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ティル・ナ・ノーグ ダーナの末裔(感想)_そこそこ中毒性のあるRPG

『ティル・ナ・ノーグ ダーナの末裔』は1988年にシステムソフトからPC-9801用に発売されたRPG。後にWindows用に復刻されておりそちらもプレイした記憶もあるが、やはりオリジナル版の方が思い入れが深くてやり込んだ思い出がある。
以下、感想などを。

自動生成されるシナリオ

本作のシナリオはジェネレータで自動生成(または自分で入力)される10桁のコードによって無数のシナリオが生成されるため、何度でも違ったシナリオ楽しめるというのが画期的だった。私の実家のPC-9801はVM21という機種だったが、このシナリオ生成に約17分ほどかかり、最初の頃は様々な想像を膨らませながら妖精の羽が動くだけの単調な画面をひたすら待ち続けた。

そうしてシナリオが出来上がったら、物語の導入を読んで開始するとまずは城を訪れて最低限の武器と100Gを受け取る。近くに町があるから夜に酒場で仲間を募ると自動生成されるキャラの名前は発音しづらく微妙なネーミングセンスで、いまいち気が乗らない。
しかし単独での探索は危険と思い、とりあえずの急場しのぎと仲間を加えて準備が整ったらフィールド上を探索するのだが、開始当初は敵と戦闘になると高確率で死ぬ。
仲間の数が少ないせいなのかと、さらに仲間を増やすもLv1の仲間をいくら増やしたところで戦闘であっさり死に、国産のRPGにしてはえげつないゲームバランスのため最初っから詰まることになる。

余談だが私は本作を中古で購入したのだが、購入して直ぐにゲームを起動無かった。どういうことかというと、まずは買ってきたシステムディスクへMS-DOSのsyscopyコマンドを実行した記憶があって、これにはかなり試行錯誤し苦労した。
そうしてシナリオジェネレートの待機時間を通過して満を持してやっとプレイ出来ると思ったら、即死連発でとんでも無いクソゲーを買ってしまったと後悔もした。

しかし、そこで諦めずにセーブ&ロードを繰り返しながら、レッドキャップあたりの弱小モンスターに絞って、他モンスターとエンカウントしたら逃亡するのを続けているとどうにかレベルがひとつだけ上がる。
Lv2になれば倒せる敵や索敵範囲が拡げられることで少しづつ楽しくなってきて、自動生成される微妙なネーミングセンスの仲間たちにも何だか愛着が湧いてくるようになって、飽きずに何時間もという程では無いが、自分だけのパーティで迷宮を探索するのはそれなりに中毒性もある。

戦闘シーンが真上からの俯瞰視点というのが少しSLGっぽくもあり、パーティ全体の総合疲労度や攻撃力などの情報がデフォルト表示しされているあたりは、兵器性能を数値化してゲームへと落とし込んだ大戦略シリーズの発売元となる「システムソフト」ならではと思う。

足りない要素は脳内で補完

フィールド上の移動アイコンは矢印のみという素っ気なさで、戦闘シーンは真上から俯瞰した視点で操作するのだがキャラクターが小さすぎて迫力に欠ける。町の「よろず屋」や「居酒屋」は文字情報だけだし、店の様子や店主のビジュアルは無い。武器や防具も数値化されているだけで視覚化されていないのため、ビジュアル的に素っ気ない印象があって、昨今のRPGと比べるとゲームシステムを含めて決して洗練されているとは言い難い。

しかしこれはレトロゲーム全般に言えることだが、足りない部分はプレイヤーが脳内で補完しながらプレイする楽しみがあるし、微妙なネーミングセンスの仲間は名前を変更すればキャラへの思い入れも強くなる。
パーティーは最大5人となるが、空枠があると問答無用で勝手に仲間になってくる厚かましいキャラや、挙げ句にパーティーから外そうとすると断って来て嫌がってきたりと、キャラごとに人格があるようで楽しい。

世界観のベースにはケルト神話が題材になっているらしく、王道RPGにはお馴染みのエルフやドワーフなどの種族だけでなく、クルラコーンやラナンシー、さらにはファルコンのような動物まで、多彩な種族を仲間にして引き連れるのはなかなかに楽しい。

残念なのはシナリオが無数に作成出来るといっても、ストーリーというものはほとんどなく、いくつもの迷宮や塔を探索してラスボスを倒したり、姫様を救い出すことがプレイの目的となっていて、どのシナリオもパターンがほぼ似ていること。
しかしクリア後、生き残った仲間のその後や途中で死んで行った仲間たちの紹介もあるのには少しグッとくるものがある。
実際に画面に紹介されるまで忘れていたような記憶の彼方へ追いやられたキャラクターでしか無いのだが、取り戻した平和が多くの犠牲のうえに成り立っていることを実感できる素晴らしい演出だと思う。

ゲームバランスを崩すテクニック

本作にはこれもレトロゲームならではともいえる、ゲームバランスを崩してしまうほどの魔法やアイテムが存在しており、これも楽しみ方のひとつの備忘として残しておく。

本作ではほとんどの時間を地下迷宮をさまようことに費やすことになるのだが、そんな時に1フロア全体を表示してくれる「光明効果」のあるリマルカの巻物があると重宝する。この魔法を唱えるとフロア全体が見渡せるようになるので、最短距離で次のフロアへ行けるから時間短縮にも繋がる。

そもそも楽しい時間を過ごしたくてゲームをしているのに、時間短縮を喜ぶ時点で本末転倒なのだが、隠し扉まである迷路のように入り組んだ単調なマップを進んでいると徐々に飽きてくるのは本音なのであると重宝する。

また、どのシナリオでもいずれかの町で「ミュドの薬」というキャラクターの魅力値を上げてくれるドーピングアイテムが売っている。1回使用すると消えて無くなってしまうのだが、どこかの町で一度でも在庫として持たせれば、使用後にその町の在庫として無限に復活する。

つまりこの薬さえあれば魅力の値を上げ放題となり、本作には魅力値がそのまま攻撃や防御に反映される武器や防具があるため、やり過ぎるとボスクラスの敵でもワンパン出来るほど強くなってしまう。
さらに「ミュドレアの竪琴」またはミュドレアの呪文という、魅力値に依存して敵を魅惑する魔法まで存在するため、こうなるとほとんどの敵をおびき寄せて一網打尽にすることが出来るようになる。

また、本作はシステムディスクとユーザーディスク2枚のフロッピー・ディスクでプレイすることが可能となるが、よろず屋で「物を売る」際にディスクを入れ替えると通常よりも高価な値段でアイテムを売ることが出来るようになる。ゲームバランスが崩れるほどの所持金が手に入る。

シナリオが無数に自動生成されるゲームであるため、攻略本が発売される類のゲームでは無いし、本作の発売当時はインターネットが普及する以前の話しなので、このような上場は雑誌情報をこまめにチェックして仕入れたのだと思う。
はっきり言ってゲームバランスを壊しかねない技ばかりだが、ゲームの難易度も決して低いものでは無いためについつい使ってしまう。


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