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水滸伝・天導一〇八星(感想)_箱庭型の塞をつくりあげる楽しさ

『水滸伝・天導一〇八星』は1997年に光栄からWindows95対応で発売された歴史SLGで、後にプレステやセガサターンなどの各機種へ移植されている。
前作『天命の誓い』はSteamなどで購入可能なのに対して、本作はコーエー定番シリーズで再販されたのみ。2023年現在は高値安定傾向の中古品を購入するしかない。
以下、私のプレイしてきたWindows版の感想などを。

箱庭型の塞をカスタマイズ

ゲームの目的は前作『天命の誓い』同様に、奸臣・高俅の打倒となる。隠しシナリオを含め開始年は3つ。選択する好漢によって逃亡状態または拠点となる塞の頭領となっている。しかし塞があっても破棄して別の場所で旗揚げも可能だから自由度は高い。
そうして、空白の塞があればねぐらを決めて内政をすることになる。前作の内政は治水/肥沃/繁栄が数値で表示されるだけだったが、箱庭型の塞はSim Cityのように徐々に施設を充実させて成長させる楽しさがある。
しかも全部で41ある塞は地形がすべて異なっていて、梁山泊は水に囲まれた天然の要害になっていたり、薊州では羅真人がいたとされる二仙山と思われる道観まで再現されている。

嬉しいのは前作に無かった宋江を好漢にして108人の揃った梁山泊でスタート出来るシナリオがあること。周辺勢力には、官軍の他に田虎、王慶、方臘、耶律輝がいて、それらを好漢にすることも可能だからプレイの幅が拡がる。

塞では様々なことが出来て、酒場を建設すると仲間となる無頼漢が立ち寄ってくれたり、森で狩猟をしたりとバリエーションが豊富で、外交や捕虜奪還など、それぞれの無頼漢たちが指示したとおりに同時進行で行動するのを眺めているのも楽しい。

建設や外交は最初から全て行動できるわけではなく、固有の職業を持つ無頼漢を仲間にする必要がある。
孫二娘に酒場を運営させて、安道全に病院を運営させたりと原作をなぞってみるのも楽しく、前作よりも職業の持つ意味が明確になって無頼漢ごとの個性が際立つ。
様々な職業の仲間を増やすことで建設可能な施設やコマンドが増えていき、視覚的に塞の繁栄していく様子を確認出来るのがゲーム序盤の楽しみで、
戦争になったら、敵地の塞に建てられた施設を壊して、物資やアイテムを奪えるのもリアリティがあって良い。

本作のマイナス面としては、せっかく職業ごとの役割を特化させたのに呪符を持たせれば誰でも妖術を使えることがある。妖術が不利な戦況を一変させられるだけに、道士の職業を持つ無頼漢たちの希少性が減ってどうにも惜しい。成功率が低いとはいえ、李逵でも妖術を使えるのは原作の世界観に合っていないように思う。
また、本作でも金国侵略によるタイムリミットがある。期限は人気の値によって変動はあるものの、普通にプレイしていれば金国による警告を見ることが無いほど時間的な余裕はあるため、前作ほどの緊張感は無い。

個性的なセリフを吐く無頼漢たち

梁山泊へ集う無頼漢は酒に酔って乱暴をはたらくようなどうしようも連中が多いが、義理や人情には厚い愛すべきアウトローたちだ。そんな豪傑たちの活躍する世界観を踏襲しているのは前作『天命の誓い』同様で、細かい演出や設定がいくつもある。

酒場を建設しておけば、各地から無頼漢が集ってくるし、忠誠度が低ければ取り敢えず宴会をしておけば離反されることも無い。
また、戦闘では戦況が有利になると、勝手に睡眠や宴会をはじめて命令に従わなかったり、とにかく無頼漢たちは酒が好きで浴びるように飲む。
無頼漢たちの吐くセリフのセンスが秀逸なのは前作同様で、史進に「あー、よく寝た」などと言われるとなんだかほっこりする。

各無頼漢に忠義・仁愛・勇気の精神値が割り振られているのも前作同様で、主義の同じ無頼漢同士を同じ酒場で酒を飲んでいると、本来なら仲間に出来ないような高い能力の無頼漢が志願してきたりもするのも嬉しい。

職業にはレベルによってタスクの成功率に影響があって、李師師、瓊英、扈三娘などは小娘Lv4だから傾城のスキルがある。そのおかげで男の無頼漢の仲間になる確率が上がったり、ほぼ役には立たないが戦闘中に魅惑出来ることも出来たりと、腕っぷしは強いが女にはダラシない無頼漢たちが愛おしい。

再販はされないが、現在でもプレイ可能

何年かのブランクがあってから久しぶりにプレイしたくなったりするから、Windows11での動作環境についても残しておく。

本作のヘルプに記載されていた動作環境を確認すると対応OSはWindows95となる。私はVirtualBox上へインストールしてプレイしているが、Windows10でも動作するという情報もネット上でちらほら見る。

発売当時は画面解像度が800×600対応のゲームが多かったが、現在は当時よりも高解像度でプレイ出来るから、全体地図や人物情報などをメイン画面に被らないように表示出して、発売当時よりも快適にプレイ出来るのは有り難い。

音楽はCD音源を再生する方式だったので、最近のPC環境ではそのままだと音楽が鳴らないが、有志の方がつくった「_inmm.dll」というツールを導入することで音楽も再生できる。

さらに3つあるシナリオデータをバイナリエディタ(私はStirlingを使用)で編集することで、プレイする好漢を変更することが出来るのも嬉しい。

試しに潘金蓮を好漢にしてプレイしてみたところ、精神値が低いせいかいつもだったら簡単に仲間になるような低能力の無頼漢ですら仲間に出来ず、戦争準備がままならないままに時間だけが過ぎて詰んでしまった、好漢を変えるのは序盤の難易度を上げるためにも有効だと思う。


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