見出し画像

【ドラえもん生誕祭!】ドラえもんの地理学―『のび太の日本誕生』を例に―

 今日、9月3日はドラえもんの誕生日です。誕生するのは2112年9月3日なので、92年後ですね。そして、今年は「ドラえもん50周年」だそうです。おめでとう、ドラえもん!

 そこで今回は、ドラえもんについて地理の視点から考えてみたいと思います。子どもの頃に読んだマンガを思い出して久しぶりに読んでみたら、思った以上に地理や社会科の視点が詰まった内容だった、というお話です。

 この記事はいつもよりかなり気合を入れて書きました!というより、本当に書いていて楽しかったです。長文ですが、皆さんにも楽しんでいただければ嬉しいです。

 ヘッダーは神奈川県川崎市にある「藤子・F・不二雄ミュージアム」の位置を地理院地図で示したものです。ミュージアムの位置に鈴のマークを付けておきました。いつか行ってみたいです。

【はじめに:この記事のきっかけ】

 私が子どもの頃、おそらく初めて買ったマンガが、大長編ドラえもん『のび太の日本誕生』でした。とても面白く、当時は何度も読み直していました。マンガは実家にあるのですが、何かドラえもんについて記事を書こうと思い立ってからどうしても読みたくなり、Amazonで初めてkindleのマンガを購入しました。(初めてのkindleがドラえもんって、社会人として問題でしょうか・・・。本は電子書籍ではなく紙派です)

 さて、無事に購入し、そして久しぶりに読みました。・・・・・・・・

 やっぱり面白いですね!本当に面白いです!あの頃の、何度も読み返したワクワクが思い出されて、幸せな気持ちになりました。ただ、子どもの頃に感じた面白さだけでなく、ドラえもんがとても丁寧に作り込まれた作品だということが分かりました。

 創作物について詳しい感想や内容紹介をすることには慎重である必要があるので、ここからはできるだけぼんやりとした書き方にします。皆さんも気になったらぜひ今回紹介する作品を実際に読んでみてください。

【本編のあらすじ】

 のび太が色々あって家出を計画し、友人たちもそれぞれの理由で一緒に家出することになりました。ただ、現代では土地がないので、日本人が住み着く前の日本(7万年前)にタイムスリップすることを考えます。タイムスリップした先では、精霊王ギガゾンビに支配されたクラヤミ族が、ヒカリ族を苦しめていました。ドラえもんたちはヒカリ族を助けるためにギガゾンビたちと戦うことに・・・・・というようなお話です。

 ではここから、地理(および社会科)の視点から『のび太の日本誕生』を紹介していきましょう!

【土地の開発】

 まずは、冒頭の家出と土地の問題からです。のび太は空き地や裏山で(ドラえもんにキャンピングカプセルを出してもらって設置して)生活しようとしますが、空き地では土地の売却の商談が、裏山では宅地造成が始まって、追い出されます。そこで次は、山奥の廃村(その名のとおり山奥村)にどこでもドアで出かけて住もうとするのですが、ちょうどその廃村がダムに沈むことになって、危うく溺れそうになります。そこでのび太は、現代の土地にはすべて所有者がいること(そうでない場合は国の土地)をドラえもんに説明され、大昔に出かけることになります。

【国のしくみ】

 大昔に移住して食料や住居の準備をするときには、「きみは○○大臣」のようにドラえもんが声をかけてひみつ道具を渡し、家づくりや食料づくりなど、各自に作業を分担します。発行当時の呼称なので、建設大臣、農林大臣、環境庁長官など、懐かしいです。のび太は特別な◎◎大臣ですが、物語のキーになる内容なので、マンガで確認してください。

【土地の歴史と地形条件】

 さらに、7万年前の日本から中国に移動するシーンで、ドラえもんが大陸と日本が地続きになった衛星写真をみんなに見せ、空を飛ばなくても移動できることを示します。マンガには、現代の地図も挿入されていました。氷河期で海面が低下していたことなど、模式図も使って説明されています。

 他にも、火山が突然噴火して驚くヒカリ族(中国から移動)に、のび太が「この地方ではよくあること」と説明します。日本は新期造山帯なので中国とは違って火山が多いですが、そうしたことまで考えて描かれているなんてすごいと思いました。

【ひみつ道具】

 ひみつ道具がカバーする内容も絶妙でした。大昔の日本で生活する環境を整備するとき、「らくらくシャベル」で簡単に土が掘れるようにしたり、「ノビール水道管」で地下水脈から水道を引けるようにしたり、「畑のレストラン」という料理のタネをまいたりします。これは、子どもが無理のない範囲で、しかし自分たちの力で住環境や食生活を準備できるようにカバーする道具です。

 また、どこでもドアも、古代の地図はインプットされていなくてはじめは使えないのですが、あとでドアのコンピュータが道すじを記録すると使えるようになります。地図のない土地でGPSを使って位置情報を記録し、地図を作成する地理学との結びつきを感じました。

【ドラえもんはとても良い学習マンガだった】

 さて、「ドラえもん」+「地理」でネット検索すると、学習マンガとして以下のような書籍も発行されています。子どもたちが楽しく学べるならとてもいいですね。

 ただ、今回の記事の紹介で分かるとおり、学習マンガとしてのリメイク版が出る前から、ドラえもんは学校で子どもたちが学ぶ内容についてとても丁寧に描かれていました。これは、子どもたちがしっかりとした世界像を形成するようにと、作者が願っていたことを示しているのではないかと思います(勝手な想像です)。子どもの頃読んだときは、ここまで細かい設定には気づいていませんでしたが、ドラえもんはひみつ道具が空想である反面、その他の社会的現実や歴史的背景を丁寧に描いた内容になっていました。

【おわりに】

 考え出すと、ドラえもんの他の作品も読んでみたくなりました。また、アニメは観なくなって久しいですが、久しぶりに観てみたいです。

 さらに、この記事を大半書いてから、なんと8月にこのマンガのリメイク版映画がテレビで放映されたことを知りました。この映画もまた観てみたいと思います。

 ということで、これからもドラえもんが子どもたちに限らずたくさんの人に愛される作品であり続けることを願って、この記事は終わりです。お読みいただき、ありがとうございました!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?