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短編「何も気にならなくなる薬」その100

こんにちは、魚亭ペン太です。
晴れて100回を迎えましたが、中々にコンセプトがバラバラ。
三題噺をやってみたり、ポエム書いたり、小説の真似事をしてみたり、謎掛けなどなど。
その時その時のできる限りをしていますが、その移り変わりも楽しんで頂けたらとは思います。

よく言う「ながっちり」という物がございまして、
コーヒーの一杯、
もしくはハンバーガーのセットで2時間。
わりとざらにある。
別にそれが悪いということではないが、どうにも貧乏くさい。
かと言って贅沢ができるわけでもないので、あまり大きな口も叩けない。
コーヒーをちびりちびりと飲む。なにかこれに似ているものがあるなと思いついたのが、点滴。少しずつ摂取しているあの感じだ。
そんな時間も会話が楽しければなんともない。感情は麻酔にもなる。

とはいえ、こうしたお茶の席でも完全に平等なことはない。
職場なら立場があるだろうし、同級生でも生活の格差は歳を重ねるほど現れる。
少しずつ少しずつ人付き合いが薄れていく。
友達100人できるかなというが、必ずしも必要な訳では無い。
人付き合いは多いに越したことはないが、必要のないものは切り捨てる勇気も必要なのだと思う。

よく私は人に興味がないと言われるが、そんなことはない。私が思うに世の中の人が他人に対して首を突っ込み過ぎなのではないかと思うのだ。
そこで関係性を築くのは個人の自由だ。
その点、社交場での色んな人との出会いは私の人生に大きな影響を与えた。
職場だけの人間関係では気がつけなかったこと、自分を知ってもらうには自分を出す勇気が必要なこと……

最近はありがたいことに仕事が忙しくなってきた。
同時に関係者意外との付き合いが減ってきたなとつくづく思う。
時間ができたら会いに行こうと常々考えさせられる。
しかし、どうも時間というのは残酷だ。唐突に人の死がやってくる。
そうかと思えば友人夫婦に子供が生まれる。
会える人には会えるうちに会っておけ。分かっていてもなかなか難しい。出来ることは出来るうちにやった法が良い。
そういう意味でもこの書き物は意味があるといいたい。
人様に見せる場所でもあるのだが、対外的な自分を形づくるためにも続けていきたい。


「狭き門」
「参考書」「少年漫画」

今回はこの三つ。

「最近さ、本読んでる」
「いや、全然」
「俺達は活字離れしないと思ってたけど、大人になるとやっぱりそうなるんだな」
大の大人が二人、テーブルの上につまみを並べ、あぐらなど各々の楽な体勢で酒を飲み交わしている。
「昔は部屋いっぱいに本を置いて書斎を作りたいとか思ったけどさ、結局普通に働いて、普通に愚痴を溢して、あの時見ていた大人とおんなじだよ」
「だよな、そういえば最近アレ見たか」
「あれ?」
「ほら、これ、少年漫画」
「あー、懐かしいな、これがどうしたんだ」
「実はさ、この新連載、俺なんだよね」
「え?」
「いや、漫画を描いたんだよ」
「お前、いつの間にそんなことしてたんだよ」
「仕事の合間」
「いやいや、マジで?」
「ほら、最近付き合い悪かっただろ、この間有給使ってラストスパート掛けてさ」
「へ、へぇ、すごいじゃん」
「でもまぁ、連載を続けるのが問題だから」
「みんな新しいことに挑戦してるんだな、オレだけだよ。こんな風に自堕落に生きてるのは」
「でもさ、俺の性格よく知ってるだろ」
「まぁ、長い付き合いだしな」
「そんな俺でも出来たわけだからさ、お前も何か挑戦したら変わるんじゃないか?」
「挑戦か……でも、何をしたいのかわからなくなっちゃったよ」
「そりゃ生きてるだけでも十分偉いと思うよ。でもさ、せっかくならお前にも人生を謳歌してもらってさ、お互いに旨い酒を酌み交わしたいからさ、なにかきっかけを作れたらって思ってお前にだけ報告した」
「そうか、考えてみるよ。自分のやりたいこと」
「それこそさ、あの本棚の参考書」
「あれか?いや、あれは狭き門だよ」
「そりゃ確かに狭いかもしれないけどさ、逆に考えてみろよ、広い門なんてあるか?」



美味しいご飯を食べます。