を与えたそうです。
19世紀末、彼女がデザインした服は、女性をきついコルセットから解放してゆったりしたラインになっています。
また、肩周りもゆったりとさせ、流れるようなラインを作っています。

クリムトは1918年2月6日、55歳で亡くなりますが、彼の全財産の管理をエゴン・シーレに任せました。
ところがそのシーレも8か月後、スペイン風邪で亡くなりました。

クリムトはアッターゼーの絵も描いています。

これは私が撮ったアッターゼーの写真。

アッターゼーには新石器時代、7〜8の水上集落があったそうです。湖底に木を打ち込んで住居を作ったそうで、「ヴェネチアよりずっとずっと古いですね」と言ったら、ガイドの人が笑っていました。

アッターゼーは19世紀末〜20世紀初頭に芸術家たちが集まりました。
近くのバート・イシュルはウィーンのハプスブルク宮廷をはじめ、ハイソサエティが集まりましたが、アッターゼーは寒村で土地の値段なんてあるかないかわからないような所でした。
今でも湖畔にはさまざまなヴィラが残っています。

最も有名なヴィラは『ヴィラ・パウリク』。
ハプスブルク宮廷付きの大工だったパウリクが建てたヴィラは実用性を一切排除したものだそうです。
パウリクはクリムトとフレーゲと仲が良く、2人はここにもよくきていたそうです。
フレーゲがこのヴィラにいた時、対岸からボートを漕いでやってくるクリムトを望遠鏡で見つけたフレーゲが「また来るわ。あー、うざい!」と言ったらしいです。
全く、好きなんだか嫌いなんだか・・・



ヴィラ・パウリクを柵の外から撮った写真です。
ヴィラ・パウリクは常時公開しているわけではありません。一定期間の火曜日にガイド付きで見せており、ガイドの人に言わせると「一見の価値あり」だそうです。
なお、人数の問題はありますが、事前に申し込むと見学のアレンジ可能ということでした。

ヴィラ・パウリクの近くのヴィラ。


FOTO:©️Kishi

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