吃音と向き合うための本&資料紹介と私
どうも~千夏です。今回は年末に書きそびれた吃音関連の本紹介をします。最近吃音関連でコメントをくださる方もいるので最後に私のことも載せています。
☆小説
・きよしこ/重松清
有名な重松さんの長編小説。(独立した短編として読むことも可能。)
症状→連発、回避、言い換え、難発
吃音による苦しみを特に乗り越えるわけでもなく淡々と書かれる感じが好き。
矯正教室の描写は時代を感じます。
・青い鳥/重松清
こちらも重松清さんの小説。きよしこと違うのは吃音を持っているのが先生であるという点です。
映画もありますが、だいぶあちらは怖いです…。こんなに宮内先生っておしゃべりだったっけ…という感じで少し小説とは異なる印象を受けました。
症状→連発、随伴運動?
回避は特にしてません。
・しゃべれどもしゃべれども/佐藤多佳子
話し下手な男女が落語を通して話すことと向き合っていく物語。主人公は短気な噺家。
吃音を持つ青年が登場。
普段は雑談ができる、とのことで私とそっくりな人物でした。
吃音があることと話し下手であることは異なるけれど、吃音がなくても話し下手な人はたくさんいるよなということに気付きました。
・スイーツレシピで謎解きを/友井羊
スイーツレシピ×謎解き×吃音の"人が死なない系"(日常)ミステリー。
吃音を持つ少女の内面が一人称の文で描かれるので吃音を持つ人の心について知れます。吃音を持たない人がどんな勘違いをするのかも知ることができるのがこの小説の特徴かも。
すごく詳しく書かれているのに参考文献がないのが残念。
症状→回避、言い換え、連発、難発(伸発については描写はありませんが説明はあります。)
・円卓/西加奈子
好奇心旺盛な少女が世界を知っていく物語。
吃音を持つ幼なじみが登場。
悲観的でも楽観的でもなく「個性」よりは不便な「特徴」として捉えられているところが素敵だと思いました。
症状→連発。回避はなし。
☆児童書、絵本
・ぼくは川のように話す/ジョーダン・スコット
吃音を持つ少年の言葉の捉え方が描かれた1冊。
私はあまり小学生時代吃音を嫌だと思っていなかったし、割と比喩を使って表すことも多かったので特に発見はありませんでした。そうではない方も多いと思うので、向き合ってこなかったけど向き合いたいひとには良いかもしれません。
症状→連発
・僕は上手に話せない/椎野直弥
吃音が理由で新しいことに踏み出せない中学生が放送部の活動を通じて吃音を開放していく物語。
僕は川のように話すと同様特に私には響かなかったのですが、「カミングアウト」をこれから新たにしていく人にとっては参考になるかもしれません。
症状→連発、言い換え、回避。
☆ルポルタージュ、ノンフィクション
・きみの体は何者か/伊藤亜紗
どうやって対処していくか、乗り越えていくか、付き合っていくかとは少し異なる角度で書かれた1冊。
吃音に限らず、自分の身体が嫌いだったり、不満や不安があったりする人には読んでほしい本です。
症状→連発と言い換えが中心。
本が苦手な人でも比較的読みやすいのでおすすめです。
・吃音を生きる/キャサリン・ブレストン
吃音を持っている女性の体験記。
小説のようにさらさら読めます。
おすすめ本の記載があるので読了後吃音についてさらに知りたい人はそのおすすめに従って読んでいくと良いと思います。
症状→連発、言い換え、回避。
・吃音:伝えられないもどかしさ/近藤雄生
吃音を持つ人の体験記。この本だけ読むとものすごく苦しんでいる人という印象になりやすいので他の本も読んでほしいなと思います。文庫が廃刊?になってしまったそうです😖
気になる人は今すぐ読んでほしい🥺(回し者ではありません…)
・わたしの身体はままならない:〈障害者のリアルに迫るゼミ〉特別講義 /伊藤亜紗ほか
吃音がある人を含めたさまざまな方の体験記や考察。
この本を読むと吃音が他の人との違う「仮面」のひとつでしかないことに気付かされる。
☆映画、ドラマ
・志乃ちゃんは自分の名前が言えない
原作もあるけれど映画のほうが好き。
志乃ちゃんが音楽を通じて、友だちと出会い、吃音と向き合っていく物語。
症状→難発、言い換え。回避はあったか分かりにくい…。
・ひとよ
