記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画「BLUE GIANT」感想

 一言で、ジャズとアニメを掛け合わせた青年達の青春映画です。ジャズ音楽と青春の熱さがとにかく魂に訴えてくる凄みがありました。キャラ・物語の構成に微妙な点はありますが、そこが吹き飛ぶくらいパワーがありました。

評価「B」

※以降はネタバレを含みますので、未視聴の方は閲覧注意です。

「俺は世界一のジャズプレイヤーになる!」、宮城県仙台市からティナー・サックス一つで上京した宮本大と、二人の青年が駆け抜けた青春と音楽の物語。

 本作は石塚真一氏による、同名漫画のアニメ映画化です。ジャズミュージックを題材とした作品で、『ビッグコミック』(小学館)にて2013年10号から2016年17号まで連載されました。
 実は本シリーズは全3部あります。上記で連載されたのは「第1部」で、舞台は仙台と東京です。
 そして、同誌2016年18号から2020年9号までは、ヨーロッパに舞台を移した第2部『BLUE GIANT SUPREME』(ブルージャイアント シュプリーム)が連載されました。
 さらに、同誌2020年11号から現在に至るまで、アメリカを舞台とした第3部『BLUE GIANT EXPLORER』(ブルージャイアント エクスプローラー)が連載中です。
 尚、『SUPREME』単行本9巻以降と『EXPLORER』では、story directorの肩書きで「NUMBER 8」氏が著者名に併記されていますが、これは第1作からの担当編集者の「別名義」です。

 本作は、青年達の熱い青春と音楽の物語が多くの読者の支持を受け、マンガ大賞2016で第3位。2017年、第62回「小学館漫画賞」(一般向け部門)、第20回文化庁メディア芸術祭では「マンガ部門大賞」を受賞しています。2023年4月時点でシリーズ累計部数は1100万部を突破しています。今回、満を持してアニメ映画化されました。

 本作を執筆するにあたり、名門ジャズ・レーベル、ブルーノート・レコードの1950年代から1960年代におけるアルバムジャケットのデザインが大いに参考にされています。

 ちなみに、最初の舞台を仙台にしたのは、石塚の担当編集者(NUMBER 8氏)が仙台出身であることに加え、ジャズフェスティバルなどを取材し仙台にジャズの土壌があると感じたことも理由としています。

 本映画は、原作第1部が舞台となっており、脚本はこの「NUMBER 8」氏が務めています。
 アニメ制作は株式会社NUT(ナット)、代表作に『幼女戦記』・『フリクリオルタナ』などがあります。監督は立川譲氏で、代表作は『デス・ビリヤード』・『デス・パレード』、2018年には『名探偵コナン ゼロの執行人』の監督を務めました。

・主なあらすじ

 高校卒業後、ティナー・サックス一つで仙台から上京した宮本大(ダイ)、しかし住む宛がなく、既に進学上京していた同窓生の玉田俊二(タマダ)に頼み込んで居候を始めることに。
 都内のジャズライブハウスを回っていた大は、同年代のピアニスト沢辺雪祈(ユキノリ)と出会い、彼の腕にほれ込んでバンド結成を呼び掛けます。
 最初は「素人」と組むことに抵抗があった雪祈でしたが、大の演奏を聴いて、「何か」を感じ、組むことを承諾します。
 また、大はドラマーに玉田を推薦しますが、「さらに素人と組むなんて!」と感じた雪祈は反対します。しかし、玉田の努力を感じた大は雪祈を説得し、玉田をドラマーとして迎え入れて、「JASS(ジャス)」を結成します。

 初ライブ、最初は殆ど客が入らず、特に玉田は落ち込んでバンドを抜けるべきか悩みますが、雪祈からは「思っていたほど悪くはなかった」と言われ、バンドを続けることを決意します。

 その後、JASSはライブ回数が増える度にファンが増えるようになります。やがてジャズの聖地である「So Blue」で10代のうちに舞台に立つことを目標に掲げ、さらに練習やライブ活動に励みますが…

・主な登場人物

・宮本大/ダイ(声- 山田裕貴)
 18歳。宮城県仙台市出身。担当はティナー・サックス。中3でジャズに魅了され、「世界一のジャズプレイヤーになる」ことを目標に掲げ、高校卒業後に単身上京します。
 玉田の家で居候しながら毎日河原で練習し、その音は荒削りながらも、情熱や高いセンスを感じさせる実力があります。ある日、ステージで雪祈のピアノに一目惚れし、バンドを組みたいと力説しますが…。

