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【第166回】能登地震での津波避難の事例(珠洲市三崎町寺家下出地区)


質問 能登地震での津波避難の事例を教えてください。

概要

 ①大きな被害を受けた珠洲市三崎町寺家下出地区
 ②避難訓練がいきて早期避難により地区全員の命が助かった
 ③避難訓練でタイムを計測

解説

①大きな被害を受けた珠洲市三崎町寺家下出地区

 能登半島の先端部に位置している石川県珠洲市三崎町寺家下出地区は、約40世帯約90人が暮らす三崎町北部の海沿いの地区である。
 この下出地区は、2024年1月1日の能登地震及びその後の津波で大きな被害を受けました。
 堤防を越える大きな津波が、地震から25分ほどで襲来し、多数の住宅が倒壊しました。

②避難訓練がいきて早期避難により地区全員の命が助かった

 しかし、高齢者の多い住民たちは、荷物を持つことなく、隣近所が声をかけあって、整備していた避難路を利用して、早期に避難をしました。
 体の不自由な方は、元気な人が背負う等互いに助け合い、住民全員が、避難路である坂道を登って、高台の集会所に避難し、全員の命が助かりました。
 この下出地区では、防災士や地区の役員等の協力によって、自主防災組織が設立され、避難計画等が準備されていました。そして、2011年の東日本大震災の災害教訓を受けて、10年以上毎年1~2回、地震や津波を想定した避難訓練を継続していました。
 有識者からも住民からも、その避難訓練の成果が発揮されたと言われています。

③避難訓練でタイムを計測

 下出地区の避難訓練では、毎回、班ごとに避難時間を計測しており、最短ルートでの避難を研究していました。また、日頃から発災時は集会所に集まることを徹底していました。
 そのため、住民たちは迅速な避難に慣れており、今回の地震でも、自然と避難先に集まりました。
 また、下出地区の住民同士の人間関係が良好で、普段から避難先である集会所でカラオケ大会を開いたりして、避難先に行く習慣があったことも、早期避難の成功に影響しました。
 なお、参考文献にあげた毎日新聞の記事には、矢守克也地区防災計画学会会長(京都大学教授)の本事例に関するコメントが掲載されています。

参考文献
・『時事通信』2024年1月16日「全員無事「奇跡じゃなく訓練」―津波襲来の高齢地区・珠洲市」.
・『毎日新聞』2024年2月11日「石川・珠洲のある集落、津波の死者はゼロ 住民の命救った合言葉」.

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