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漫画漫遊 星野之宣「宗像教授セレクション 源氏物語と平安文学」

星野之宣「宗像教授セレクション 源氏物語と平安文学」(2024)小学館


伝奇ミステリー「宗像(むなかた)教授」シリーズの中から、「竹取物語」と「浦の嶋子」、さらに「源氏物語」とのつながりを描く部分のセレクションです。

まず、話の発端は九州の「隼人」という人々の存在から始まります。その「隼人」の歴史が、「浦の嶋子(浦島太郎)」の話とそこからつながる「竹取物語」に込められているのではないか、というのが前半の内容です。

そのミステリーの解明と、「出雲忌部」という一族の女性、忌部神奈(いみべ かな)と、宗像教授の研究が交錯します。

後半は一転して、幻想的な恋愛を絡めながら、「源氏物語」の謎が解かれていきます。「浦の嶋子(浦島太郎)」から「竹取物語」につながる一連の物語と、「源氏物語」の物語が重なります。「乙姫-かぐや姫」と「藤壺-紫の上」という重なりを、宗像教授と思い出の女性との物語と絡めながら描いていきます。


この作品は、多くの人がおとぎ話として馴染みのある「かぐや姫」と「浦島太郎」の物語から入っていくので、とても理解しやすくなっています。

読んでいくと、その一つのバリエーションとしての「竹取物語」と「浦の嶋子」の詳細を踏まえると、奥深い古典文学の魅力に引き込まれていきます。

さらに、「隼人」という人々の視点で見ていくことで、興味深い考察に結びついていくのです。


さらに、後半は平安文学の中で最も人気のある作品の一つである「源氏物語」のストーリーを追いながら、そこに「竹取物語」と「浦の嶋子」との奇妙な一致に気づいていきます。

その幻想的な空気と、物語の中心にある宗像教授とある女性との幻想的な愛の物語が重なり、不思議な魅力に包まれます。


これは宗像教授シリーズの醍醐味でもありますが、伝奇ミステリーという謎解きや独自の解釈のおもしろさと、宗像教授をとりまく物語自体のおもしろさが交錯しあい、幻想的な雰囲気を味わうことができるのが、本作の大きな魅力です。

歴史というものは、真実は決してわかりません。ですが、その一つの答えとして、このような物語を楽しむのは、いつの時代も魅力的に映るものですね。



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