『いろどり 生活の日本語』の使い方を考えてみる

2020年3月、国際交流基金作成の『いろどり 生活の日本語』はこちら からダウンロード可能な無料日本語教材です。

簡単に言うと、日本で生活するために必要な日本語コミュニケーションを身につけることを目指して作成されたそうです。

国際交流基金基金の作成した教材といえば、『まるごと』シリーズがありますし、「ひろがるもっといろんな日本と日本語」(リンク)というウェブサイトもあります。文化庁作成の「つながるひろがる にほんごでのくらし」(リンク)というウェブサイトも先日公開されました。

これからシリーズで、これらのサイトやリソースを活用しながら『いろどり』をベースにした授業を考えていきたいと思っています。

その第一歩として、今回は『いろどり 生活の日本語』では何が無料で提供されており、どんなコンテンツが含まれているのかをみていきたいと思います。

【レベル】2020年6月現在、提供されているレベルは初級1と初級2の2つです。(2020年秋頃にその下の入門レベルも公開予定とあります。) 初級1と初級2はJF日本語教育スタンダードのA2レベルにあたり、身近な話題なら、短い基本的な日常会話ができるレベルです。JLPT(日本語能力試験)ならN5~N4といったところでしょうか。

【無料ダウンロードできるもの】教材本編をPDFファイルでダウンロードすることができます。一括ダウンロードと課ごとの別々のファイルでのダウンロードが選べるようになっているので、ネット環境のいいところでまとめてダウンロードしてしまうもよし、課ごとにダウンロードして学生に配布するもよし、といったところでしょう。音声ファイルもMP3ファイルでダウンロード可能で、同じく一括ダウンロードと課ごとのダウンロードが選べます。この他に、「表紙」「はじめに(日本語)」「はじめに(英語)」「この教材の使い方(日本語)」「この教材の使い方(英語)」「奥付」といった、この教科書についての説明がPDFファイルでダウンロードできるようになっています。さらに、「内容一覧(日本語)」「内容一覧(英語)」として目次があります。ここには各課のトピック名の他、活動とそれぞれのCan-do,漢字のことば、文法ノート、日本の生活TIPSも細かく記載されているので、授業内容の確認や期末テスト作成時にも役立ちそうです。さいごに「Can-doチェック」も付いており、学習者は授業後に自らの学習をこのCan-doチェックを使用して振り返ることができます。評価は★まだ難しかった、★★できた、★★★よくできたの3段階で、その下にはコメントと日付を書くこともできるようになっています。「付属教材・資料」は準備中とありますので、今後追加されていく予定なのかもしれません。

【トピック数】「初級1」と「初級2」はそれぞれ9トピック、18課の構成となっていて、1トピックに2課のスタイルは『まるごと』と同じです。1課の分量は10ページと多いので、60分授業の場合は数回にわたって1課をすすめていくことになるでしょう。

【課の構成】

1.導入の質問。これは課の学習を進める前にその課のテーマについてイメージするための質問で、生活の日本語を学習する上で大切な部分です。ここで、写真や動画、追加の質問などを入れてよりイメージをふくらませることもできそうですね。

2.Can-do。この課で何ができるようになるかを確認します。

3.活動。多くの課がリスニングの活動ではじまります。そして、聞いて話す活動にうつっていきます。より多くの[インプット]を意識した作りになっているようです。「話す」「聞く」「読む」「書く」のすべての活動がそれぞれゆるやかに関係するように設計されているので、関連させながら4技能を身に着けていくことができます。

4.「形に注目」。はじめに形を確認せず、まず活動をやったあとに途中で形に注目が入ってきます。気がついてほしい文型や表現を聞いてディクテーションしたり、聞いて言ったり、その表現に注目して会話をもう一度聞いたりといった練習が組まれています。

5.聴解スクリプト。ここは授業中に使用しても、自習用にしてもどちらでも使えそうです。答えの確認のために、スクリプトを見ながら聞き直してもらうのもいいですし、シャドーイングをしても良さそうですね。

6.漢字のことば。漢字ももちろん入っています。ただし、ペンを手にもって書くという問題はなく、漢字を読んで意味を確認する、漢字を含む文を読む、キーボードやスマートフォンで入力する練習をするの3つからできています。明朝体、ゴシック体、手書きフォント、丸ゴシック体の4つの表記があるので、教科書体よりもより実践に近い形のフォントが使われているといえそうです。

7.文法ノート。形に注目では、細かな文法の説明はありませんが、この最後の文法ノートの部分で詳しく説明されています。現在公開されているものでは、英語と日本語による説明になっています。ここを配布して個人の理解で進めてもらうか、ここででてくる文法項目をしっかり説明する時間を授業内につくるかは教師次第でしょう。いずれにせよ、これを先に説明するのは避け、1〜6をやった後に説明する形をとるのがよいと思います。

8.日本の生活TIPS。日本の生活に関するコラムになっています。ここも現在公開されているものでは、英語と日本語による説明です。

以上が、『いろどり 生活の日本語』で提供されているものと、その中身の概要でした。次回以降、課ごとにくわしくみていきたいと思います。

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