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カワセミサポーターと、じれったいカワセミ。

    先日、H公園に行きました。

 H公園の隣には川が流れています。
 川で水鳥を見て、公園で身近な野鳥を見られるので割とお気に入りの場所です。

 H公園内の日本庭園を歩いていたら、知らないおじさんに声をかけられました。
 「カワセミには会えたかい」

 私はてきとうに答えてすぐに離れるつもりで
 「まだ今日は会っていないですよ」
 こうに答えました。

 その方は私の素っ気ない返答にかまわずに言うのでした。
 「もうすぐ来るよ」

 その方は8年くらい猛禽類を撮っていて、今は近所でカワセミを見ているのだそうです。

 そんな話を聞いているときに
 「来たよ」

 池の水面を飛んで、奥の木に止まったのはカワセミでした。

きれいなカワセミです

 「オスかい、メスかい」
 「メスです」

 メスはあちこちの枝に飛び移りました。
 狩りの体制でいたのだけれど、ふいと飛び去ってしまいました。

 メスの後を追うように、もう1羽カワセミが飛んでいきました。

 私が驚いて
 「カワセミがもう1羽いましたよ!?」 
 というと「そうなんだ」と、知らないおじさん。

 普段はもう一人カメラマンがいるんだけど……なんて言っているそのときにもう一人現れました。
 大きなカメラを担いできたその人は私も顔見知りの鳥屋のおじさんでした。

 鳥屋のおじさんからは、撮影マナーの悪い連中に腹を立てて鳥を撮るのをやめたけど、最近、また撮影を始めたと聞いていました。
 そして、今、この時は大きなカメラを持っていました。

 二人ともほぼ毎日ここにカワセミを見に来ているのだそうです。

 H公園の池を縄張りにしているのはメスで、二人とも「彼女」と親しそうに呼んでいました。

 彼女は狩りがうまい。
 最近やってくるオスがいて、最初のうちは彼女が追い出していたけど、そういうことも無くなった。

 オスは狩りがうまくない。
 3回に1回くらいしか魚がとれないので、彼女にプレゼントする前に自分で食べてしまう。

 そんな話を聞いているときに噂の彼女がやってきて、池の奥にある滝の枝に止まりました。
 「風が強い時、彼女はあそこで休憩するんだ」

 鳥屋のおじさんが
 「いつもなら15:00くらいにオスが来るんだけど」
 そう言って付けたスマホの表示は14:59で、まさにその時
 チーッ
 カワセミのオスが飛んできて、彼女の止まっているのと同じ枝に止まったのでした。

恋が始まりそうな距離

 おぉー!と撮影する私の隣で、カワセミサポーターのおじさんたちは
 「手ぶらで来ちゃ、ダメじゃん!」
 と、オスに突っ込みを入れていました。

 彼女が先にしびれを切らして、ふいっといなくなってしまいました。
 後に残されて、1羽ぽつんと、オス。

ぽつん

 この日は風が強くて寒いと言って、カワセミサポーターのみなさんは解散していきました。

 私は公園内を少し歩くことにしました。
 1周して日本庭園近くを歩いていると、犬の散歩中の知らないおじさんに声をかけられました。
 「そこ!カワセミが2羽いるの!!」

 こちらの方はどうやら貴重な場面を見た感動を誰かと分かち合いたかったらしい。
 「本当ですね!ありがとうございます!」

彼女の方からそばへ。

 今度は、彼女の方からオスの近くに飛んできたようです。
 さっきよりも2羽の距離が近いです。

 追い出すそぶりもないし、彼女の方ではイエスなのだと思いました。

 しかし!
 オスがずっとそっぽを向いているのです。

 彼女を見ようともしない。
 ずっと手ぶらのまま。
 (ここで魚をとってきて渡せば彼女は受け取ってくれそうなのに)

 いやぁ、これはじれったい!

 カワセミサポーターのおじさんたちが夢中なのも分かるような気がしました。

また飛び去った彼女


ぽつん

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