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考えるな、手を動かせ。

2本目の親知らずを抜いた。キイイインという容赦ない高音とともに歯が削られていく焦げ臭いにおいがする。何度も顔、というか頭蓋骨を押されてやっと取れる。頭と顔の骨をありありと感じたのは初めてのことだった。

鎮痛剤をいくら飲んでもじくじくと痛む。顔はむくれ、動かすと痛いのでなるべく食べないししゃべらない。生理前なのも合間ってやる気は低迷するばかりである。こういうときは「考えるな、手を動かせ」とひたすら自分にぶつぶつぶつぶつ陰気に唱えて掃除をし料理をし仕事をする。そうするうちにやっと少し気分が乗ってくる。考えていてはいつまでもやる気なんてものは出てこない。わかってはいるんだけれど手をつけるまでが一番エネルギーがいる。エアコンも車のエンジンも同じである。

自分の身体の一部が切り取られたのだからそりゃ痛むわさと家族に慰めてもらう。本とかスマホをいじっていると気が滅入るし痛みに集中してしまい余計痛むのでひたすら“アウトプット”に集中する。取り込んでベッドの上に放りっぱなしだった洗濯物をたたんでしまう。脱ぎっぱなしの靴を揃える。歯を磨いて消毒薬でうがいをする。名刺入れの中身を入れ替える。テーブルの上をふいて水をリフィルする。

考えるな、手を動かせ。

それでは、また。


*追伸:今日の歌ふたつ。

守れない約束ばかり繰り返し レモネードの瓶空けては捨てる

ラムネだま やっと取れたと微笑まれ センチメンタルジャーニーはじまる


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