・沢辺雪祈/ユキノリ(声- 間宮祥太朗)
 18歳。長野県出身。担当はピアノと作曲。元々は大学のジャズ研にいたものの、レベルの低さから退部。ジャズのステージでは伴奏をする傍ら、交通整理のバイトをしています。
 母親がピアノ講師故に、幼い頃からピアノ漬けの英才教育を受け、10代にして実力者・有名人です。
 最初は自分の領域にズカズカと入ってこようとする大を疎ましく思ったり、初心者の玉田を下に見ていたり、高慢な性格が目立ちますが…

・玉田俊二/タマダ(声- 岡山天音)
 18歳。大と同郷。担当はドラム。高校まではサッカーを続けていたものの、大学のサークルのノリが合わずに退部し、大の一言でドラムをやることに。最初は中々テンポが掴めず、四苦八苦するも…

・アキコさん(声- 木下紗華)
 ジャズバー「TAKE TWO」の店長で元ジャズシンガー。JASSに練習場所を提供し、彼らの夢をそっと応援します。

・川喜田/カワキタ(声- 青山穣)
 ベテランジャズギタリスト。雪祈にSo Blueの人を紹介してほしいと頼まれます。

・由井/ユイ(声- 乃村健次)
 大が高3の頃に半年ほど師事した恩師。彼の音色を「恐れを知らぬ音だ」と評します。

・天沼/アマヌマ(声- 木内秀信) 
 ジャズバンドActのピアニスト。メディア出演も多く、評論家。カツシカジャズフェスティバルへの出演を大に持ちかけます。

・平/タイラ(声- 東地宏樹)
 ジャズライブハウスとして国内最高峰の「So Blue」の支配人。雪祈からJASSをSo Blueに出演させてほしいと頼まれますが…

1. とにかく魂に訴えてくる凄みがあり、映画館鑑賞必須の力作である!

 本作について、まず、とにかく魂に訴えてくる凄みがあり、映画館鑑賞必須の力作でした!予告編の掴みからして惹きつけられるものがあり、これは絶対に観たいと思いましたが、結果見事に「当たり」でした。口コミ評判が良いのも納得しました。

 また、作画・音響は映画館で観るからこそ映えますね。作画について、キャラデザは原作絵のままですし、絵の癖もそこまで強くはないので、絵柄で嫌う人は少ないと思います。
 一方でレビューを読むと、どうも「CGに賛否両論ある」ようですが、個人的にはそこはあまり気になりませんでした。確かに、ドラムの動きは引きで見ると、「やや粗かった」かもしれません。しかし、「作画崩壊」という酷さでもなかったです。

 そして、ジャズについては、オリジナル曲とカバー曲両方ありましたが、どちらも良かったです。予告編で流れていた「First Note」は一番印象に残りました。オリジナル曲でここまで耳に残るのは凄い!鑑賞後にサントラ買いました。本当に映像化に向いていた作品だと思います。

 この演奏の吹き替えはプロの音楽家が担当しており、ティナー・サックスは馬場智章さん、ピアノはジャズピアニストの上原ひろみさん、ドラムは石若駿さんの御三方で、皆様の演奏を録音してから映像を作るという順序で制作されています。
 ちなみに、サックスの馬場氏は、「宮本大として演奏する」前提のため、普段の自身とは異なるスタイルになったと述べています。

 本作、ある意味実写でも行ける内容だと思いますが、もうアニメのインパクトが強すぎたので、アニメ映画で正解でした。恐らく、実写だとパワーが半減してしまうかな。

 後は、制作会社がマイナーなアニメ会社なのか、上映館がそこまで多くないのが勿体ないですね。(違ったらすみません。)※今確認したら、追加上映が決まったみたいですね、良かった!

2. 音楽の強さと「心象の作画」のマッチングが上手い!

 本作は、音楽の強さと「心象の作画」のマッチングも上手かったと思います。
 まず音楽がテーマの作品だと、『ブラス!』・『のだめカンタービレ』・『ピアノの森』・『四月は君の嘘』・『蜜蜂と遠雷』・『音楽』・『異動辞令は音楽隊!』などがあります。
 さらにジャズだと、『セッション』・『スウィングガールズ』・『ソウルフル・ワールド』・『カムカムエヴリバディ』などがありますが、本作はこれらとはまた違った良さを感じました。

 本作、とにかく演奏が激しくて熱いし、凄みがありました。本当に、観ている私まで体温が上がりそうなくらいでした。楽器って一見すれば動きが少ないから地味に見えがちですが、本作は全然地味じゃなかったです!
 この激しい音がテーマな点は、近年ヒットした「無音」がテーマの作品である、『エール!』・『コーダ あいのうた』・『ケイコ目を澄ませて』などとは「真逆」の映画ですが、また違った良さがありました。

