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平隊士の日々 元治元年水無月六

元治元年水無月六

目が覚め、井上組長を探しに稽古場に行くがいない。
あちらこちらを探していたら、
門の前で、周囲をうかがっている山野に気が付き声を掛ける。
昨日捕まえた、炭薪問屋の主人を浪士たちが、
奪い返しに来るかもしれないので、
山南総長に、「寝ずの番をしろ。」と言われ、
見張っているとのこと。
厠に行きたいので変わってくれと言われ、
代わりに門の前で、周囲をうかがう。
山南総長が来て、
「山野はどうした?」と聞かれ、
「厠に行っています。」と答える。
「そうか、もう、大丈夫らしいから、飯の準備をしてくれ。」と言われ、
山南総長が、門の前に立っているのを見て、賄の手伝いに行く。

朝食の準備が出来た頃、
大八車と土方副長が戻ってきた。
奥沢栄助伍長が斬られ死亡したので、
「葬儀の準備をするように、俺はまだ用があるので、池田屋へ戻る。」
と言われた。
驚いたが、前川邸に行き、葬儀のお願いをして、
僕と山野と柳田と緒方で遺体を部屋に運ぶ。
肩から胸まで斬られ、片腕が取れそうになっている。
激しい戦いがあったようだ。
弔いの準備をしている内に、何人かの隊士と大八車が戻ってきた。
新田革左衛門は左肩にさらしを巻かれ、
副長助勤の安藤早太郎は、頭と足にさらしを巻かれ、戻ってきた。
南部先生のところで、手当をされたのだろう。

戻ってきた隊士の中に、竹内伍長が居たので、声を掛ける。
「昨日の朝、監察方より、四条から河原町通りに入った路地にある、
炭薪問屋の桝屋に浪士の出入りがあるので捕縛に向かったところ、
沢山の槍などを発見し、主人を捕縛して、尋問したら、
うわさの通り、京都に火をつけ、
御所に押し入る計画があることが確実になったので、
近藤局長が、松平さまに御伺いに上がり、動乱の鎮圧のために、
守護職さまも、動くと言うことになり、
近藤局長が戻った夕七つ頃から、動ける隊士を集め、
近藤局長の組、土方副長の組、井上組長の組、山南総長の組に分け、
近藤局長は、東巡察範囲、土方組長は西巡察範囲、
井上組長は南巡察範囲を捜索し、
浪士が枡屋の主人を奪還しに来るかもしれないので、
山南総長は屯所の守護をすることになり、
夕食を取り、いつも通り、巡察に出た。
井上組長といつもより念入りに、
旅籠や問屋などを重点的に巡察していると、
番方から、河原町三条通りにある旅籠で、
新選組が斬り合いをしているとのことで、走って向かった。」
と言う話を聞いてい居たら、
山南総長が、まだ怪我人がいるかもしれないので、
湯を沸かすのと、さらしなどを買いに行ってほしいとのことで、
竹内伍長が買い物に行き、僕らで湯を沸かす。

皆がなかなか戻ってこないので、
朝食のおかずをかたずけ、昼食の準備をする。

昼四つ過ぎ、ぞろぞろと、皆が戻ってきた。
大八車に、浪士の遺体が五名、捕縛した浪士等が十二名、
皆、どこかに傷を負っている。
山南総長が入り口で、隊士に声を掛けて、
手傷のある者に湯で洗うように、指示している。
その後を追いかけるように、たくさんの町人が屯所を覗き込み、
「うちのとーちゃんを返してくれ。」と声を掛けられる。
「土方副長に聞いてくるから。」と言い、待つように言う。

昼食を用意してあることを土方副長に伝えに大広間に行くと、
土方副長が、近藤局長に、
「松平さまに報告と浪士たちの処断について聞いてほしい。」と言い
近藤局長は、飯をほおばりながら、着替えに行った。
傷のない隊士には、食事が出来ていることを山南総長が伝えると、
腹が減っているのだろう、皆、広間で三々五々、食事を始める。

土方副長より、
「組長たちにも怪我人が多いので、各部屋に食事を運ぶように、
俺と山南さんはこれから浪士たちの尋問をするから、
中庭にいる。」と言われ、
組長の部屋に、昼食を持っていく。
藤堂組長は額を斬られ、さらしを巻かれ、横になっている。
永倉組長は指を切られているようで、飯が食えないとぼやいている。
沖田組長も、武田組長も、小さな傷がたくさんあるようで、
あちらこちらにさらしが巻いてある。

中庭に食事の膳を持っていくと、
土方副長と山南総長が、浪士たちの取り調べをしている。
枡屋の主人に浪士の顔を見せ、
名前と藩を確認し、監察方と何か記録している。
山南総長が、おかずはいらないから、握り飯にしてくれと言うので、
お膳をかたずけ、握り飯を作り持っていく。
捕縛した浪士の中に、町人が何人か混ざっているようで、
門のところに訴えに来ていることを土方副長に連絡したら、
尋問して、問題が無ければ返すから、待っていろと伝えるように言われ、
門の方に行き、伝える。

バタバタ色んなことをしていると、
夕七つ頃、近藤局長が戻ってきた。
浪士たちの遺体を、会津藩と町方に渡し、
浪士たちの一部、たぶん町人を解放し、
浪士たちを、蔵に閉じ込め、中庭が空くと、
土方副長から、動けない隊士以外は中庭に集まるように話があった。
近藤局長が
「諸君らの働きにより、
不逞浪士の動乱を事前に防ぐことが出来、たいへん、誇りに思う。
これからも、隊務に忠実に、励んでほしい。
松平様より、報奨金も出ると伺った。
休める者は休んで、体を治してほしい、以上。」
土方副長
「まだ、浪士たちの襲撃があるやもしれないので、
四人一組で、屯所周りの警備をする。」
山南総長が、今から、尾関、柳田、山野と屯所周りの警備をするので、
夕食後は、監察方の山崎と緒方、松崎、森で警備をしてくれと言われた。
それまで、前川邸の人と一緒に夕食の準備の手伝いをする。

夕食、握り飯と、ご飯と漬物、梅干し。

夕食後、屯所の見回りをして、真夜中くらいに寝る。

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