卒論本文

3-1-b.) クリュソテミスへと引き継がれる「オレスト」

次にエーラトが強調したのはクリュソテミスである。

 自分の未来を見据え、結婚し母親になりたいと願う彼女は、この作品の中では一見もっとも正常であるかのように見える。
 しかしこのクリュソテミスについてはヒューザスが

母親になりたいという彼女の頑固な望みは結局、残酷な復讐を望むエレクトラ、もしくは自身の不完全な誠実さに苦しめられ、悪夢を振り払おうとするクリュテムネストラと同じくらいに(自己)破壊的

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第3章 エーラト演出についての解釈の試み

2012グラーツ『エレクトラ』を土台としてエレクトラの「死」というものを考えるにあたり、2013年9月13日、私は幸運にも上演地であったグラーツにおいて演出家エーラト氏に直接インタビューをするという貴重な機会を頂いた。
 これにより、文献や批評記事だけでなく演出家自身の生の声という重要な資料も含めての考察が可能となり、テーマにより深く肉迫できるであろうと私は確信している。

 この第3章では主にイ

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2-2. 分裂する評価 ―レジーテアターか「原作への忠実さ」か

では、この2012グラーツ『エレクトラ』に関する実際の批評を確認していきたい。

 多くの記事において一貫していたのが、エーラトの「磨きのかかった演技指導(die ausgefeilten Personenführung)」への高い評価であった。 この場合のPersonenführungとは、場面ごとに歌手たちをどこに立たせ、どう動かすかの指導のことを指す。

 これについて、例えばG.ペルシェ(

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2-1-b.) 変形するタナトス

次に、『エレクトラ』におけるタナトス(死の欲動)の要素を考えてみたい。

 フロイトはこの死の欲動について、「自我とエス」では

外界ならびに他の生物を標的とする破壊欲動として姿を現わす _1

 と述べている。

 では、ここではエレクトラとクリュテムネストラの親子関係を例に取り上げてみたい。
 作品から明らかなように、彼女たちは互いに激しく憎み合っている。エレクトラは父を殺した母を憎み、クリュ

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2-1-a.) 抑圧されたエロース

『エレクトラ』において「性」の抑圧という要素が最も顕著に語られるのは、再会を待ち望んでいた弟に対し、エレクトラが自身の「女の成長」を語る場面であろう。この部分はヒューザスも講評で取り上げている(この部分はオペラにおいても一部短縮、改訂されて引き継がれている)。

分ってくれるでしょう、オレスト、甘美な戦慄を
わたしはお父さまに捧げてしまったのよ。
たとえわたしが肉のよろこびにひたったとしても、

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第2章 『エレクトラ』と精神分析のかかわり その演出法

2-1. フロイト精神分析と『エレクトラ』
a.) 抑圧されたエロース
b.) 変形するタナトス

2-2. 分裂する評価 ―レジーテアターか「原作への忠実さ」か

1-3. 動作と演出

この項目では特にエレクトラとオレストの再会から終局に至るまでの演出を取り上げ、第3章における考察につなげていきたい。というのもこの部分の演出こそ留学中の筆者に衝撃を与え、この論文の執筆を決意させたものだからである。エーラトの演出は、過去に多くの演出家によって上演されてきた『エレクトラ』の歴史に一石を投じるものであり、彼のオリジナリティはこの部分に凝縮されていると筆者は考えている。ここではできる限り

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1-2. 音楽と演出

a.) 心臓の鼓動

 この作品を音楽的側面から見てまず特徴的なのは、冒頭部分、心臓の鼓動音に合わせて幕を上げるという演出がなされている点だ。

 観客は暗転した空間の中でまず始めにこの鼓動音を聴くことになる。この音が響く中ゆっくりと幕が上がり、私たちは床面の蛍光灯のみに照らされた薄暗い舞台の上に佇む患者たちを目にするのである。
 指揮者がすっと手を上げる。
 舞台手前側に座り込んでいた患者の一人

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卒業論文 「インディーズにおけるアナログゲーム開発環境と実践」

「インディーズにおけるアナログゲーム開発環境と実践」

いままでに投稿してきたnoteをまとめます。

ぜひぜひ、ちょっとずつ読んでいただければと思います。

目次と導入

-第1章- 研究背景と目的

-第2章- 先行研究

-第3章- 調査

-第4章- 作品制作

-第5章- 検証

-第6章- 結論

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参考文献

英文
Cho, M., M. A. Bonn, and S. Kang (2014), “Wine Attributes, Perceived Risk and Online Wine Repurchase Intention: The Cross-Level Interaction Effects of Website Quality,” International Journal of Hos

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