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女と女の約束50 街中でスキンダイビイング

石川角白
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 若い頃、一緒に飲んだ知り合いが酔ってフラフラと店先から大通りにさまよい出た。そいつを車道から引き戻そうと踏み込んで共に撥(は)ねられた。私は左脚を引っかけられて風車のように回転して3メートル飛んで鋪道に落ちた。知り合いはさらに10メートル飛ばされて即死していた。爾来(じらい)、30年、重い荷物は持てないし湿度が高くなると膝(ひざ)が疼(うず)く。膝(ひざ)の痛み具合で天気が崩(くず)れるのを予知できるのはありがたいが、うっかり下半身を冷房に晒(さら)すと翌朝は神経痛のように膝(ひざ)が痛む。
 今夜にもその膝(ひざ)頭(がしら)が疼(うず)くのを承知で私はクーラーを強めた。
 この不快指数なら車を降りて一分も歩けば額(ひたい)や首筋に汗が滲(にじ)む。
 浮き出た汗の粒は万有引力(ばんゆういんりょく)で互いに引きあい、ジリジリと皮膚(ひふ)を伝わりながら成長して大粒(おおつぶ)の玉となり最後は自らの重みに堪(た)えきれず皮膚(ひふ)と肌着との僅(わず)かな隙間(すきま)を滑(すべ)り落ちていく。
 かくして街(まち)行く人のシャツは背中一面に貼(は)り付き、そこの濡れた生地を通して黒や黄色やピンクの皮膚(ひふ)の色が浮かび上がる――まさに国際通りだ。
 夏場、この国際通りを徒歩(とほ)で抜ける必要がある場合、私はプールの底を歩いているような気分になる。
 どうして本土人は珊瑚礁(さんごしょう)の外まで出て潜るのだろう? 沖縄では街中(まちなか)でスキンダイビングが楽しめるのに。

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