吃音メインのお話ではないのですが、個人的には一番吃音の描写が分かりやすい映画だと思いました。単に吃音があるだけではなく、二次的に心を閉ざして伝えることが極端に下手になってしまった、という背景として使われています。
暴力的なシーンが多いのと吃音がリアルすぎるので、影響を受けやすい人は視聴を控えてください。
症状→連発、伸発、難発、随伴症状、言い換え。かなり波がある。
・ラヴソング
有名な2016年の月9ドラマ。自分の苦悩とこの主人公ヒロイン・さくらの苦悩を一緒くたにされてしまった苦い経験があります😅
音楽を通して成長していくという物語はありきたりな感じもしますが、「なぜ言葉がつっかえると心を閉ざしてしまうのか」ということが分かるドラマだと思います。私もこのドラマを見るまでは表面的にしか捉えたことがありませんでした。
よく吃音のドラマがあると、症状がいかにリアルかにこだわる方がいますが、私はそこよりも心情描写がリアルに描かれていることのほうが重要だと思います。
救急車が呼べない、電話ができないなどのできないことを中心に描きすぎている印象がありました。
2016年は吃音を含めた障害者差別解消法が施行された年なのでやることに意味はあったと思います。
ですができないことが描かれすぎているため、できないことが多い人と思われてしまう一面があります。
そこには留意して視聴する必要があります。
症状→回避、連発、難発、随伴症状、言い換え。(物語序盤は回避が強め)
☆吃音以外のことが書かれているが役に立った本
・顔ニモマケズ/水野敬也
就活をする上で吃音をどう伝えるかを考える時に役立ちました。
・正欲/朝井リョウ
「多様性の落とし穴」がテーマの本だと思います。ヒロイン・夏月の描写が心理的な二次障害が強かった頃自分と似ていると感じました。自分がどれだけ辛いかに執着しすぎて他の人の苦しみを無意識のうちに否定していってしまう過程が自分とよく似ていてるのですが、私は徐々に視野が狭くなっていた自分を解放していくことができたと感じています。
(五月追記)
・青に、ふれる
見た目問題を持つ少女と相貌失認を持つ先生の恋愛漫画。
受容の様子は吃音と共通するものがあるかも。
・私の場合
吃音の症状→連発、伸発、難発、随伴症状。言い換えや回避は少なめ。
吃音の症状をいじめられた経験はありますが、声や存在、顔など他の要素含め貶められたので特に吃音自体を受け入れられなくなることはありませんでした。人見知りでないことや他人への好奇心が相まって団体の交流会の参加や団体等のリーダー等も時々やっています。
中高時代は朝礼時の放送や文化祭の受付、ミュージカル、奉仕活動、弁論大会、演説、スクールツアーの案内係等をしていました。これらができたのは親や先生が吃音にとらわれずに私と向き合ってくれたからできた経験です。(吃音があることが嫌だからこそあえてこういう経験を積むという人もいますが、私の場合は単に面白そうだからやってみただけです。)
雑談に支障はほぼありません。(他の話より流暢な分逆に話しすぎてしまって困ることはあります。)ただし、顔をからかわれた時に随伴症状の醜さに気づいてしまったため、マスクを外すして話すことが苦手です。仲の良い友達の前でも食事の際に外すのが少し怖くていつも不安になります。
吃音だと知った時、周りの大人から丁寧に説明を受けたこともあり、割と隠すことなく過ごしています。自分の名前がなかなか言えないため、電話は少し苦手ですが、工夫を使えばそれなりに話せるのでなんとかなっています。
大学入学後からは吃音を知らない相手に後ろ指をさされることもあり、塞ぎ込んだり、人と接することを強く避けた時期もありました。そんな時期に出会ったのが上記の作品です。
☆最後に
作品や資料は新たな気付きを与えてくれます。単に吃音を知るためだけではなく新たな考えに出会うために読んでみるのはいかがでしょうか。
また、作品は吃音の知識が得られるだけではなく、同時にステレオタイプ(偏見)を生み出してしまう危険性も孕んでいます。
本や映画も良いですが、それだけですべてを知っているとは思わずに向き合い続けていくことが必要です。
私には吃音がありますが「内気でうつむいていて常に黙っている。」というステレオタイプとは大きく異なります。
作品に出てくる誰かや私を当事者の代表とせず、知るきっかけやとっかかりとして知ってほしいです。