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月が愛を知っている

月が綺麗に見える夜が、人生には何度となくありますよね。

そんな夜だけ、私は今見上げているものが空なのか何なのかわからなくなるのです。

まんまると大きな月が浮かぶ夜空はいくつもの色が透けていて

まるで海のようだし、果てしない闇にも見えるし、どこか別の世界に繋がっているようで、少し紫で、不思議な色。

本当はこんなに丸くはっきりと見ている月が、普段は満ち欠けのように見えるなんて。月に数日しか、その全てが見えないなんて。

美しすぎるものは恐ろしいから、宇宙が隠してしまったのでしょうか。

夏目漱石が、「I LOVE YOU」を「月が綺麗ですね」と訳したという逸話はあまりにも有名です。あれは嘘だったという説もありますが、今となっては嘘だったかどうかなんてどうでもいい。嘘でもこんなに美しい逸話が出てきた日本語の素晴らしさを思わずにはいられません。

月の満ち欠けのように、押したり引いたり、
でも、見えてないだけで本当はいつでも愛はそこにあって、まんまるで。
だから人は愛を月に重ねるのでしょうか。

その話を思い出すたび、私はとある中国語の歌を思い出します。

女の人から、想い人へ。彼女の心を何度も確かめてくる彼を優しくなだめる歌で、優しさと愛の美しさを教えてくれる歌です。

你 问 我 爱 你 有 多 深 (貴方への愛がどれほど深いものなのか)
我 爱 你 有 几 分 (その愛がどれくらいあるのかと あなたは聞くけれど)
我 的 情 也 真 (私の気持ちは本当で)
我 的 爱 也 真 (私の愛も真実なの)
月 亮 代 表 我 的 心 (それは月が教えてくれるわ)

【月亮代表我的心】という題名の歌で、これも月に愛を重ねた歌。言語を超えて、同じものに愛を重ねるのは、不思議ですね。

この歌では決して直接【愛してる】を言いませんが、歌詞と曲調を合わせ、こんなに温かく柔らかい、包むような愛を歌う歌を私は他に知りません。

この曲の題名である【月亮代表我的心】をどう訳すかということを、

翻訳者の端くれとしてずっと考えています。

あまりにも美しく、優しい歌で、尊い月夜の歌ですので、どうしても訳だけでもこの歌詞の美しさが伝わるように訳せるようになりたいのです。

直訳すると「月亮(月が)代表(代弁している)我的心(私の心)」ですので「月が私の心を代弁しています」となるのですが、

それではこの歌の美しさを表すには程遠いのです。

月が教えてくれます。
月が私の心を分かっています。
月が分かってくれています。
私の気持ちは月が知っています。
それは月が知っているわ。

今までたくさんの訳を考えました。答えはまだ出ていません。

今の段階では「何度も愛を確かめてくる彼を優しくなだめるように、でも直接には伝えないでこの世で最も美しいものの一つである月に重ねて、その愛の大きさと美しさをも一緒に教えようとしている」歌だと私自身解釈していますので、

「それは月が教えてくれます」

という訳にしています。

でも、まだまだこの訳を探す旅は続いています。

もうすぐ中秋の名月。

今年出会う月を見上げながら、また考えを巡らそうと思います。

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