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夢の落としどころ

アマゾンプライムでなんかいい映画ないかなあと探していたところ、白黒映画が目に付いた。珍しいなあと思ってみてみると、スマホがわんさか出てくる。あれ、どうやら現代が舞台らしい。モノトーンの世界に出てくるスマホはどうも新鮮である。

フランシス ハ という映画。ニューヨークに住む、プロのダンサーになるのを夢見ている27歳独身アラサー女子の、なんだかすべてがうまくいかなる時期を描いている。仕事もお金も住む場所も友情も恋も。

なのに全然暗くなくて、というかむしろコメディですらある、5月の風がさっと通り過ぎていくような疾走感あふれる映画だ。

結論から言うと、彼女は彼女のダンサーになるという夢を諦める。それは一見とてもネガティブなことのように聞こえるけれど、この映画ではそれを感じさせない。

まあ、ラストにとんとんうまく行きすぎでしょ、というのもあるけれど、それでも彼女が夢を諦めたのは事実だ。でもどちらかというと、この映画は「夢を諦める」ことを描いたというよりは、「夢の落としどころ」を見つける、つくるというところに焦点が当たってる気がする。

私は今26なので、つい主人公に共感して見てしまった。20代も後半に突入し、30という数字が頭の片隅に現れ始めるころ。自分はいろいろできるのでは、可能性があるのでは、という風船のように膨らんだ、それでいてもろい期待は、一年一年と空気が抜けてしぼんでいく。

少なくとも私は、仕事を始めて二年経ち、そんな風船のようであることは否めない。

この映画の主人公のように、確固とした夢があるわけではないけれど、とはいえそういう漠然としたキラキラした何か、で膨らんだ風船があることは事実で。

そういう夢、みたいなキラキラしたものを叶えた人の話や諦めるなという話は溢れているけれど、一方でフランシス ハのフランシスのように、落としどころを見つけることの大切さみたいなのって、意外に語られてない気がする。大部分の人はこっちのはずなのに。

夢を諦めてそこで人生終わり、とならないのが私たちである。むしろ諦めてからの方が人生は長い。

とはいえ、夢を「叶える、「諦める」の二軸で語るのってすごく暴論なのでは、と思ったのだ。

夢を諦めるんじゃなくて、ちょっと夢の方向を変えてみる。夢の周辺で食べていく。うまくいかなかったからって完全に別のことに切り替えるんじゃなくて、やり方とか夢に取り組む場所を変えてみる。

「叶える」と「諦める」のあいだには、実は無限のグレーの空間が広がっていて。夢を夢見ることも、夢を叶えることももちろん素晴らしいことだけれど、それだけがすべてじゃないし、夢を諦めたり、「叶える」と「諦める」のあいだの「落としどころ」を見つけることも、それはそれで肯定されるべきことだし、ひとつの大切な選択なんだと思う。

こうして、映画を観終わってぼんやり考えてたことを、文字にしてみると、また違った目でもう一度映画を観れる気がする。

プライム登録してる人、ぜひ見てみてください。

それでは、また。



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