第 1 章 研究概要と研究の流れ

本章では、第 1 節において問題意識と研究目的を述べることで研究概要を説明する。その後、第 2 節で研究の流れを説明する。

―第 1 節 問題意識と研究目的―

 近年、クラウドディングの利用が日本でも拡大している。矢野経済研究所(2017)によると、クラウドファンディングの市場規模は年々急速に増加しており、 2013 年度の 12,478 百億円から 2017 年度の 109,004 百億円と、 4 年間で 8 倍も増加し、今後も市場規模の増加が見込まれる。クラウドファンディングのように、オンライン上のみで資金調達が可能になったことの背景には、ソーシャルメディアの発達がある。

図表 1-1-1 国内クラウドファンディングの新規プロジェクト支援額(市場規模)推移


(出典)矢野経済研究所『国内クラウドファンディング市場の調査を実施(2017年)』<https://www.yanoict.com/summary/show/id/481?gclid=Cj0KCQiA8f_eBRDcARIsAEKwRGf0HlhgzGiT2Hxz82gDbIC4hMJkCiYmlxNwEN-MPV9ZQoHVGojln0waAkyPEALw_wcB>(2018年10月4日アクセス)より作成。

 昨年度、三田祭論文の執筆活動の一環としてソーシャルコマースについての現状分析を行った際に、クラウドファンディングについて初めて知った。実際にサービスに登録し、いくつかのプロジェクトへの支援も行った。ソーシャルグッドなプロジェクトや、慶應生が行うプロジェクト、サブスクリプション型のコミュニティサービスなどが挙げられる。また、クラウドファンディングに関する書籍を読み、個人的に勉強もしている。その経験から、クラウドファンディングは単なる資金調達の手段としてだけではなく、支援者同士や企画者とのコミュニケーションを生み出す役割も果たしていると感じた。イノベーションの源泉として、また新しいコミュニケーションを提供するプラットフォームとして、クラウドファンディングの可能性に期待している。そのクラウドファンディングが日本において普及するためには、より多くの企画がより多くの支援を集めることが不可欠である。


 クラウドファンディングに関する研究は、クラウドファンディングの登場以降数多く行われている。その中でも主流になっている研究は、Mollick (2014)や内田・林(2014)の研究のように企画ページの充実度と企画の成功率や調達金額の因果メカニズムを明らかにするものだ。一方、クラウドファンディングにおける支援者の意思決定プロセスに着目している研究は少ない。その研究も大部分が、既存の理論をそのままクラウドファンディングの事象に応用したものであり、クラウドファンディング独自の因子について考慮している研究は見当たらない。また、日本市場を対象にクラウドファンディングの支援者に着目した研究も見当たらない。


 以上を背景に、本研究の研究目的を、日本市場において、クラウドファンディング独自の構成概念を発見し、より汎用性の高い支援者の意思決定プロセスを探ることとする。


―第 2 節 研究の流れ―

 本研究ではまず、クラウドファンディングやソーシャルメディアに関する既存研究レビューとユーザーへのインタビュー調査を行い、それを踏まえて概念モデル の構築及び調査仮説の設定を行う。その後、アンケートの調査概要と分析結果を明示し、 考察と示唆を述べ、最後に研究の総括と今後の課題について言及する。本研究の流れは、図表 1-2-1 のように示される。

(図表省略)


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