見出し画像

レインボーカラー🏳️‍🌈の国籍

起き抜けの目に、このツイートが刺さり込んだ。

悲しい。辛いけれど現実だった。水原希子さんはまだこんなことを言われてるのか。
このツイートのリプ欄には国籍とアイデンティティに関する辛辣な言葉がずらっと並んでいた。
日本に育ったからって関係ないと、パスポートに記載されている国籍だけで全てを判断するような言葉が多かった。

彼女の詳しい生い立ちや事情はわからない。けれど、29年間命を育んだ土地の名前を使い活動していることには、何かの意味があるはずだと思う。そんなに長く過ごした土地の風土や文化はもう脳に染み付いているだろうし、思い入れとかそんな単純じゃなく、その名前を使い続けることにはどんな思いがあるのか。辛辣な言葉を投げた人たちにはそこに想いを馳せてもらいたいものだが、1人1人を諭すのは到底無理だ。

だからここに私の思いを散文にしてそっと置いておきたいと思う。

私は思う。国籍はLGBTQと似ている。レインボーカラーの旗のようにいくつも混ざり合う人もいるんだ。きっと、本国籍の他に心の国籍がある人もいるんだよ。


***

私自身、人生の4分の1以上を中国で過ごしている。水原さんよりは全然短いけれど、中国での生活に入りすぎて、助詞がめちゃくちゃになるぐらいには日本語を忘れたことがある。いま私が書く日本語も話す日本語も、もう一度勉強し直した日本語だ。今でも頭の中では中国語で思考することがある。それぐらい必死に生きた中国という土地のことは、私の中の一部になっていることは間違いない。

言語だけではない。中国での生活はアイデンティティの形成や考え方にも大きな影響があった。

渡中した初めの頃、「私は日本人だっ!」と強く強く実感した。

挨拶の仕方、街中の匂い、食事の香辛料、世間話から、生活の一般常識まで、全てに違和感(いわゆるカルチャーショック)を受けていた私は、その違和感で強く強く自分の日本人の部分を意識したのである。簡単に言うと、幼かったのもあって中国の色々なことが許せなかった。単純に様々なことが雑なことも、衛生的に汚い部分も、店員に邪険に扱われることも、いつも日本と比べて許せないでいた。

でも、現地の人と言葉が通じた日や、たくさんの日中ハーフ・その他ハーフの子に出会った日があった。いろんな事情で他国から中国に来た人たちとたくさん話をした日があった。それらの日々を過ごしていくうちに、中国のあらゆる部分を許せなかった気持ちは薄れ、逆に心に感じて染みてくるものがあった。

どんなに生まれた土地が離れていても通じ合い、共通する思いがたくさんあるのだということ。日本語で思考する回路では見つけられない答えも中国語で思考し、たくさんの友人に相談し見つかることもあること。食べられなかった香辛料をいつしか欲するようになること。水の匂いが気にならなくなること。日本に一時帰国したあと、また中国に戻ると「帰ってきたなぁー」と感じるようになること。

あの時からきっと、私の【心の国籍】には中国が追加されたのだと思う。

私はハーフでもないし、書面上の国籍やもちろん心でも母国は日本だけだ。それは一生変わらない。でも心の国籍には、中国で過ごした日々が透明に、はっきりと滲んでいる。
ふるさとを歌って浮かぶのは、日本と中国の街並み両方だろう。

日本に帰って何年経っても色褪せない。あの時のことがあったから私は生きている。

他国での生活をしたことがある人に出会う機会も多く、海外生活の話を聞くと、良いエピソードも悪いエピソードもみんな目の光を変えて話す。そんな時にも一人一人の心の背景にその国が見えるなと思う。

グローバルに人が動き、世界中の人と出会い結婚できるようになり、水原希子さんのようにたくさんの血が混ざり合って生まれてくる人はどんどん増えている。そんな人が友達に居ると考えて欲しい。その人が、たとえ見た目が違っても、パスポート上は違っても、あらゆることが日本の人と違っても、日本に長く住み、もう私は心が日本人なんだというアイデンティティを持っていたら「そうだね」と同意したくならないだろうか。

LGBTQのことが取り上げられ、体と心の性が違うこともあると多くの人が認める世の中になった。そういうのと近しいものがあるのではないだろうか。見た目や本国籍と、心の国籍が違ってもいいのではないか。

書面や制度的には他の国の国籍でも、心の国籍はどこのものだっていい。いくつあってもいい。どこかの国に生活し、そこが自分の一部だと思えばもうそこはふるさとの一つだと思うのだ。それがひとつでも、ふたつでも、たくさんあってもきっと、レインボーカラーできれいだよ。




いつもありがとうございます。 頂いたサポートは、半分は新たなインプットに、半分は本当に素晴らしいNOTEを書くクリエイターさんへのサポートという形で循環させて頂いています。