 また、心象風景の使い方も良かったです。楽器から鳴らされる音を火や水に喩えたり、唾や汗などの水滴の落ち方・氷に映る姿・雪などの気象表現とキャラクターの心中をうまく「対比」させたり、演奏者や観客の瞳の色・目の動き・楽器の金属の反射などの見せ方が工夫して見せたり、とにかくこの辺の演出はかなり拘っているのが伝わりました。演奏中に、「回想」として、自分達のバンド人生を思い出す演出も良かったです。
 そういえば、大と雪祈は雪国出身です。作中では何度か雪がちらつくシーンが挿入されましたが、雪は彼らの思い出なのかな。

 そして、彼らの音や個性を「エフェクト」で表現するのは、アニメならではでした。ある意味『RRR』・『犬王』・『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンドっぽさがあるというか。(『RRR』は実写だけど。)
 後は、男のロマンや音楽だけど体育会系らしさなら、『THE FIRST SLAM DUNK』にも近いかもしれません。

3. 若者の青春物語なんだけど、どこか「渋さ」や「懐かしさ」を感じる。

 本作は「若者の青春物語」です。無限の可能性がある10代の頃に、その力を信じてガムシャラに頑張ります。やはり青春物語は良いですね。

 大と玉田は少し先生に習っただけで、ほぼ独学の叩き上げ音楽、エリートなのは雪祈だけです。

 大のサックスの音、最初は荒削りで割れていましたが、段々と洗練されてきましたね。

 玉田のドラムの成長も目を見張るものでした。必死に二人に追いつこうと、コツコツと練習を続けます。自宅で布団被ってドラムの練習するの、わかります(笑)。部屋が防音ではないからね。

 雪祈はエリート故にピアノのバリエーションは豊富ですが、それ故に最初の頃は高慢な態度が目立ちました。また、「ジャズは自由」と言いながら、どこか「枠」に留まろうとする矛盾を抱えてもいます。

 最初は客がほぼ来なかった演奏会でしたが、徐々に人気が出て、ファンも増えていきます。それがやがてプロの目に留まり…作中での批評については、プロ故の意見なのかな。素人にはわからない点もありそうです。

 また、「野郎の物語」故に、男子小学生〜中学生レベルのおフザけネタは時折挿入されました。
 トイレで雪祈に「デカいな」と言われて動揺する大には草でした、「サックスまめ」のことですが(笑)また、3人が打ち解けてからは、玉田が雪祈の電話を「お姉さんからですか〜(笑)」とからかう姿も(笑)。しかし、そこまでしつこくないので、不快にはならなかったです。
 本当に男のロマン全開な作品なので、男女の恋愛はありませんでした(笑)。こういう作品にはヒロイン不在で良いですね。

 一方で、どこか「渋さ」や「懐かしさ」も感じました。作画は結構「レトロな絵柄」で、2000年〜2010年代のアニメっぽさがありました。だから、人によっては「古い」と感じるかもしれません。ここは、ジャズということもあり、「敢えて」なのかな。しかし、演出は2020年代のパワーがありました。この作画と演出の両者には「ギャップ」があるように見えましたが、実はこれが良かったように思います。

 まぁ、本作はビックコミック作品なので、週間少年ジャンプ作品のような「ザ・王道少年漫画」というよりは、少し年齢層は高めの「個性的な青年漫画」だと思います。実際に、映画館で観ている客層は、10代よりもアラサー以降の世代が多めでした。

 そして、本作の連載も2013-2016年なので、丁度10年前を思い出すようでした。2010年代に18歳なら、今はアラサーですね。勿論、東京タワー・スカイツリー・晴海埠頭から見える景色は「現代」なのですが、どこか「若かりし昔を懐かしむノスタルジックさ」は至る所に溢れていました。
 もしかして、主要キャストがアラサーの俳優達なのも、それを見越してなのかしら?ちなみに、声優としての技量はそこまで気にならず、普通に聞けるレベルでした。

4. 本作の演奏は実は「回想」だった!

 本作では、何故か時折「録画映像」が挟まれますが、実はここが「ヒント」になっています。
 実は、本作は「回想の物語」だったのです。だから、前述のような「懐かしさ」があったのかと納得しました。
 彼らは、「ジャズは永遠じゃない、即興だからこそ輝く」、この言葉をモットーにJASSの活動に打ち込みました。
 3人の道が一瞬交わるも、また離れていく、それから先は「それぞれの行く道」が伸びています。しかし、そこで得たものは「一生の宝物」でした。
 この3人を見ていたら、アキコさんの「こうなるなら自分の店でライブさせてあげればよかった…」の切なさもわかります。(この理由は後述します。)

 ちなみに、3人の演奏を聴きに来たとある女性は、雪祈の「初恋」の人かしら?ここは敢えて説明はなかったけれど。

5. "BLUE GIANT"ってどういう意味?

