見出し画像

【#教員不足問題と僕】ゼロイチ折り返し地点、自己確信で覚悟すら楽しんだ話。

こんにちは!
Quicken.(クイッケン)の小谷瑞季と申します。

本投稿を開いてくださった皆様、いつもありがとうございます。

前回の投稿から2ヶ月が経ち、社会起業家の卵として参加している「ゼロイチ」というアクセラプログラムがついに折り返し地点となりました。

同志たちと日夜を共にした合宿が終わってから1人大阪に戻り、先日の中間発表会を迎えるまでの2ヶ月をどのように過ごしたのか、この投稿にまとめようと思います。

各論だけじゃ、あるべき未来は作れないよ。

方向性は決まったはずなのに。

夏合宿が終わった段階では、ディテールは粗いもののビジネスプランの形が方向性としてざっくり定まった状況でスタートしました。定年後の元教員の方で再任用を断った方をターゲットにしたプランだったので、大阪に戻ってからは「なぜ再任用を断ったのか」を実際にヒアリングし、その仮説を検証することが次のステップでした。

が、しかし、全然腰が上がりませんでした。行動力の無さやフットワークの重さに大きくコンプレックスを持っていた僕は、成長していない自分に若干失望したものの、この考えているプランが上手くいくイメージも、自分のターゲットに対する仮説への自信も、どこかで実は持てていないことに気づきました。

本当はそれもヒアリングしまくって確かめることが"正解"なのはどのアドバイスでも共通していましたが、自分が起業家に向いていないことをひしひしと感じながらも、手元で情報を完全に揃えようとする"起業家としてのNG行為"を続けていました。ヒアリングという手段を目的化しすぎたがゆえの停滞だと、今では思います。

起きてる時間は学術論文や文科省の公開している資料を読み漁る、みたいな2週間が経ち、でもプランの検証は当然ですが何も進まず、知識と焦燥感がひたすら積み重なっていました。

気づかされた"視座の低さ"。

10月の初めにゼロイチメンターの1人のご紹介で、とある尊敬するNPO創設者の方に30分の時間をいただきました。最初は自分の仮説がどうかお聞きしようとしましたが、話しているうちに今のプランを壊してもらえる気がして、途中から壁打ちに切り替えました。

プラン概要をお伝えした後、先方から送られてきたのは『「令和の日本型学校教育」を〜の在り方について』と書かれた文科省の資料。

「君、教員不足は最重要課題で間違いないけど、そのプランには疑問が残るな。仮に教員不足は解決されても、その後長く続いていく社会がどうなるのかの方がもっと大事じゃないか。未来に本当の意味で責任を持つなら、各論だけじゃなく、教育の在り方全体を見据えたソリューションであることにトライしてみるのをお勧めするよ。」

・・・おっしゃる通りすぎました!!!と視座の低さを反省しつつ、なんか吹っ切れ、ヒアリングなんかいい、この際とことん教員不足のことも教育全体のことも調べ尽くそう。

問題定義されてから20年くらい議論が蓄積してる領域、教員不足。それでも解決できなかった理由が、行政"以外"の主体が強みを発揮できる変数が、どこかにあるはずだと可能性を模索する感覚で、時間が溶けていきました。

しかし得た学びは想像以上に大きく、教育現場において求められていく人材の質や、そもそも人手不足をヒトという面でアプローチすることの妥当性、教員募集〜採用や配置における現行の制度や法律への理解などが確認できたので、視座がダイレクトに上がる大事な屈伸期間になりました。

ピッチコンテストまで、怒涛の1週間。

とはいえ、3週間ただインプットしてきただけなのでビジネスプランの方は夏合宿から一つも変わっていません。

覚えてはいました、1週間後にSOCIAL BUSINESS FES HOPEというイベントのアイデアピッチがあることは。なんとか大量にインプットした知識を落とし込んだ、納得いくビジネスプランで発表の場に立ちたい。

プランを考える中でふと、合宿中にオンラインで壁打ちしていただいた起業家の方のアドバイスを思い出しました。

「既存の仕組みにそもそも欠陥がある場合は、その仕組みを肯定する装置を作りたくないよね。起業家なら仕組みを疑い、仕組みを作ろう。」

そして、人手不足である他業界の人材マッチングの常識と比較して独自の切り口を見つけ出すことができ、ない創造力・批判的思考力を必死に絞り出して、独自のビジネスプラン(というよりもはや壮大な仕組み)を組み立てることができました。

