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第7話 不動産と不動産会社

腹の虫が収まらないまま物件探しをやり直す。不動産掲載サイトはたくさんあるが、このサイトだから特別な物件が載っている、ということはまずない。どこを見ても同じ物件が並んでいる。スーモやアットホームは掲載数が多く検索の定番サイトになった。どちらが見やすいかと言えば僕はアットホームに軍配を上げたい。それから掲載数は少なめだが不動産ジャパンの情報は信用できる。検索しづらいのが欠点ではある。

不動産についてなにも知識がない頃、駅前の不動産屋を妻とはしごしたことがある。そこで思い知ったのである。どこへ行っても条件が同じなら出てくる物件は変わらないのだ。中にはその不動産屋だけが持っている情報があるのかもしれないが、それはベリーレアケースであって、しかもその物件が自分にとって運命の物件になる確率などほとんどゼロだ。不動産情報は不動産会社だけが閲覧可能なレインズというサイトに一括掲載される。みんなそのサイトを見て紹介するのだから出てくる物件が同じになるわけである。

スーモやアットホームといったサイトはレインズ掲載後に出るので若干のタイムラグが生じるが、それも騒ぐほど遅いわけではない。むしろ申込み済みの物件がいつまでも掲載されてしまう方が問題である。いい物件を見つけたと思って連絡してもそれはすでに申し込み済みですと言われてしまうことが多々あった。それくらい掲載取り下げが遅い。これには一応わけがあって、申込みがあっても実際に契約するまでなにがあるかわからないからである。申込み日から契約まで二週間あくと、その間掲載されっぱなしになるのである。そして、一般のサイトでは申込みがあるかどうかの情報までは得ることができないのだった。ともあれ結局のところ、自宅で検索するのがベストという結論である。では、自力で物件を見つけて自分でサイトに記載の各不動産会社に連絡をしているかというと、ぼくらのケースは違うのである。

今回の移住において、新築は最初から対象外である。中古物件一択というわけだ。中古の物件を購入してリフォームして住むというのが最初から僕たち夫婦の共通した考えだった。ぼくも妻もアンティークものが好きなのだ。所有している腕時計のほとんどはアンティークウォッチである。それは古いから好きなのではなくて、きちんと作られているから好きなのである。きちんと作られているとは、壊れても修理して使い続けられることを意味する。壊れたら買い替えるのが現代の主流だ。それは時計も家も変わらない。製品自体がそういう作りだから当然その品質だって長期使用を考慮したものにはなっていない。新築物件がきれいに見えるのはそれが新築だからである。

それが数年経って、それもかなり早い段階で作りの悪さが露呈する。そんなことは、築浅の物件を見ていればよくわかる。そして僕たちはそうしたプロダクトになんの魅力も感じないのである。だからできたてホヤホヤの新築物件は最初から眼中になくて、言う慣れば築浅物件も興味がなくて、築十五年以上が経った古めの家をリフォームして暮らしたいと思うのは当然の成り行きだった。

ちなみに大雑把に言って、建物の価格は大体十五年ぐらいでゼロ円になってしまう。残るのは土地の価格だけである。だから築浅の中古物件には土地の価格プラス家屋の価格が載っていてその分高くなっているので注意が必要だ。それは買ったときの金額が年月とともに目減りするからである。もし将来その土地を売却することがあって、地価も上がっていなければ買った時よりも安い金額しかつかないというわけだ。

イギリスとくにロンドンでは建物が古ければ古いほど価値があると言われている。日本は地震が多いとか湿度が高いとか色々理由はあるとは言え、家屋に対する考え方がまるで正反対であるのは国民性だろうか。なんでもすぐに消費してしまうという指向には寂しいものを感じる。

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