 本作は大分「トリッキー」なタイトルがついていますが、これはラストに「伏線回収」されます。

 端的に言うと、「熱すぎる存在」です。直訳すると、"BLUE GIANT"の"BLUE"は「炎の色」、"GIANT"は「巨人や偉人」ですが、一方で「温度が高くなりすぎて、赤の炎を通り越して、青の炎になる現象」も指します。正に、青春を熱く駆け抜けた「JASS」をうまく喩えた表現でした。
 作中では、大と玉田が「叩き上げ」で、雪祈が「エリート」と、両者相反する経歴でしたが、それらが混ざりあったからこそ、「強い化学反応」が起きました。

 そして可能なら、是非エンドロール後まで見てほしいです!
 大は飛行機でジャズの本場のドイツのミュンヘンへ、雪祈は長野の実家でリハビリと作曲を。そしてその曲名は…?その後は原作での第二部へ続きます。(ちなみに、エンドロール中に誰も退席しないのは良かったです。)
 玉田についてはエンドロール後には登場しませんが、作中にて社会人になった彼が登場します。年齢はアラサーくらいでしょうか?もうドラムはやってないようでしたが、社会人になって出世したのかしら?何だかリッチな格好だったので。

6. 雪祈の事故からJASS解散までの流れが駆け足気味。

 これまで本作の良い点を挙げましたが、実は「今一つ」だと感じた点もあります。

 特に、後半の展開が「駆け足気味」だったのが勿体なかったです。元々全10巻の漫画を2時間に圧縮しているので、そうなってしまうのはやむを得ないのかもしれませんが。

 後半、JASSの功績が認められ、彼らは遂にSo Blueのステージに10代で立つ夢」が叶います。しかし、その直後、雪祈が仕事中にトラックに撥ねられて重傷を負い、命の危機に晒されてしまうのでした。
 せっかく長年の目標が達成出来たのに、もうこれが「ラストステージ」になってしまうとは、人生って本当に何が起こるかわからないです。

 そのため、大と玉田は二人でパフォーマンスをこなし、大成功を収めます。でもやはり何か足りない、そんな時、なんと雪祈が急いで退院して駆け付けたのです。
 アンコール前に漸く揃ったJASS、しかしそこで大は「解散」を告げます。正直、ここはやや唐突感を覚えますが、あの時点では雪祈の怪我では、もうピークのパフォーマンスは出来ないと判断した故かもしれませんね。

 ただ、大がその後にミュンヘンに行くなら、その過程の描写はあったほうが良かったなぁ。例えば、大が有名プロデューサーにスカウトされて、JASSは大事だけど、どうしても自分は海外で活躍がしたいと二人に相談するとか。それで二人と揉めるとか、または反対はしないけれど、心の中ではモヤモヤしてるとか。そういう展開があれば、物語の流れとしてより自然になったように感じました。※ここは完全に個人の好みの範疇であり、脚本の質を指摘するものではありません。

7. 「挫折の描き方」については、ややバランスに「歪み」が出てしまったかな。

 本作では、大・玉田・雪祈それぞれ課題があるのですが、その描き方については、ややバランスに「歪み」が出てしまったように感じます。

 まず玉田は、初心者からのドラムスタートにより、リズムが取れなくて苦労しました。雪祈からも厳しい言葉をかけられますが、日々練習を重ねて、その課題を乗り越えました。これは、「王道な成長物語」と言えます。

 次に雪祈は、エリート故に高慢な性格が目立っていました。やがて平から演奏を「酷評」され、さらにその性格も批判されました。しかし、その後交通事故に遭い、右目と右腕を損傷してしまいました。
 こうみると、雪祈の挫折が「二重」になってしまっているのです。性格を批判されて変わる所で「最初の挫折」を乗り越えたのに、次の事故のエピソードが「蛇足」になってしまい、結果話の構成としては「歪み」が出てしまっているのです。
 勿論、雪祈は一番の実力者で有名人だからこそ、こういう流れになったのかもしれませんが。最も、大が怪我したらミュンヘンに行けませんし。
 後は、「片手しか使えないハンデ」について。サックスと、ピアノやドラムを比較すると、間違いなく後者の方がまだ「替えが利く」のかもしれません。例えば、ピアニストの舘野泉氏は、脳溢血によって右半身麻痺になり、今は左手のみで演奏しているので。

