第 6 章 分析結果

 本章では、統計分析の結果を示す。第 1 節で分析手法について述べ、第 2 節で分析結果を示す。そして最後に第 3 節において分析結果の総括と考察を行う。

―第 1 節 分析手法―

 本研究は、調査仮説を統計的に検証するために共分散構造分析を行った。なお、分析にあたっては、IBM SPSS Amos Version 25 を用いた。

―第 2 節 分析結果―

第 1 項 記述統計
 概念モデルにおける観測変数の記述統計を図表 6-2-1 に示す。

図表 6-2-1 概念モデルにおける観測変数の記述統計

第 2 項 信頼性分析
概念モデルにおける信頼性分析の結果を図表 6-2-2 に示す。

図表 6-2-2 概念モデルにおける各構成概念の Cronbach のα係数


第 3 項 共分散構造分析
 本項では修正モデルの共分散構造分析の結果を示す。モデルの分析結果は、図表 6-2-3、6-2-4、6-2-5、6-2-6 に示す通りである。
 X2 検定の結果、X2 値は 358.036 、自由度は 181、有意確率 0.000 となり、X2 値は有意となった。豊田 (2014) によると Hoelter (0.05) を参考にすることができる。この値が標本数を下回る場合、X2 値は有意になっても問題がない。このモデルにおけるHoelter (0.05) は 132 であり、標本数の 221 を下回っているため、X2 値は有意となっても問題ないといえる。
 モデルの説明力を表す GFI は 0.883 であり、このモデルは標本共分散の約 88%を説明していることが示されている。モデルの説明力と安定性を示す AGFI は 0.837 である。また、モデルが説明できなかったデータの分散の大きさを示す RMR は 0.243 であり、母集団内で想定された自由度ごとの平均差である RMSEA は 0.067 であった。モデルの相対的な良さを評価する AIC は 502.036 であった。
 以上より、このモデルの説明力および安定性はまずまずと言える。

図表 6-2-3 モデル全体評価

図表 6-2-4 モデルにおける共分散構造分析の結果

注) 有意確率 : a=1%, *=固定母数


図表 6-2-5 モデルにおける観測変数の推定結果

注)有意確率 : a=1%, *=固定母数


図表 6-2-6 モデルにおける母数の推定結果

注) 有意確率: a = 1%、 b = 5%、 c = 10%、*=固定母数

―第 3 節 分析結果の総括と考察―

 本節では、分析結果を踏まえた調査仮説の検証を行い、分析結果の総括および考察を述べる。調査仮説の結果は図表 6-3-1 の通りである。

図表 6-3-1 調査仮説の結果

調査仮説 1 に関して
 調査仮説 1 は統計的に支持された。「知覚された実現可能性」は「信頼」に正の影響を与える。これより、支援者が、企画が実現しそうだと感じれば感じるほど、企画者への「信頼」が高まることが示された。

調査仮説 2 に関して
 調査仮説 2 統計的に支持された。「企画者の情報」は「信頼」に正の影響を与える。これより、支援者は企画者について知っていればいるほど、「信頼」が高まることが示された。また、その「信頼」への影響は最も強く、支援者は「企画者の情報」を最も重視していることが分かる。

調査仮説 3 に関して
 調査仮説 3 統計的に支持された。「コミュニケーション」は「信頼」に正の影響を与える。これにより、支援者は企画者とのコミュニケーションの質が高まるほど、「信頼」が高まることが示された。ただし、その影響力は他の外生変数と比較すると相対的に小さい。

調査仮説 4 に関して
 調査仮説 4 統計的に支持された。「共有された価値観」は「信頼」に正の影響を与える。これにより、支援者は企画者と価値観が共有されていると感じるほど、「信頼」が高まることが示された。
調査仮説 5 に関して
 調査仮説 5 は統計的に支持された。「信頼」は「コミットメント」に正の影響を与える。よって、人はクラウドファンディングの文脈においても、「信頼」が高まるほど「コミットメント」が高まることが示された。これは、既存文献から考えても妥当性の高い結果と言える。

調査仮説 6 に関して
 調査仮説 6 は統計的に支持された。「信頼」は「知覚されたリスク」に負の影響を与える。これにより、「信頼」が高まれば高まるほど、「知覚されたリスク」が低くなることが示された。信頼がある関係性において、相手の行動が自分の期待を下回ることは考えにくいだろう。このことから、本仮説が統計的に支持されたと考えられる。

調査仮説 7 に関して
 調査仮説 7 は統計的に支持された。「知覚された楽しさ」は「支援意図」に正の影響を与える。これにより、支援者が企画に楽しさを感じれば感じるほど、「支援意図」が高まることが示された。また、「支援意図」への影響は全ての外生変数の中で最も大きい。

調査仮説 8 に関して
 調査仮説 8 は統計的に支持された。「知覚された利益」は「支援意図」に正の影響を与える。これにより、支援者が企画に支援することによる利益を感じれば感じるほど、「支援意図」が高まることが示された。

調査仮説 9 に関して
 調査仮説 9 は統計的に支持された。「コミットメント」は「支援意図」に正の影響を与える。これにより、支援者の企画者に対する「コミットメント」が高まれば高まるほど、「支援意図」が高まることが示された。これは、企画者との関係性の維持・発展の手段の一つとして、支援者がクラウドファンディングでの支援という方法を選ぶからだと考えられる。

調査仮説 10 に関して
 調査仮説 10 は統計的に支持された。「コミットメント」は「共有意図」に正の影響を与える。これにより、支援者の企画者に対する「コミットメント」が高まれば高まるほど、「共有意図」が高まることが示された。また、「コミットメント」から受ける影響の大きさは、「支援意図」より大きいことが明らかになった。

調査仮説 11 に関して
 調査仮説 11 は統計的に支持された。「知覚されたリスク」は「支援意図」に負の影響を与える。これにより、支援者はリスクを感じれば感じるほど、「支援意図」が低くなることが示された。

調査仮説 12 に関して
 統計的に棄却された。

調査仮説 13 に関して
 調査仮説 13 は統計的に支持された。「支援意図」は「共有意図」に正の影響を与える。これにより、支援者の企画への「支援意図」が高まるほど、「共有意図」も高くなることが示された。

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