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蒼海22号 好きな句

中空の痣のごとくに葛の花 堀本裕樹
口笛を吹きつつ囮置く子かな 堀本裕樹

主宰の作品「濃く淡く」より。葛の花の句は比喩が新鮮です。囮の句は「悪の経典」の主人公が「三文オペラ」の口笛を吹くシーンを思い出しました。

鼻息がうぶ毛にぬくし秋の蚊帳 森賀まり
銀杏のまるく艶無くこぼれけり 森賀まり

招待作品「銀杏」より。鼻息をミクロに詠んだ句に驚きます。銀杏の艶の無さを詠むことにもまた驚きました。森賀まりさんの十句がすごくいいです。

である調とですます調のあいだだけ栄えていたヴァンパイアの国家 郡司和斗

短歌招待作品「U」より。郡司さんは蒼海会員です。短歌招待作品にサプライズ登場した感。郡司さんの第一歌集『遠い感』が好評発売中です。

会員作品より好きな句を挙げます。

青桐やニュータウンてふ古き街 中村想吉
牛たんの日傘の列に加はりぬ 楠木文鳥
折り鶴の折りかた夏の終わりかた 加留かるか
瑠璃星天牛けふ少年の多弁なる 紺乃ひつじ
その中に答へあるかに大花火 福嶋すず菜

マネキンの胸玻璃越しに五月雨るる すずきなずな
また父の細くなりけり簟 西木理永
秋風や菓子の甘さのいなり寿司 鈴木トモオ
インフィニティプールの際を漁船過ぐ 朝本香織
サイダーや少女期も知る遺影妻 板坂壽一
遊ぶ子に頭下げたる夜店の子 牛尾冬吾
咲くやうに潰れてをりぬこがねむし 小谷由果
天蛾の軟らかき腹少年期 つしまいくこ
娑婆の棘抜けてゆくなり平泳ぎ 福田健太
エイの裏みたいな顔の昼寝人 福田小桃
裏切りはひやりと重きバナナかな 森沢悠子
日傘さし少し離れてしまひけり 矢崎二酔
少年走る家並みに見えぬ花火追ひ 土屋幸代
まくなぎに守るものあるかのごとく 濱ノ霞
炎帝や親をあづけて海にゐて さとう独楽
本堂にチェロ置かれある秋気かな 平林檸檬
先に尻浮いてくるなり源五郎 犬星星人

藤の実の宇宙ステーション的ぶらぶら 山口ち加
君の日記を読むように日傘に入る 浅見忠仁
照り梅雨や手術待つ間のスパゲティ 五戸真理枝
ビーチボールのビニルだんだん匂ひくる 澁谷洋子
ハングルの文字に○ある涼しさよ 杉澤さやか
口さきのまくなぎはらふ口さきで 桑野コワシ
まだ母に見立ててもらふ水着かな 霜田あゆ美
ピーマンのあつと輝く日なりけり 古川朋子
ペンパルのゐる半世紀あつぱつぱ 森井三喜

ほかにもまだ挙げたい句がたくさんありました。


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