角川俳句８月号の付録の俳句手帖（秋）に、わたしの句が掲載されていました。

秋風や佐渡の大きな日本地図　千野千佳
虫売の子が虫売に隠れけり　千野千佳

（昨年の角川俳句賞に出した句群より。ありがとうございます。）

手帖の中の例句からいくつか挙げます。

新涼やペンのをさまる手帳の背　中根美保
弁当の蓋に貰つてふかし藷　西山ゆりこ
こほろぎの滴のごときかうべかな　森賀まり
昼の虫聞こえる耳となつてきし　山本素竹
風強き日の青空や吊し柿　富吉浩
金閣の金揺り落ちぬ水の秋　生駒大祐
引波に砂の泡立つ厄日かな　利國春美
身に入むや人に時間といふ薬　伊藤みつ子
輪唱の最後はひとり鰯雲　市川逸庵
秋風や皿を打ちたる芋けんぴ　坂西敦子

子のクレヨン野分の如く父を描く　髙柳克弘
妻来ると思ふ花野に待ちをれば　茨木和生
重たくて温かき皿夜食取る　小野あらた
新蕎麦や背中に回す社員証　西生ゆかり
秋耕や容赦なく踏む夫の影　矢野昌子
威銃村人減りも増えもせず　杉本保
先代の声に似て来し盆の僧　藤城良子
銀ブラと同じ鞄の墓参なり　折勝家鴨
もぢもぢと構へしばつた飛びにけり　抜井諒一
すがりたる草に沈みていぼむしり　稲畑汀子

木犀の香り無音の救急車　柏柳明子
礼状に桃描く桃の香の中に　松野苑子
ひとしきり食べて葡萄を裏返す　茶谷静子
朝顔や寺にきのふの鉋屑　山口遼也
稲の香の赤子抱かせてもらひけり　市堀玉宗
草の実の飛んで鰊が蕎麦の上　山口昭男
葛咲くや海へ押し入る濁り河　奥坂まや