そんなのありかよ、と言う側になるなよ。

忘れていた、劣等感という足かせ。

ピッチの数日前になんとかプランが仕上がり、満足げに資料に落とし込んでいた僕は、夏合宿最後の発表からだいぶ理想的なピボットができたな〜と思っていました。事業プランは本当に変わった。

でも面白いことに、合宿を振り返りゼロイチメンバーの顔を思い浮かべて、そこで初めて湧いたのが「負けたくないな」という驚くべき感情でした。

悲劇のヒロインのように書くのは配慮が欠けてる気がするけど、高校生の時から活動していたわけでもなく受験勉強と若干の部活しかせずに大学に入り、特定の領域で課外活動を多く積んできたわけでもなく、圧倒的な当事者体験もない一方で、考える前に行動するみたいな資質も安全志向から抜け出す胆力も発揮したことがない。そんな自分が一人前に社会起業家の夢を口にしたわけなので、「これで自分もみんなの仲間入りができたかな」みたいな進め方をしていました。

合宿では同じプログラムを受ける中で、その憧れ感情に違和感を感じることなんてなかった。けど、オンラインでメンバーの進捗を逐一見ない中のプランニングが、良い意味で自信に気づく時間になっていました。まさにロールモデルの逆代理体験ってやつに陥っていたと思います。

その謎の自信に気づいた僕は、この状況の抜け出し方を本格的に考えてみました。事業の中身ではなく、僕自身のマインドセットから変えることが順番として先だと前提をもって、自分がこのプログラム期間にしてきた"妥協"とその理由を振り返りました。

メンバーへの尊敬感情とは別の理由としてあったのは、ゼロイチというプログラム設計への信頼感情です。これはみんな口を揃えて言いますが、ゼロイチはボーダレスアカデミーのノウハウを中心に計算され尽くし、社会起業に必要な学びが適切に用意されています。そこへの圧倒的信頼が保険となり、享受できる便益に対してパッシブな姿勢をつくっていました。進捗を生むインプットをどこかで待っていたんです。

これだと追いつけても追い越せない。
尊敬も信頼も一度置いて、自分が勝手に決めていた枠を取っ払い、意識的に自分を過信することにしました。

瑞季にはクレバーさが足りない。

急に話が変わるようですが、僕には師匠みたいな経営者の方がいて、1年半ほど前に1ヶ月みっちりインターンとは名ばかりの修行をさせていただきました。そのベンチャーコンサルで商談同席や1分間スピーチ特訓など、ただの大学生には勿体ない弟子入り経験をさせていただきました。

そこで、論理的思考や批判的思考の習慣が生まれて、僕の数少ないコンピテンシーである「思考体力(脳の持久力?)」が武器になったわけですが、修行最後の日にこんなことを言われました。

「瑞季の強みは"口"。現象やその解釈を伝わるところまで記号化(言語化・構造化)できる咀嚼力は、誰にも負けない強みだと自信を持って言える。でもね、事業をつくり起業家として生きるなら、クレバーさが足りない。その吸収できる素直さと合わせて、ずる賢く想定外を想定内にしよう。後になって、そんなんありかよという側になるなよ。」

クレバーさ。
事業化に向けて本格的に動き始めた今、1年半越しにその言葉の意味がやっと理解できました。

ピッチコンテストとその後。

最初は、どうやってやるの?と思っていたモックアップ作成、カスタマージャーニー設計、をとりあえず自分だけで調べてやるという小さなトライです。言葉尻は難しくても、意外となんとか形には持っていけることが分かり、気づいたら枠を押し広げることが楽しくなっていました

クレバーさには言い訳しないマインドの徹底が必要だ、というのが感想です。雨が降っても自分のせい、みたいな感じで。

結果、アイデアピッチコンテストでは最優秀賞をいただくことができ、これまでの過程を評価されたようで素直に嬉しかったです。(同イベントの本ピッチコンテストの方で「既存の仕組みを肯定する装置を作るのはやだよね」と言葉をくださった方が優勝され、最後対面でご挨拶できた時は個人的に胸アツ展開でした…。)

右は「夢中教室WOW!」のじーつーさん。いつもお世話になっています…!

