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GLOBISの乱読帳2022年5月~ワイン部編~

グロービスの様々な組織から書き手を招き、読んだ本を紹介してもらっているこの企画。先月からは「クラブ/サークル」から書き手を招いています。今回は、グロービス・ワインクラブ(ワイン部)から市川に書籍を紹介してもらいました。

グロービス・ワインクラブ(ワイン部)とは

先日投稿されたダンス部に比べると、ワイン部はまだ出来て日の浅いクラブです。創立は2019年9月と今年で3年目の活動になります。

飲みサー? 敷居が高そう?
どちらも違います。もちろん、ワイン部なのでワインを飲むこともありますが、それは「ワインを通じて、グロービス内の部門や立場を越えた交流を促進する」。そして「ワインを知り、楽しむための、ワイン会や勉強会等の機会を提供する」ためなのです。

クラブのメンバーにはソムリエ同等資格である「ワインエキスパート」を持つ方から、詳しくはないがワインは好き!という方、今まではあまり飲んでいなかったが、これからワインを知りたいという方、お酒はなんでも好きという方まで40名弱が参加しています。

活動としては、ワインエキスパートを持つメンバーを中心としたワインの勉強&試飲会や、農地を取得した社員(!)の畑でワイン用葡萄の植樹、指定の銘柄を各自で買ってオンライン上で感想を語る会などなど……ワインを作る-知る-飲むのすべてにわたる幅広い活動を、これまた幅広い部門・幅広い年代のメンバーで、まじめに明るく楽しく取り組んでいます。

今月の本『傷を愛せるか』

(著:宮地 尚子 出版社 ‏ : ‎ 大月書店)

皆さんはワインが、好きですか?どんなときにワインを飲みますか?

嬉しいときにはシュワシュワ弾ける気持ちを表すようなスパークリングを。楽しいときにはフレッシュな香りの白ワインを。寂しいときには、渋みと優しさのある赤ワインを、私は飲みたくなります。

自分の気持ちに沿うような味わいを求めて、ソムリエに「今日はこんな感じの味のワインが飲みたくて…」と伝える。あるいは冷蔵庫の中から、一番「分かって」くれそうなワインを探す。その時に私が求めているのは、ワインそのものではなく「共感」なのかもしれないなと思います。

ワインは不思議な飲み物で、同じ葡萄を同じ製法で作っているのに、様々な理由で雰囲気が変わります。今回紹介する本書『傷を愛せるか』も、一人の精神科医によるエッセイ集ですが、エッセイごとの味わいがあり、度々読み返しては、毎度異なるエッセイが心に響きます。
それは少し、ワインを探すときの「共感」を求める仕草に似ているかもしれません。

普段は論文に向き合う著者が、風景から、旅先から、時には学会のシンポジウムから拾い上げた日常を紡ぐ文章は、優しく軽快で、ときに切ないものです。上記の「共感」に関連して、本書の中で「エンパワメント」について語られるエッセイについてここでは取り上げたいと思います。

私は、エンパワメントとは自身が対象者に力を与えることだと思っていました。しかしそうではなく、対象者が本来持っている力を思い出し、呼び起こし、発揮することがエンパワメントであり、外力を与えることではないそうです。

ただしそこで重要になるのが、自分の幸せを祈ってくれる誰かがいることだと著者は言います。

忘れていた力を思い出し、自分をもう一度信じてみるためには、周囲の人びととのつながりが欠かせない。

傷を愛せるか』宮地 尚子 P.45

きっとできるよ。大丈夫。
誰かのそんな言葉がいつだって背中を押してくれることを思い出して……あるいは、逆に誰かを支えなければと肩に力が入っていた自分自身も、楽になれる気がします。

精神科医として数多の人間の傷に向き合い続けた著者のまなざしを感じながら、本書を読んでみるのはいかがでしょうか。

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いかがでしたか?皆さんも読書を楽しんで下さい。
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