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夢を売る仕事は、最後の砦~紅ゆずるラストデイに感じたこと〜

星組トップスター紅ゆずる(くれないゆずる)さんと、娘役トップの綺咲愛里(きさきあいり)さんの退団公演ライブビューイングを観てきた。

タカラジェンヌとして最後の日。この日を過ぎればもう、タカラジェンヌとして舞台に立つことは二度とできない。

幼い頃はあまりピンと来ていなかったそのことに、年齢を重ねるほど胸にくるものがあって‥それプラス、トップコンビの絆の美しさ、星組全体の一体感が素晴らしくハンカチを涙でぬらした。

きっと公演自体の感想は世にたくさん出ていると思うので、今日はトップスター紅ゆずるさんの挨拶から感じたことを書こうと思う。

夢を売る職業の過酷さ。

何度目かのカーテンコールで、紅さんが口にした言葉が頭から離れない。記憶を頼りに書き起こすと…

お客様それぞれ、毎日いろいろなことがあると思います。だからせめて、舞台を観ているときは一瞬でもそれを忘れ、楽しんでいただきたい。

そのためにする裏での努力や苦しみは、わたしたちにとって当たり前のこと。やって当たり前のことです。苦労ですらありません。

「夢を売る仕事は過酷だ…」ハンカチで涙を拭きながら、この言葉を聞いた瞬間すっと冷静になった。

わたしたちが日々の疲れを癒しに行く場所。華麗で華やかな舞台。観客は3時間だけ夢を見る。その間は現実のしんどいことも、つらいことも忘れる。

いわば、「最後の砦」。それがタカラジェンヌであり、芸能に関わる人たちの役目なんだなと。

ひとたび舞台に出れば言い訳は許されない。稽古中にいくら踊れていても、歌えていても、舞台上で失敗すればそれが評価に直結する。

舞台の上では「できて当たり前」で、その裏でどれだけ練習したか、涙を飲んだか…を観客は知ることもないのだ。

…ああ、本当に過酷な世界だな

自分自身が舞台をしていた頃も、「いくら家で練習してきても、稽古場で、本番で発揮できなければ時間の無駄。無意味」と言われてきた。

そこでは「これだけやってきたんです!!」という主張なんて無意味。結果が全てだった。

重圧をこえた先に見る景色。

どんな仕事であれ責任があり、賃金が発生しているのだから、ベストな結果を出すことが必要。

でもここまで「やって当たり前」「苦労ですらない」と涼しい顔をしてこなさないといけないのは…本当に心身共に追い込まれる仕事だなと思う。

スタバでドリンクをつくっているとき、オーダーが立て込むとやっぱり必死になるし、こうして文章を書くことで日々の試行錯誤をオープンにすることだってできる。

それが許されない世界‥そしてそこでトップを極めるということは、もう想像もつかない重圧と過酷さとの戦いのはず。だからこそ、わたしたち観客は感動する。

紅さんは「やって当たり前のこと」と言っていたけれど、やっぱりそれは当たり前のことじゃなくて。とてもすごいことで。誰にでもできることではない。

そんな舞台をこれからも観るために、わたしはこつこつ働く。一瞬の夢を見るために、淡々と働く。お金を払ってチケットを買う。それが宝塚を支えることになるのだから。

すべてのタカラジェンヌに幸あれ!願わくば、心身共に健やかに舞台に立てますように…



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