第 3 章 インタビュー調査

 本章では、既存文献レビューでは洗い出しきれなかった、クラウドファンディング独自の構成概念を探るべく、インタビュー調査を行った。インタビューの手法は、井上(2014)や田村(2006)のものを参考にした。


―第 1 節 支援経験者へのインタビュー調査―

 まず、支援経験者 10 名(内男性 6 名、女性 4 名)へのインタビュー調査では、支援意図に直接的・あるいは間接的に影響を与える構成概念を探る質問を行った。以下では、支援経験者全員が言及した要素について説明する。

(1) 知り合いか、あるいは共通の友人がいる者が行うプロジェクトである
 今回インタビューした人の全てが、知り合い、あるいは共通の友人がいる者が行うプロジェクトへの支援経験を語ってくれた。また、その中には、支援することで、今後企画者とよりよい関係が築けることを期待するものもいた。このことから、「企画者の情報」という構成概念を外生変数として採用する。

(2) 企画がわくわくするものかどうか
 企画が実現したら楽しそうかどうかを重視する声も挙げられた。上記の知り合いであることは、彼らにとって必要条件ではあるが、十分条件ではないという。支援の際には知り合いかどうかも重視するが、それと同様かそれ以上に企画の魅力も考慮するという声が多かった。企画自体の魅力を表す指標の一つとして、「知覚された楽しさ」という構成概念を外生変数として採用する。

(3) 企画が実現しそうかどうか
 現状の調達率がどれくらいか、資金の用途が明確に示されているか、そもそも企画自体が実現可能なものか、などの要素に着目し、企画の実現可能性は考慮に入れることは、全回答者が言及していた。このことから、「知覚された実現可能性」という構成概念を外生変数として採用する。

―第 2 節 企画経験者へのインタビュー調査―

 次に、実際にクラウドファンディング上で企画を実施した企画者 10 名(内男性 7 名、女性 3 名)にもインタビュー調査を行った。質問項目としては、プロジェクトにおける工夫や支援者の特徴が挙げられる。以下では、企画者全員が言及した要素について説明する。

(1) コミュニケーションの大切さ
 全ての企画者は、企画についての問い合わせのみならず、企画の宣伝についても個別的な対応を行っていた。その手段は、メールやSNSのDM機能を用いたものから、直接電話やアポを取ることもあった。企画について、または企画に取り組む理由について、企画ページ上では伝えきれない部分を伝えるためだという。このことは、「コミュニケーション」という構成概念を採用することの妥当性を高める。

(2) 共感してくれた支援者
 支援者の中でも大部分を占めた人は、企画者の想いに共感してくれた人が多かったという。これは、特に新規事業型やソーシャルグッドなプロジェクトの企画者の中で、顕著だった特徴だ。今まで数個の企画を達成させた企画者の一人は、企画ページに自身のバックグラウンドや企画にかける想いのみを書き、企画の説明をサブページに記載したという。結果、このプロジェクトは300 万円を超える支援を集めている。このことは、「共有された価値観」という構成概念を採用することの妥当性を高める。

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