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ジェンダーバランス問題、それ以前の話

先日も、国交省の公務員アーバニストスクールの講師25人が全員男性だと言うのに批判が相次いだと、ネットで盛り上がっていました。
ジェンダーバランスの観点から、女性がゼロということが問題だと。業界が男性が多いから仕方ないとも。どちらも一理だと思います。

今後こういう抗議の声が大きくなり、行政が批判を恐れて、これまで以上に委員選定にジェンダーバランスだけを優先してしまう。これが一番、私が恐れていることです。今回の件でも、純粋に講師に適任な人を順に声をかけていったらこうなった。であるのなら、全然いいと思います(実際そうなのかの判断は、専門性が高くないと分からないのが難しいところですが)。国交相のコメントも、自信持って選んでるなら、もうちょっと堂々としてないと講師に失礼やろという感じでしたし。都市経営に長けた公務員を育てる目的、それが本当に達成されるなら、我々一般市民にとっても有益で、そこには専門性の深さや適性が、最上位基準で人を選ぶべきだと思います。

立派な学歴も社歴もないわりに、やたら公的委員の機会が多めの私が思うに、講師を決める側のリサーチ不足はあるのじゃないかと考えてます。
去年なっていたから今年もお願いする、他の委員会でなっていたからお願いする。若しくは、学閥や研究室の系統。委員選出のために、選定側が、自ら講演会に足を運んだりしたことがあるのでしょうか。足を運ばなくても、論文を読んだり、ネットでグーグル検索10ページまでの記事読んでますか?民間のまともなライターやリサーチャーは、これの3倍は人選にエネルギーかけてます(某ドキュメンタリー番組に出演した際、リサーチ術を聞いてびびった)。私と同じ苗字のあの素晴らしい杉並区長が誕生したのだって、どなたかが日本を超えて逸材を見つけてきたことが、まずグッジョブな訳ですし。

ある自治体の住宅系の委員会で、委員メンバーの選出に疑問があり、今回は難しいとしても来年以降のためにと、もっと内容に合致した先生が隣の都道府県におられたので担当者に伝えましたが、全く調べる気が無くて落胆しました。

公でも、誠意熱意を持ってきちんと選ばれることもあります。別のとある自治体の委員会では、委員会自体が新設で、しかも5年間と長めに委員を務めるというものがありました。京都ではなかったので、なぜ私が…と初め断ろうとしていたのですが、立ち上げ時の行政マンがとても熱心で、彼らがなって欲しい委員全員に、直接会いに行ってなぜあなたが必要か、プレゼンしていきました。結果、全員が納得の上で承諾し、前向き。今まで私が出てきた委員会の中でも、最も建設的な議論がなされています。コロナ前は、後の飲み会も全員参加で、引き続き議論。結果的には、ジェンターも学識・業界団体・実務のバランスも年齢も、バランスがとれている。若いからって見下す人もいないし、皆が尊敬し合っている雰囲気がある。個人的には、委員の方から仕事につながったこともあるし、一生の仲になる先輩にもそこで出逢えた。
委員会の質は、委員メンバーによります。チームでひとつの目的に向かって物事を作るうえでは、委員会も、現場のプロジェクトも同じでしょう。なぜそこを疎かにするのか。予定調和に進まないと困るから敢えてだとしても、それはそれで問題です。

選定側に専門性が薄いことは、行政職員の場合致し方ない場合もあるので、講師側も、自分より適切な人を知っていたら、辞退し紹介する行動も大事なのではと思います。ちなみに、私は昔からそうしています。公的な場合は、講師側が、自分の実績づくりより、社会を良くするために、自分の委員会における意味合いを客観視して欲しい。


また、よくある委員の男女比パーセンテージも根拠がなく謎ですし、性別でバランスが必要ならば同様に、年代や学識者/実務者のバランスも取るべきで、その考慮は現状まだまだ足りていないと思います。
将来の住宅政策を考えるという重要な地方自治体の役職についたことがありますが、もちろん30代は私だけで、ほぼ60代以上でした。これからの未来を考えるのに、年配の先生方だけで議論されるところだったと思うと、ぞっとします。
そういうことは日常的に起こっており、疑問に持たないことが疑問です。


世間のジェンダー議論に対する歪みみたいなものは、常々感じています。
行政関係の企画で「子育てママ」枠、リノベーションで「女性ならではのデザイン」とか言っちゃってる事も、うーんと思ってしまいます。たまにメディアで勝手にそういう紹介をされてたりすると、正直不快です。それを喜んでおられる方もいると思うので、一概には言えませんが。
私は所有者の方からの仕事の依頼されるとき、女性らしいデザインとか女性だから、というのが中心的選定理由になっていることは、皆さんの反応を観る限りほとんど無さそうです。丁寧にオーナーに寄り添う、世の中をよんだ企画、性差はさほど関係ないでしょう。「女性が珍しい業界=女性らしい」とテキトーに括るのは、おやめいただきたい。こういう本質をとらえて依頼してくださる方々にも失礼だなと思っちゃいます。そんなアホな理由で、みんな大金託して事業しないから。


最後に一言。ジェンダーバランスのみで選ばれた女性の身にもなってくれ。ある会でそれっぽいと思って一度、私はお断りした経験がありますが。

誰に対して、何のためなのか。ジェンダーバランスを取ることだけが先走りしない世の中になって欲しいし、自分なりのささやかな抵抗であっても、自身は納得して気持ちよく働きたいですね!

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