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月報『神無月』2023

058 月報『神無月』2023

君へ。

 元気ですか?わたしはなんとかやっています。
 先月のことを書こうと思う。

 素敵な言葉を見つけた。
 素敵な言葉を見つけると、伝えたくなる人がいるの。もう、どうして知ったのかは忘れてしまったけれど、素敵な日本語を知ったの。夕方のあの、ぼやあ、とした時間のことを“たそがれどき“(黄昏、誰そ彼)というじゃない?朝にも似た表現があるの。 “かはたれどき“(彼は誰)だそうです。美しい日本語だと思う。いつか、この時間に散歩をしながら伝えてみたい。

 音楽を共有したい人、映画について語れる人が見つけられたらいいな。どうやったら見つかるのだろう。私はやっぱり仲間を見つけるのが苦手だ。そういう好きなものを共有したい、という熱量を持っている人は全てではないそうなの。そのことに私はとても驚いた。私は熱量を与える側の人なのかな?与えられるのが好きなのだけれど。

 この1ヶ月過ごしてみて、私の周りにいる人は、もしかしてすごい人たちばかりなのではないかということに気がついたんだ。或いは、将来ものすごい人になる人なんじゃないかって、そんな予感がする。将来、私の友だちなんだって自慢したい。今でもちょくちょくこんな友人がいると自慢する。それが私の誇り。

 ところで、この時期になると、食事処に行くと出される緑茶。あの文化はアジアの中でも珍しいんだって。韓国でもタイでも水が一般的だから、ものすごく珍しがっていた。私の好きな이랑さんも‘로쿠차 구다사이‘という曲を歌っている。まだ日本にきたことがない時に作ったそうなのだけどね。
이랑-”로쿠차 구다사이”

 言葉が、というかニュアンスが伝わらない、という経験をして、かなり傷ついた。友人たちのおかげでだいぶ衝撃は和らいだ。母語と第二言語の違いなのか、他者との分かり合えなさの象徴なのかわからない。そしてそれが出来事から2ヶ月後に発覚する、という時間を置いてから伝えられたことだったために、なお怖かった。

 時々思うことがある、そして多分皆一度は考えたことがあるはず。
 朝の2時は何日なんだろう。今日なのか、明日なのか。

 豆乳のアレルギーになったらしい。久しぶりに温めて飲んだら、喉が痒い。最近体質の変化を感じる。2L買ってしまったので落ち着かない時に飲む。母には怒られそうだけれど。

 T先生に課題と報酬の関係をうまくつくっていくといいね、とアドバイスをもらった。私は報酬を先に手に入れてしまいたくなってしまうから、必ず課題のあとに手に入るものにしなければならない。例えば、好きな人やお世話になっている人に報告することだ。

 27日。ついに大学に行けなくなった。去年は休学したが、2年前も全く同じ時期に大学に行けなくなった。体が動かなくなるのだ。かとう先生にメールをした。「保健室(という名の空き部屋)においで」と言われた。なんとか午前中にはたどり着いた。いよいよ苦しい時期に突入する。この時期からは女鳥羽川のほとりで音楽を聴きながら泣く。今年はどうなるかしら。

 この儀式を始めた2年前から、詩や呟きの展示会を女鳥羽川にかかる橋の下でやりたいと構想している。一緒にやりたい人、話してみたい人に声をかけよう。

 私が慕っている一般教養の先生が言っていた。「UFOが頭の上に来ているのに気が付かない」。これは比喩なのだが、すごい人がすぐそこにいても気が付かない、という意味だ。音楽家Hermeto Pascoalの日本ツアーについての言及だった。このことはとても共感できた。「UFO来てるんじゃない?」と先生は言う。

 私は演じるのが上手いと我ながら思う。その場に合う役柄を察知して演じ分けられる。剽軽な人、頭のいい人、静かな人、常識的な人、友好的な人、騒がしい人、、、どれがじぶんかということもなく、そのように上手に演じわけられるのが私。もちろんそんな自分でうまくいっているのだから、好きではあるのだけれど、ないものを欲しがるのが人間。騒々しい教室で静かに彼らを眺める寡黙な人、自分の好きなもの、考えていることをはっきりという人に憧れた。小学生の頃からかな。寡黙な人はうまくいったけど、はっきりということはとても難しかった。なにか、じぶんが思っていることの表出はどうしても苦手だ。その表出を見ることにも抵抗があるせいかもしれない。歌やダンス、絵、文章、なんだかわからないものに出会ってしまったと思って、焦りなのか、恐れなのか、畏怖なのか、とにかく逃げたくなってしまう。特にそれが親しい友人だと、一層その不確かな感情が増幅するの。私がそのひとのことをよく知っているという傲慢のせいだろうか?友人がじぶんの知らない他者に見えるからだろうか?これによって、私もそうみられるのではないかという恐れが生じているのではないか?
 あとで、K先生と表現の話になった時に他者視点はやめたほうがいいよと言われた。

 久しぶりに、本中川に行った。そして、久しぶりに『ふたりはともだち』を読んで泣いてしまった。君も読んでみて。

 中国からの留学生と話した。「月が綺麗ですね」の話題を知らなかったので、英語と中国語で解説した。この話題、結構留学生にウケるので多用していこうと思う。

 そういえばそれで思い出したけれど、満月の次の日に月が綺麗だったので撮っていたら、バイト先に一度だけ来てくれたらしきお客さんが声をかけてくれた。去り際に「月が綺麗ですね」と言い残して。この言葉であまりときめいたりはしない。ただ、やっぱりこうして綺麗なものを共有しあえたり、自分が綺麗だと思ったものに共感してもらえると嬉しいという、そんな素敵な経験だった。

そのときの写真

 「おすすめ」というのは結構深いものだと思う。趣味がバレる。勿論ジャンルやお互いの関係性にもよるとは思う。「おすすめ」からはその人の情報がかなり入っているのだ。だから、人間関係のレベルにもよって、「おすすめ」の深度なるものも存在すると思う。そのさじ加減はとても難しいが。それでも、勧めたものを試してみてくれた時の喜びや試したことを伝える楽しさというものがある。

 久しぶりにセパゾンを手に入れてから、以前はプラセボのように使っていたのに、今は飲んで1時間も立たないうちに気絶しそうなほど眠くなる。それでなくても、最近はよく眠る。

 今月はいろいろ考えた。秋だからね。君はどんな10月を送りましたか?

20231107 火曜日

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