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新プラトン主義~プロティノス&プロクロス



●新プラトン主義について

「3世紀半ばから6世紀にかけて展開したプラトン主義の一種。古代地中海世界における非キリスト教的ギリシア哲学の最終形態であったが、これらと類似の思想傾向を共有するルネサンスの思想家について言われる場合もある。」[1]

 広範な時代、地域にわたって展開されたため、統括することは難しいが、主に以下のような特徴を持つ。

 

① 存在の階層的構造へと二世界説を発展させる。

② 下位存在が上位存在から流出する。

③ 流出した存在は、上位存在を振り返ることで自己の 実存性を保つ。

④ 下位存在は上位存在の関係は、原型と似像である。

⑤ 下位存在ほど多様・分裂・限定の度合いを強める。

⑥ 究極的上位存在は、あらゆる存在を超え、言葉によ る限定すらも許さない。

 

●プロティノス(205~270年)

プラトンの唱えた「善のイデア」を、「一者(ト・ヘン)」とした。

 一者は、全てのものの源泉であり、その充溢によって他のものを生み出す。生み出された他のものは、また他のものを生み出すが、その営みの中では下位に行くにつれて、一者の力が弱くなっていく。プロティノスはこれを存在の位階の基準にしている。[2]

 人間は魂を持つ存在者であるが、その魂は、存在の位階の中でも高いところに位置し、すでに世界を超越している。

その魂を持つ人間は、事物の世界と繋がりつつ、その魂故に一者へと帰還する可能性を秘めている。

 哲学(愛知)とは、まさに一者へと帰還するための営みである。この一者への帰還、つまり合一は、「脱自」、「脱我」、「単一化」という言葉で表される。

このような、最高者との合一を至上のものとして、それを中心に展開される思想を神秘主義思想という。

 プラトンは、イデアと個物の関係を明確に区別するが、プロティノスの場合、イデアと個物の間には、位階という形でつながりがある。

プロティノスにおいて、現実世界はイデアの完全な影ではなく、一者(イデア)の光を分け持つ世界である。

 

●プロクロス(412~485年)

イデアと個物の間に、プロティノスよりも細かい位階を設定し、それぞれの位階に「発出」と「帰還」の関係があるとした。

一者への帰還は、下から順に上の位階へと「帰還」することで為される。


その他、新プラトン主義者には、マルリシオ・フィチーノ(1433~1499年)やピーコ・デラ・ミランドラ(1463~1494年)、ニコラウス・クザーヌス(1401~1464年)が数えられる。他にも、新プラトン主義は、ヘーゲル、ライプニッツ、ベルクソン、ホワイトヘッドなどにも影響を与え、古代から現代に至るまでその存在を示している。

 

・参考文献

貫茂人『図説・標準 哲学史』(新書館、2008年、第15版)
廣松渉、子安宣邦、三島憲一、宮本久雄、佐々木力、野家啓一、末木文美士編『岩波 哲学・思想事典』(岩波書店、初版、1998年)

 



[1] 廣松渉、子安宣邦、三島憲一、宮本久雄、佐々木力、野家啓一、末木文美士編『岩波 哲学・思想事典』(岩波書店、初版、1998年、839頁)

[2] 知性、魂、理性、生物、無生物、というような位階になる。(多分)




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