リサーチしまくった3週間も、ずる賢くプランニングした1週間も。
この1ヶ月を通して、振り切れば正解になるし、ここまでやったらダメという限界もないし、進めるところまで進んじゃっていいことを知りました。

と同時に、ここで止まったら前のすぐ満足する自分に元通りです。

翌日から早速、MVPを開発して概念実証フェーズに入ってみようと試みました。MVPとは?から検索し、類似サービスのMVPを勉強して最後公式ラインやGoogle formを組み合わせるまで4日くらいかかりました。(MVPに時間かけすぎ!笑)

「行動力=行動ファースト」は誤解。

ヒアリング、という名のアレルゲン。

そして、合宿後の停滞経験からアレルギー反応を持ってしまい、どこかで避けていたヒアリング。流石にもう逃げられない段階に来ました。前回と違ってプランもターゲットも明確にイメージできていましたが、いざ見つけるとなればなかなか気乗りしません。

重要性は十分に承知しているので、もう、苦手なんだったらお金を投資してでもヒアリングを実践しようと決意。
uniiリサーチを使って5名の方にヒアリングしました(SNSで拡散協力してくださった方有難うございました!個人的にヒアリング協力くださった2名の方にも感謝しかないです)。ヒアリングでは教育現場で働くことに対する本音とその本音を弾き出す本能を洞察しつつ、MVPを実際に利用してもらってHOWの解像度を上げることも意識しました。

これによって、ユーザーの課題解決に最低限必要な制度設計、効果のあるチャネルやプロモーションに対する仮説を検証することができました。

教育現場を知らない僕。

合宿を経て課題に感じたのは「現場も業界も何も経験していない」ことでした。神は細部に宿る。その経験の有無がサービス実装の細部の質に繋がり、つまりは「あなたがやる理由」の有無に繋がると思っていました。

そこで実は、合宿の1週間後にスクールサポーターという大学生が公立小中学校のお手伝いに入れる枠組みで応募し、10月から週2で働いています。

2名の欠員がある小学校で、子どもたちの無垢な衝動に触れつつ、フルタイムで働く正教員・常勤講師の方々の凄さを体感しました。そして、非常勤の支援員や事務スタッフの方々が先生や子どもたちの日頃の精神的な支えになっていることを目の当たりにしました。

教育行政も知らない僕。

その一方、自治体の教員募集等に関わっていくことになる中で、予算請求の流れや行政の組織制度や決裁者などを何も理解していないのは非常にまずいと思いながらプランニングしていました。

実際はそんなことを全く意識せずリサーチばかりしていた頃に、先進的に講師不足対策に取り組む市職員の方の投稿をたまたま発見し、本文を読んで本物だと確信し、話を聞きたいと長文メッセンジャーを送りました。学生とはいえ教員不足問題の理解については行くとこまで行っている自負はあるので、メディアやインターネットで発信されている意見のほとんどが、反対意見の裏付けがなされていなかったり、定義や論点すら曖昧なままの結論づけだったり、という印象だった中でその投稿内容は衝撃でした。

しかし、返ってきた答えはNOでした。
見ず知らずの教員不足解決を吠える大学生なので当たり前でした。それでも負けず(?)、自分がどれだけ本気で調べ解決策を考えているか、やりとりしましたが、叶いませんでした。

切り替えようとしたものの、お相手は講師不足をコンシェルジュ的に解決させてきた方です。多分この方と会えなかったら、解決できるわけがない。なぜかそう感じ、諦められませんでした。
お相手の方の過去の投稿には全て目を通し、ビジョンにも重なりがあること、前回からのプランの進捗内容(ちょうどビジコン前後だったため)を、もう一度長文で送りました。

結果、折れてくださり、実際に対面でお会いすることになりました。阪大合格以来のガッツポーズをした記憶が鮮明に残っています。笑

実際お会いして聞きたいこと聞きまくって、最後にインターンできないかという話になり、もちろん改めて選考はありましたが、最終的に週3で3ヶ月インターンできる枠を作ってくださいました。前例もない市教委の学生長期インターン、手続き等面倒なことしかないのに起案から承認まで本当に、感謝しかないです。

