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「答え合わせ」の旅⑫


社会科見学

ロキソニン教

22時。0時。3時。4時。小刻みに目を覚ます。
時差ボケもあるし、早い時間に寝たし、いつもと違う場所。これは想定内。
想定外だったのは、明け方の時間なにやら頭が重い。ズキズキとかではないが、どちらかというとめまいになりそうな頭重感。サーッと青ざめる。
え、コロナとかじゃないよね?熱は。。体温計持ってきてないや。うわ。
一人暮らしの不調はしんどいとよく言うが、何度も経験して知っている。しかし、異国一人旅での不調はその経験値は特別役に立たなく絶望しかない。
落ち着いて考えれば、同行者に気を遣わず、回復してから自分のタイミングで動けばいいと思えるのだが、そんなことを考える余裕はそのときなかった。

日本から共にやってきたメンバーの中で一番くらいの腹心、信用のおけるあいつに全てを任すしかなかった。
ロキソニン。
本当なら私がドラえもんでミニドラがいれば一番なのだが仕方ない。
一錠パチッと取り出し、水で流す。効いてくれと願い、再度眠りにつく。

次に目を覚ます。
頭が重かった記憶がよみがえり、どうだ?と身体をスキャン。
正常。うわー良かった!頭がすっかりクリアになっていた。あーロキソニン様、ロキソニン様と手をこすり合わせて拝む。
日本に帰ったらやるべきことができてしまった。ロキソニン教を立ち上げなくては。

朝食

さて。
時刻は7時台ぐらい。いっちょ朝食会場にいきますか。
時差の計算をするとなんと日本はもう夕方に近い。どうかしてる。早すぎだ。生き急ぐなニッポン。
化粧をしながら洗面所で一人語りのインスタライブを回す。昨日チケットを無事手に入れた話と今日の予定とロキソニンの話。
頭痛は治れど、私はこのときまだもう一つの不調が近づいてきていることに気付いていなかった。

フロントの階に降り朝食会場へ。
少し出遅れたので席が結構埋まっている。離れてるけどここにするか。
給仕係にGood Morningと声掛け、ビュッフェ開始。
朝食ご飯派の私にとって、欧米のパン文化に慣れなくてはいけない。
クロワッサンは好き。ダノンみたいなヨーグルトとアルプロが取り放題ではないか。だってアルプロって日本で買うと高いよね。買ったことないけど。部屋に持ち帰って食費の足しにしたいがマナー的にアウトかな。

4日間ほぼこのラインナップ。トマトは固すぎ。

ここでいっぱい食べて食費を浮かそうと思ったが、やはり異国で一人でいることもあって、緊張が胃の何分の一かを占拠してるようだ。旅をトータルしてもあまり食は進まなかったし、無駄にお腹も減らない旅だった。

部屋に戻って食休みとダラダラもそこそこに。
さぁ昨日のチケットを携え、ザーンセスカンスに行こう。
オランダと言ったら?の風車とチューリップ!の風車をまずは拝んでこよう。

アムステルダム中央駅北口

安定のmuseumpleinへ行き、手に入れた②のチケットでトラムに乗る。
まずはAmsterdam Centraal Stationへ。
到着。バスは北口からザーンセスカンスまで出ている。また中央通路を抜け、北口へ。予習と昨日の復習がうまくできている。

そうだ、北口の海みたいな運河を見よう。向こう小島に船が行き交っていて面白い。
人が少ない。少し奥になにやら撮影クルーたちがいた。
まさか異国でメディアデビューか。これは記念になる。私はカメラにフレームインしないかうろうろしていた。
すると近くにいたお兄さんが笑顔でなにか言ってくる。撮影クルーを指差して、私のいるスペースも指差してくる。
あ、撮影してるからここ入らないでってことね、どおりで人が少なかったわけだと理解し、オーセンキュー気付かなかったわごめんね、と笑ってその場を離れた。
チェッ、撮影してるからそこにいたのにな。

なんか心和らぐAmsterdam Centraal Station北口からの風景。

バスで見た光景

バスに乗ろう。
電光掲示板をみるとL乗り場。
きた。Zaanse Schans行き。

これに乗ってZaanse Schansへ

あらかじめチケットがあるとほんと楽。改めて昨日頑張った自分に拍手。
バスに乗り込み30分程。少し郊外へ向かう。
今日は昨日と打ってかわって晴れていた。基本曇りで雨もよく降るらしいこの国の気候にはそぐわない天気。
でもありがたい。緊張は依然として残るが、私の心も晴れ晴れとしてきているのを車窓から差す日差しに感じていた。

途中ベビーカーに幼児と、まだ手を繋いでないと心許ない女の子と一緒にご婦人が乗り込んできた。
日本でもよく見るお母さん大変だろうなぁの光景。親子はしばらく乗っていたが、終点までも行かずに途中下車するようでドア付近に向かっていた。
あ、降りるの大丈夫かしらと見つめる。
すると、前方にも私の横にもその親子連れの様子を見つめて、座席から腰を浮かせ中腰になる人が二人もいた。結局お母さんもベビーカーも女の子も自力でよいしょよいしょと無事に降りられた様子を見終わった瞬間、二人とも笑顔で腰を下ろし同伴者とおしゃべりを再開していた。

あぁ、私はこの国をやっぱり好きだ。としみじみ思えた瞬間だった。
なにかあったら助けようとすぐ動き出せる姿勢も、自分でできることは自分で、と自主性を見守る姿勢も。
そのどちらも素敵で心を打たれる。

