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イラン、最高でした

さて、イランの記事を書こう書こうと思っているうちに気づけばトルコからブルガリア、ルーマニア、ハンガリーを経てポーランドに来てしまった。
インドの記事を書いて燃え尽きた私の創作意欲がやっとこさ回復してきたので、今日こそイランについて書こうと思う。


始まりは3年ほど前、後輩のインスタグラムだった。
彼女が「#イラン」と投稿しているのを見て、私は静かに衝撃を受けた。
「…イランって行けるんだ」
時代は21世紀なのだ、行けない国なんてない。ないけど、イランという国は女子大生が遊びに行けるところではないと思っていた。だってなんだか危なそうじゃん。
加えて投稿された写真がとてつもなく綺麗だった。え〜なにこれめっちゃイイ。私は小さな画面に映るピンク色のモスクに釘付けになってしまった。
こんなに綺麗なものがある国ならいつか行ってみたいなあ、ちょっと現実味ないけど、なんて思った。それが3年前。

そして今回の旅行を企画しているときに目にしたのが岡田悠という方のイラン旅行記。そこにはイランのことがおもしろおかしく書かれ、「アメリカから経済制裁を受けている今がホットシーズン!」とあった。
「…イランめっちゃおもしろそうじゃん」
蘇る3年前の衝撃。
突如現実味を帯びるあの時の願望。
こりゃ行くしかない!
私は嬉々として旅程にイランを組み込んだ。


イランに行くにあたっては、おそらくいろいろな人にご心配をおかけしたことと思う。私も入国するその瞬間まで、めちゃくちゃ不安だった。
でも、イランで過ごした約2週間はこれまでになく素晴らしい経験がたくさん詰まった日々だった。

イランという国は、まずびっくりするくらい人が親切だ。
街を歩いているといろんな人から”May I help you?”とか”Welcome to Iran!”とかって声をかけられる。イランに入国してしょっぱなの電車では、家族連れと仲良くなっておばあちゃんにたくさんかぼちゃの種をもらった。家に招かれることも多々あるというし、楽しいところである。
商売でない人からこんなに声をかけられる国もなかなかないと思う。お金の絡まない会話のなんと清々しいことか。
というか商売の人でさえ、お金に無頓着に見えるくらいクリーンだった。お土産屋さんでは値段をふっかけてくることもないし、無理に買わせようともしない。タクシードライバーはチップをかたくなに受け取らない。アイス屋さんでは2種類だけのつもりが、あれよあれよというまに全種類盛りになりプラスでフルーツやちっちゃいコーンまで盛られてお値段そのままだった。素晴らしすぎないか?みんな聖人なのか?
こんなに気軽に人と喋ったりお買い物をしたりできる国はなかなかなくて、毎度感動していた。

そしてなにより、建造物の美しさが尋常ではない。
テヘランのゴレスタン宮殿や、イスファハーンのイマームモスク、シーラーズのピンクモスクやシャーチェラーグ廟などなど、挙げればきりがないほどだ。
宮殿などは見たことないくらい豪華絢爛でキラッキラに輝き、モスクは完璧な幾何学模様が美しい。
また、これは建物だけじゃなくて美術品にも言えることだけど、造形の中に西洋っぽさと東洋っぽさが混在しているのが面白いところだ。全く初めて見るのに、どこか既視感がある。まさに西洋と東洋を結ぶ世界のつなぎ目って感じ。
今までいろいろな場所に行ったけれど、イランの美しさはダントツだ。どこに行っても間違いなく圧倒的な美を感じられることと思う。

他にも、イランは食事も美味しいし(ラムが多めだから苦手な人は幅が狭まるけど)、手工芸品もいろいろあるうえにどれも素晴らしいクオリティで見ていて飽きない。
都市間の移動も長距離バスがアホほど安い(8時間くらい乗るやつが300円くらい)ので気軽にできる。
街の雰囲気も、有名なブランドこそ見ないが、たくさんのお店があって活気がある。
本当にとんでもなく観光しやすいところである。


少し良くない話もすれば、男性がイランの女性と関係を持つことは宗教的な理由でなかなか難しいらしく、旅行者の女性は手っ取り早く欲を満たせる存在として狙われやすいのだそうだ。
たしかに街中で突然連絡先を聞かれたり、一度会っただけなのに画面いっぱいのラブコールを送られたりした。むやみに触られたりとか、そういう実害はなかったけれど、日に何人も話しかけてくるのでだんだんうっとおしくなってくる。
一緒に行動していた日本人の男の人が「一人で歩いてる時より人から話しかけられる」と言っていて、声をかけてくる人の何割かは下心なのだと思うとちょっとがっかりもした。
もちろん自分が女性だから得してるな、ということもたくさんあったので非難ばかりもできないけど。

ほかにも、配車アプリを使わないでタクシーに乗ると値段をふっかけてくるという話を聞いたり、明らかに怪しげなツアーに勧誘されたりということもあった。ここらへんは他の観光地と同じだ。


それから、イランという国の住みづらさや国際的な立場の弱さみたいなものもときおり感じた。
女性は旅行者でさえも必ずスカーフを着用して髪を隠し、長袖で肌を隠した格好をしないといけない。これを守らないと風紀警察に捕まるのだそうだ。そもそもめんどくさいし、毎日灼熱の気温のなかでこの格好を守るのは結構つらかった。チャドルを着た自分はめちゃくちゃ面白かったので着て良かったけどね。
ほかにもモスクは男性女性で使える場所が異なっていることが珍しくなく、男性用のほうが大きくて美しい場合もある。女性であるというだけで綺麗なものが見られないのは悔しい。

カウチサーフィンで泊めてくれた女の子は、国に対するいろいろな不満を教えてくれた。
国内のホステルやゲストハウスはイラン人が泊まれなかったり、泊まることができても宗教上の理由のためにイラン人女性はパートナーの男性と同室に泊まれなかったりするらしい。
「イランは自国の国民に対して差別をしてる!」って怒っていた。ごもっともだ。
彼女は150ユーロのお金を払ってカナダかどこかのビザを申請したけど、お金を失くされて再度払わされた挙句に満足な理由もなくビザをもらえなかったという話もしてくれた。現在イランの貨幣価値はすこぶる低いので、300ユーロは大金だ。そんな大金をムダにさせるなんて、聞いてるこっちまで憤りを感じるようだった。


今回イランに来て素晴らしい面もちょっと暗い面も見聞きしたが、トータルで言えば、たいへん快適に楽しく過ごすことができた。
イランは本当に人が素晴らしく文化も素敵に豊かで深いと知った。
自分が今までイランに対して持っていたイメージは、ごく外側の、偏ったものだったことを自覚した。
だからイランの人々が国に振り回されて窮屈な生活を送るのは悲しいし、たくさんの人がイランに行かないまま悪いイメージを持つのも悲しい。
イランに行くということには若干のハードルや代償がついてくるので、気軽に行ってこいとは言えないが、このnoteで少しでもイランに興味を持ってもらえたら嬉しいな。
イランの人々が宗教や国際問題から解き放たれて自由に暮らせますように。より多くの人がイランの素敵さを知りますように。
ささやかな祈りとともに今回の記事は終えたいと思います。楽しかったぜイラン!


#イラン #イスラム教 #モスク #旅行 #写真 #旅行記

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