 一方で、大に関しては、最初の音割れがあったくらいで、JASSの流れに乗ってからは、わりとトントン拍子に出世していったように感じます。演奏についても高評価だったし。だから、上記の二人に比べると、明確な挫折描写が「弱い」のです。
 勿論、「天才」ならそれでいい、でもそれゆえの苦悩もあるのではないかな。とにかくポジティブで良いキャラなのは良いけれど、もし彼が何らかの形で「明確な挫折」を経験し、自分を「軌道修正」するシーンがあれば、キャラとしての深みや魅力がより増したかもしれません。ここはちょっと惜しかったなぁ。

  まぁ、本作の大はある意味「天才肌」なのでしょう。「ジャズの神に愛されていて、ジャズをやるために生まれてきた」、もろ「ダイヤモンドの原石」かもしれません。雪祈からも、「お前は止まるな!考えるな!」なんて言われてたし。
 所謂、羽生結弦さんや大谷翔平さんみたいな感じかしら。「その道の神様に愛されている」というか。(勿論、その裏では途轍もない努力をされていますよ。)
 まぁ、大くらい年上の偉い人に食らいつくガッツがないと、この芸術世界ではやれないのかもしれませんね。

 しかし、大の私生活のズボラさを見ると、別に「完璧」な訳でもないですね(笑)。うーん、玉田の家にいつまで居候かな?家探しなよと突っ込みたくはなりました。

 そう考えると、本作の「本当の」主人公って、ある意味「玉田や雪祈」なのかもしれません。所謂、「特別な人だけ」の話になってしまうと、成長しても退化してもどこか「他人事」になってしまいやすいです。しかし、「普通にいる人」の話であれば、観客は彼らに共感や感情移入し、物語にも親近感が湧きやすくなるのかなと思いました。

※上記について、「原作には描かれてる」とか、「そこが不満なら原作を読め」という意見があるかもしれません。しかし、私は「映画は映画として、原作とは別に評価したい」と思います。何故なら、メディアミックスしたことで、原作とは「違う」物が出来ることはよくあるからです。また、「物語のもう一つの可能性」として、敢えて「変える」ケースだってあります。

8. 本作の「大きな困難」というのが「交通事故」なのはベタだし、あまりやってほしくない展開ではある。

 後は、どうしても、現代の日本の作品で「大きな困難」というのが病気や交通事故、最近なら震災関連・LGBT関連になるのはテンプレだしベタですね。ここは、本作に限らず、『タッチ』から変わってないです。
 昔あったような身分格差や児童労働などはなくなり、現代の若者は「制約」が少なくなっているとは思います。だからこそ、どうしてもこの辺が「大きな障壁」になるのはわかりますが。
 また、若い人が理不尽に酷い目に遭う展開は、個人的には好みではないですね。

9. 上記の点はあれど、寧ろそれらを吹き飛ばしてしまうほどの熱量がある。

 このように、キャラ・物語の構成としては今一つで勿体ない点はありましたが、だからと言ってそこが映画の質を落とす程酷いわけでもないです。寧ろ、それらを吹き飛ばしてしまうほどの熱量がありました!

 後は、大が音楽大学や専門学校に行かず、独学でサックスを極めるのを見て、「あのレベルでプロ目指すのかよ、舐めんな!」と思う人もいるかもしれません。

 しかし、今の世の中では、必ずしも音楽の技術を上げるために音楽大学や専門学校に行かなければならない訳ではないように思います。例えば、音楽やダンスをYou TubeやTikTokなどのSNSに上げて収益を稼ぎ、そこから声がかかる人もいる訳だし。

 映画自体は良い出来なので、是非色んな人に観てもらいたいですね。拡大上映は嬉しいです。
 私も、行きつけのミニシアターでリクエスト出しました(笑)。応援上映やったら盛り上がりそうです。もうやってるのかな?

 これは、原作読んでみようかなと思えた作品でした。今作の効果で、原作漫画も売れるんじゃないかと思います。サントラCDは買ったので、もし余裕があればブルーレイも出たら買おうかな。映画パンフレットが「レコード型」なのが粋でした。大きくて鞄に入れるのがちょっと大変でしたが(笑)。

 最後に、海外の映画祭に出品してほしいなぁ。是非、ジャズの本場のアメリカやドイツなどでも観てもらいたいです。

出典:

・映画「BLUE GIANT」公式サイト

https://bluegiant-movie.jp/#modal

※ヘッダーはこちらから引用。


・映画「BLUE GIANT」公式パンフレット

・「BLUE GIANT」Wikipediaページhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/BLUE_GIANT

この記事が参加している募集

おすすめ名作映画

映画感想文