いつのまにか手放していた達成欲。

折り返し目前、インフルエンザ。

中間発表会1週間前、思いもよらないインフルエンザA型。スクールサポーターの宿命とも言えるのでしょうか、ワクチン接種なんて忘れてました。

まる4日寝込みました。完成していない発表資料に焦りを覚えながら、久々に何も作業しない時間、なにより楽しみの喪失感が大きかった。もう過程を楽しめていたことに気づきました。

振り返ると夏合宿以降、寝る時間以外、なんなら睡眠時間も悪夢のようにうなされながら、この問題解決を考えてきました。

ゼロイチ合格前に参加したIVSカンファレンスでは「結果やその達成感をエンジンに動いているとそれに翻弄されるだけだな」と痛感しつつ、「本気で向き合えていると過程が楽しくなる」とはどういうことか想像もできなかったけど、もう今は違うな。限界にさらされながらも挑戦に前向きでいれている今が、勘違いできている自分が、楽しくて楽しくて。

その一方で、自身の学習欲が肥大化していることにも気づきました。
症状が少しでも和らいだら書籍やビジネスメディアを開いてしまう、脳がインプット中毒みたいになっている事実。考えることが呼吸くらい無意識な行為になってることを喜ぶ反面、習慣って怖いなと思いました。

ピンチはクイズ!!

インターン先とは別で、ヒアリング等お世話になっていたとある市教育委員会の課長に改めて時間をいただき、自分が見てきた現実をもとにMVPを伝え、実証実験させていただけないかと提案しました。

課長や係長のご協力で教育長にお話しする機会をいただくことができ、中間発表会の前日に初めて提案アポイントメントがありました。

結果は惜しくもという感じでしたが、自治体営業のヒントになってくる懸念点を丁寧にフィードバックいただきました。

この挫折すらも、僕なんかより凄い方々が忙しい中で僕とその未来のために生み出してくれた機会。そう思うと、是が非でもこの挫折を生かさないと顔が立ちません。

Show Resilience.
ピンチな時ほど冷静に、前向きに脳みそを動かすことを楽しもう。

できることと、やるべきこと。

中間発表会、当日。

インフルの負債があったので、当日朝までコスト構造や需要・供給予測(ほぼフェルミ推定)、市場規模を含め、なんちゃってで自分で計算したものを資料に落とし込みました。実証実験の連携先を示せなかったことは悔しかったですが、あくまで通過点なので気にしすぎず。新幹線で快適に爆睡をかましながら、東京へ向かいました。

安心する顔ぶれの中で発表会が始まりました。
フィードバックでは、事業面も人物面も大きくジャンプアップがあったと皆さんに言っていただき、嬉しかったです。もちろん突くべきとこは真剣に叩いてくださいましたが、起業家として対等に扱ってくださっていること、「ここからが本当に勝負だな」と身が引き締まりました。

もう少しで文明の向こう。

「自分のやりたいことを社会問題で正当化するのをゼロイチは目指さない。ソーシャルビジネスは社会問題を使って好きなビジネスを形にするんじゃなく、インパクトを追求し続ける姿勢の先に生まれるんだ」

最後、田口さんが言葉にされた内容です。

社会問題をテーマに掲げ、当事者の言葉を借りるのなら、自分の好き嫌いで手段を選ぶのは的外れじゃないか。

その社会問題を解決するためなら、積み上げてきた経験も、自信たっぷりのアイデアも、何回だって捨てて前を向く。
その覚悟を、ゼロイチの同志全員が持ってる。

できることは探さない、やるべきことを選択する。
こんなコミュニティは他のどこを探してもないんだろうな。

今の資本主義の世界はまだ続くし、やめるべきとも思わないが、経済性の土俵でいかに社会性を測れるようにするかという試みの方向性も、一歩間違えれば「経済性>社会性」という主従関係から脱出できない構造を生んでいかないか、と日々思っているわけです。

Creative Shared Value.
しっかり利益出せてる社会性だけが評価される世界の先に、利益関係なく社会性がそのまま素直に経済的評価を受ける世界があってほしい。

その想いを胸に、帰路につきました。
そして秋葉原の電気街は、駅までの道のりを最後まで照らしていました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?