透明な紳士と、透明になりたかった私
第一話 ゴスロリと廃墟
たぶんこれは、はじめて買ったゴシックロリィタ。お母さんがくれた五万円を握りしめてブティックに行って、前から目をつけていた新作のマネキン――の隣にセールで雑に並べられてたハンガーラックから一着取り出して、「これください」と勇気を振り絞った。
高校生の分際で、一着三万円もするお洋服を買ってしまった。お店で袖を通して、そのまま着て帰った。すでに八千円の厚底靴と黒いチュールレースのヘッドドレスをつけていた。全身フル装備になったあの瞬間の開放感とほんの少