見出し画像

もし時間を戻せたら 後編

中編はこちら↓

その後もデートを沢山したが、何となく相手からの好意がこれまでとは変わってきてる感じがした。

なんというか、あまり女として見られていないような感じ。
自分磨きに力を入れ、前よりマシになっているはずなのに
あまりIくんには刺さってないようだった。


そんな中の9月。
浴衣を着てお祭りデートに行くことに。

これは流石にカップルすぎやしないか。
お祭りに行きたいと言ったのもわたしで、浴衣を着たいと言ったのもわたしで、実際着たのもわたしだけだったけど。

そんなわたしはこの日、ついにIくんに想いを伝えようとしていた。

出会って一年ちょっと、
デートするようになって半年ちょっと。
無事ダイエットに成功し、周りにも可愛くなったと言われ、やっと決心が着いた。
けれど直接言う勇気はなかったので、手紙を書いて持っていった。

わたしの浴衣姿を見たIくんは、「おお〜」と良い反応をしてくれた。
お祭りの屋台をぐるぐるして、一緒に熱々の唐揚げを食べた。
その後は、バイト先近くのカラオケに。
知り合いにバレたらどう思われるんだろうとお互いヒヤヒヤしながら向かってた。

そして3時間ほど歌った後、帰ろうかと
私たちお馴染みの京王線のホームへ。
お別れの時間が近づいていた。

正直、手紙を渡すかギリギリまで迷っていた。
浴衣デートは特別なものだと思っていたけど、
一日一緒にいてあまり手応えを感じなかったのだ。
好きな気持ちに変わりは無いものの、相手がどう思ってるのか読めなかった。

ホームに降りると、Iくんの乗る電車は既に来ていた。
「これ乗っちゃいますわ。じゃあ」
とあっさりと乗車するIくん。

迷ったが、このまま恋人未満の関係を続けるのもつらい。
わたしも咄嗟に乗り込んだ。
そしてラブレターを渡し、すぐに降りてバイバイした。
何が起きたのかと、終始きょとんとしていたIくんの顔が忘れられない。

その日の夜
「手紙読みました。返事はまた後でもいいですか」
とのLINEが。

私は待った。
試験の合否発表を待ってるような感覚だった。
その期間バイトのシフトも何回か被って、結構気まずかった。


そして4-5日が経ったある夜。
Iくんにしては長文のLINEがきていた。

そこには、

・これまで誰かに好かれたことがなかったので嬉しい
・俺も前は好意があったと思う
でもバレンタイン前に会った時に他に好きな人がいる感じだったので、俺じゃないんだなと思ってしまった
・今、他に気になる人がいる
・凜さんと一緒にいるのは楽しいので、わがままだけどこれからも友達として仲良くしてほしい

との内容が。

お風呂上がりにそれを見たわたしは、
洗濯機にもたれかかって泣いた。
主に後悔の涙だった。

やはり、あの「バレンタインの毒味!」発言が良くなかったのだ。
照れ隠しとはいえ、なんであんなことを言ってしまったのだろうか。
その後訂正もしないで。

もし時間を戻せるのなら、
バレンタインデートの時に戻ってちゃんと「好き」と伝えたい。
毒味と言ってしまった後でも良い、その後に
「嘘です、あなたが本命です。ずっと好きだったんです。」と伝えたい。

それはもう叶わないけれど。


結局わたしはその後、就活を口実にバイトを辞めた。
もう友達ではいられない、このまま顔を合わせていたら好きなまま吹っ切れないと思った。
相手には他に気になる人がいるとのことだし、可能性のない片思いはしたくなかった。

かつては大事なコミュニケーションツールだったインスタもLINEも、相手のアカウントは消した。

会う手段を片っ端から潰したことで、
今となっては未練はもう全く無いし、思い出すこともほぼ無い。

でもたまに、チラッと頭の中に現れる。

きっとこれからも、チラッと出てくるんだろうな。
大学時代の青春を捧げた、忘れられない人です。
というか多分忘れたくなくて、noteに書いてる。

もう連絡は取れないけれど、
どこかで元気にしててくれたら嬉しい。
あのひょうひょうとした感じで。

おわり

この記事が参加している募集

眠れない夜に

忘れられない恋物語

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?