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俳句四季新人賞最終候補者競詠2022より好きな句

『俳句四季』12月号の新人賞・奨励賞受賞記念作品および新人賞最終候補者競詠より。

山茶花のこぼるるやはや溢るるや  赤松佑紀
弔問のみな白息を憚らず  同

新人賞受賞の赤松さんの連作は、しっかりとした一物の句が多い印象。詩心のはっきりとした句が多いと思いました。

海鼠腸を啜らば響く鬼太鼓  菊池健

奨励賞受賞の菊池さんの連作は、佐渡がテーマのようです。角川俳句の7句連作のコーナーに出てきそうなベテランの雰囲気があります。

羽虫這ふさきへ延長する机  さ青

奨励賞受賞のさ青さんの連作はすごく自由です。さ青さんの小文が素敵です。「鏡」とは句座をともにする人たちでしょうか。

以下、最終候補者競詠よりお一人ずつ好きな句を。同じ結社の蒼海の方々や、句座をともにしたことのある方々や、俳句甲子園でご活躍の高校生の方々と、盛りだくさんでわくわくしました。

まつすぐな中央線と秋刀魚かな  折戸洋
曼珠沙華軽トラのドア閉め直し  笠原小百合
白杖のくづす馬蹄や冬木の芽  川又夕
ミックジャガーの妙なステップ春近し  川村胡桃
神の旅むかう透けたる月球儀  北村浬
夜光虫になりかけて手を摑まれて  木村眞魚
動脈のくつろぐ後の更衣  栗栖深月
喪主になるまでを燕の何世代  郡司和斗
煎餅の二次元の海老天の川  国代鶏侍
経本のルビに長音星流る  小谷由果


親友になった日のこと烏瓜  後藤麻衣子
虫しぐれ居留守のときの息遣い  小林鮎美
口紅の光の層の寒さかな  近藤幽慶
たましいは離れて烏瓜の花  上峰子
安き傘ばかり死にゆく野分かな  鈴木総史
ものなべて卵に綴づる秋思かな  関友之介
海底を照らすごとゆれ夜の芒  髙木小都
肌寒くないかなバターピーナッツ  髙田祥聖
しばらくは転がり進む鹿の糞  田邉大学
色褪せし赤い羽根出る貸金庫  谷村行海

誘拐と気付かぬほどの暖かさ  たろりずむ
鶏頭や奥にたくさん薬剤師  千野千佳
ストーブや枕より柔らかに耳  綱長井ハツオ
焼け落ちてしまふかたちに曼珠沙華  戸矢一斗
手の甲に垂れまはり来る桃の汁  中西亮太
鮭の歯のやはらかさうなかたさうな  野城知里
お日様を抱けばかぼちやの匂ひせり  柊月子
三坪の豆菓子の店涼新た  福嶋すず菜
白鳥とたしかに思ひゐしが缶  藤井万里
神として生きものとして山眠る  藤本智子


ヒマワリの目玉目玉が泣く夜かな  藤本博夫
臍の緒のごとくマフラー伸びてをり  正山小種
我より背高き子どもも秋の風  南幸佑
だからってそんな言い方啄木忌  諸星千綾
むづかしきもの蓑虫と京ことば  山口遼也
よきことといへば涼しきことくらゐ  若杉朋哉





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