もうちょっと乗ってると突然人がゾロゾロと降りる。
え、もう?と思ったが私も倣うことにした。
ついたようだ。風車村。

Zaanse Schans

Zaanse Schans(ザーンセ スカンス)は風車の観光地として有名。
オランダは風車で有名で、もちろん世界遺産にもなっている。本当はキンデルダイクと呼ばれる場所が世界遺産として選ばれてるのだが、観光するには交通がちょっと不便と聞いていた。
首都Amsterdamから行きやすいと言われるこのZaanse Schansの風車村は手っ取り早く風車を観光するのに人気な場所だ。

のどかな場所だった。牧場のような場所。
しっかり観光地化され、お土産屋もあるし、木靴もチーズ工房もある。たまに鴨も牛もいる。
フォトジェニック的に木靴のオブジェもあって楽しめる場所。写真撮ってくださいという英語は何度も練習してきたけど、結局自撮り棒でバシャバシャ撮る。切ない。

フォトジェニック。

風車沿いを歩く。いろんな色の風車があってTHE・オランダの風景。ライブ配信開始。まさにVlogだ。

いやいやいやいや。
風がつえぇ。いや、強すぎ。
配信は風の轟音ばかりを伝えていた。

そりゃそうか。風車があるってことはこんだけ風が強くなきゃ機能しないか。この国の風土を肌で感じる。地理のお勉強だ。
こちらの季節はまだ冬で、ヒートテックにニットにロングコートでちょうどいい。この日は晴れだったので暖かく、コートいらなかったかなぁ、とバスでは思っていたが、必要だった。風が強すぎてちゃんと寒い。あとニット帽必須だった。髪が乱れて写真撮れない。

こんななっちゃうぐらい強風。

満喫したところで、風車博物館も少し立ち寄ることに。
トイレも済ませたいなと思っていたから。

日本を想う

カウンターへ行き、チケットを買う。
ここらへんから英語わからないとき「Sorry,I’m Japanese.」を多用するようになった。ChinaかKoreaかよくわからないやつがJapaneseと言うと若干、ほんとに若干、対応が和らぐ気がしたから。Japan誇らしい。国ガチャSS級とはよく言ったもんだ。
逆を言えば、「Japanese=英語が話せない」を堂々と普及してきた。
しっかり英会話に精通されている日本の皆様、私の言動が日本の評価を下げてしまい、大変申し訳ございません。謹んでお詫び申し上げます。

なんとか買えたら説明が加えられる。
なになに?このチケットのレシートみたいなのがトイレのゲートのカギになっていると。まぁなんてシステム。
これが博物館に入らない人にトイレをタダで使わせない仕組みなのね。
日本で当たり前の無料で綺麗なトイレに入っていい文化を思い比べる。やっぱこういう風に維持費として金をとったっていいのよなぁって思う。日本は自分の身を削った親切や+αのサービスの部分が多すぎる。
それが美徳で昔は国の成長を促したのだろうが、まぁこの成長しきった現代では、人徳・信頼ぐらいになるだけで給与に反映されない。もったいないね。
いやまぁありがたいんだけどね。有料になったら文句言っちゃうんだろうけど。

日本へ来る海外の方々には、こんな綺麗なトイレが有料じゃないの?!って散々布教してほしい。どれだけ日本が優れているのか。そこにいると気づかないこの当たり前に慣れ切った日本人にも。

トイレはあっちで博物館の入口はあっちね。博物館はロッカーがあるから、そこに荷物入れてから入ってくれと。なるほどなるほどOK。
トイレ前のゲートにピッとレシートをかざす。あぁ昨日のスーパー出口での知能テストが役に立つ。おじいちゃんが言ってる説明がなんとなくわかったのも知能テストのおかげ。日本から来たチンパンジーは学習能力が高い。

ロッカーに荷物と上着を置く。1回バッグかなにかを持ってってしまい、受付のお姉さんにNon,nonと言われ、やり直し。スマホはOK?と聞くとOKと言われる。写真もいいらしい。
音声ガイドがあるらしい。うーむ、I'm Japanese。
日本語ガイドはないようだ。残念。
Chineseは?と言われるがそれはNOだ。別物だ。
「Umm..English?Can you try it?」と言われ、I try it.と苦笑いで渋々選択。

風車が昔からあるこの国は、風車の風景画も多く描かれてきたようだ。壁にいっぱい飾られていた。
昔は風車でこんなものを挽いてたのよ、とかこの会社が風車を普及したみたいな歴史を辿る博物館。音声ガイドは最初こそふんふん聞いていたがBGMでしかなく、途中から再生もやめていた。ちゃんとトライはしたよ。
そして昔は何千、何万も稼働してたけど、いまは風車は不要になってきて現在10何台しか稼働してないんだっけな。まさに遺産だ。

社会科勉強も完了し、帰ることに。
最後に高台を発見し昇った。風車群を見渡し、最後に強風を全身に浴びる。1番オランダらしい風景だったが、不思議とものすごく心が動いた感覚はなかった。ここに答えはないように感じた。

バスに乗ってAmsterdam Centraal Stationへ戻る。
まだ14時ごろ。また北口の運河の雰囲気を吸収して寄ってしまった。どうもお気に入りらしい。
さて、市内を巡ろうかな。