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短編『何も気にならなくなる薬』その133

引き続きダイエットの話なのだが、理論上は痩せる食生活を送っている。
しかし、この手の結果というのは数カ月後に見えるものなので、なんとも実感はない。
1月から始めれば夏にはそれらしいことになるだろうか?
とりあえず身長に見合った体重を目指したい。
とりあえず月の半分を迎えたが、この調子ならなんとか続けられそう。
こういうときには嘘でも結果がでてきていると他人に言われると嬉しいものだ。
いかに私達人間は単純か。

さて、今回は

カフェ

スキップ

混雑

の三つ。
落し噺でもなんでもないが、ありそうな風景を切り取ったような感じで。


お気に入りのカフェ。
気になる異性。
新作のスイーツ。
ウキウキしながらお店へ向かう。
「あら、いらっしゃい、お目当てはスイーツ?」
店員さんが微笑みかける。
「なぜって、お店からスキップしてる姿が見えましたよ」
恥ずかしい。顔が熱くなる。
「この間はすごく混雑してたみたいだからお店に顔出せませんでした」
「この間は5人組でお茶を飲みにきた男子生徒達がいて忙しかったのよ」
今どきそんな人数でお茶をするなんて珍しい。
「でね、このお店に来るお客さんが気になるって話してたのよ」
「へ〜、そうなんですか」
「いやいや、じつはね、あなたのことなのよ」
「え、私ですか」
「そ、あなた」
「いや、でも年の差が」
「今どきそういうのは気にしなくていいんじゃない?」
「でも学生だって」
「大学生くらいじゃないかしら」
「いや、遊び盛りだろうし」
「そう?遠慮することないと思うけど、ほら、噂をすれば」
少しもじもじした様子で扉を開けると、軽く会釈をして空いている席に座る。
「いいんじゃない?ああいう淡い恋心」
「自分のことじゃないからって」
「話だけでもしてあげたら?デザートはサービスするから」
「いつからそういうお店になったのよ」
とはいいつつ誘惑に負けた私はテーブルは別に隣の席へ腰掛けた。
私にもそんな時期があったのを思い出す。
「あ、あの、よくここには来るんですか」
「ええ、スイーツを楽しみにしてて」
「そうなんですか、私も最近お店を見つけて時々来るんです」
「おまたせしました。ブレンドです」
店員が隠しきれない笑い顔を誤魔化すためにそそくさとカウンターの中へと戻っていく。
それからしばらくの沈黙。
同じ席ではないのだから話ができなくてもおかしくはない。
けれども何か話さなくちゃいけない。そんな感じがする。
学生の彼は未だに頬を赤らめている。


美味しいご飯を食べます。