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蒼海17号の好きな句

蒼海17号は2022年10月刊行。

堀本裕樹句集『一粟』の大特集号かつ第3回蒼海賞の発表号(小谷由果さんおめでとうございます!)であり、いままでにないほどの厚みのある号になっています。

樹液透けかなぶんの翅ぎらぎらす  堀本裕樹(連作「いかに揺れども」より)
めづらしき瓜盗人やまづは撮る  堀本裕樹(連作「いかに揺れども」より)
牛乳の蓋舐めてゐる野分かな  岩田奎(招待作品「瘤」より)
力瘤見せて戻せる刈田かな  岩田奎(招待作品「瘤」より)

人に人の影映りをる花月夜  澁谷洋子
遠足のはぐれて空の広かりし  犬星星人
手裏剣めく女将のバレンタインチョコ  河添美羽
春手套やさしき人の多弁なる  つしまいくこ
はるかぜや窓拭く人に命綱  加留かるか
調弦のかすかな唸り春のひかり  矢崎二酔

チューリップ妹に付き添ふ習ひごと  武田遼太郎
いつも鳴くインコ静かな卒園式  会田朋代
春愁の置鍼ほどの痛みかな  朝本香織
紫陽花に日矢これでもかこれでもか  福田健太
花水木開ききりなほ開きゐる  福田小桃
山葵田や根に分たれて水の帯  土屋幸代
春更くや指を折りつつ買ふ土産  杉本四十九士
折鶴を折りひらくごと花水木  後藤麻衣子
くちづけに揺らぐ頭や桃の花  日向美菜
後戻りできぬ出家や遅桜  中島走吟
涅槃会の浅き傷ある果実かな  平林檸檬
吊るされて玉葱は落ち着いてゐる  古川朋子
労働歌唱えコロッケ潰したる  牛尾冬吾
皆がそつとさはるロビーの桜かな  楠木文鳥
風船の日に日に小さく濃くなりぬ  杉澤さやか
恋文のやうな口コミ桜時  土橋胡翔
水やうかん老婆じみたる母のこゑ  三師ねりり
永き日の四方にひらく畳紙  種田果歩
頼りなきほど透きとほるゼリーかな  弦石マキ
補聴器を外し二人の日向ぼこ  西村みち子

投げ銭に曳猿牙を剥きにけり  小谷由果(蒼海賞受賞「水門」より)
短夜の躁から鬱へピンボール  三橋五七(蒼海賞准賞「ピンボール」より)
鉄塔や錆の如くに寒鴉  正山小種(蒼海賞奨励賞「平らな路」より)

スプーンに漣となるシャーベット  小谷由果(円錐賞白桃賞受賞作品「漣」より)

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