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呼吸

冬のはじまりがとても好きです。
白くかすむガラス窓と、つめたい空気と。
はく息の白くなってゆくのと。

あっというまの一年でした。
すこし、振り返りです。



所作のこと。

年初に「今年のテーマは所作」と決めました。
なににふれるにしても丁寧におこなうようにして、ときどき忘れつつも、折にふれ思い出しては、お皿をそっと持ったり、扉をしずかに開けたり。

所作を気にすることは、存在への敬意を持つことかもしれない、と感じるようになりました。ものに対しても、人に対しても。
いままでのぞんざいさにも気づいたり。

いちばん変わったのは、私自身の心身についても丁寧さを持てるようになったことで、他人を遇するように自分を扱おうという気持ちに、ほんのすこしだけなってきました。まだまだ遠いのですが。

自他をとわず、ここに存在するものに対しておろそかな扱いをしないで、大事に思うこと。

所作、来年もつづけてゆきたいなと思いました。



心のこと。

春は落ちこみ、夏はよく泣いていたのだけれど、最近はなだらかな気持ちがつづいています。

田畑の畦道を歩いたり、藪の草木を眺めたり。ひとりしずかに本を読んだり。
自分がなにをすれば元の位置にもどれるのか、ようやくわかってきたようなところがあって、今年はそういう時間をたくさんとりました。

最近は日々が愛おしいです。
なにを見ていても、愛おしいなと思う。
しずかにゆっくり、ぼうっとしていると、かなしさがこんこんとあふれてくるような。



思いのこと。

答えの出ないことに長く悩んでいたのですが、ゆっくりと考えて、ようやく私なりに答えを出すことができた気がします。

川でいうなら、左岸か右岸か進む方向を択ぶという考えを手放して、どちらにもゆかない。川の水面に足をひたして、水辺で楽しくすごすこと。
そして私も人も、信じること。根っこにあるものを思って、信じて、あとは笹舟をうかべたりしながらここでほほえんですごすことができれば、それがいちばんいいな、と思うようになりました。

そして、そういうふうにやわらかな気持ちで、しぜんとひらけてくる未来のほうにむかえればいいな、と思っています。




からだの具合がほんとうに悪かったとき、臨床心理士さんに、カレンダーに〇をつけてください、と言われたことがあります。
具合の良かった日に〇をつける。具合の悪い日が多くても、具合の良かった日もたしかにあったということ、忘れないように。

ときどきヨガに行くのですが、インストラクターの先生がレッスンの最後に言う印象的な言葉があります。

「この深い呼吸が、長くつづきますように」

凪いだ海のような、深い、いまの呼吸を、ことばにしておいたらいつかまた憶い出せるんじゃないか、そう思ってこの記事を書いています。



荒れる日も、深く沈む日も、浅い呼吸しかできない日も、息すらできない日も、日々のなかにはある。そういう時間が涵養してくれるものもあるし、長い雨や嵐が土壌をえぐりとることも豊かにすることもある。

でもたしかに深い呼吸のできた日があったこと、そんな凪いだ日々があるということ、憶えていたいです。生きてゆくために。




あらためて、今年一年、ほんとうにありがとうございました。
2023年がどうか、歓びあふれる年になりますように。



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